四十話 【学院に入る】 6
「!?」
「なんだ!?」
「うおおっ!!」
ドアがバンッと開き、大人達が入って来たと思ったら、俺の問題を掻っ攫っていった。
「・・・さっきと同じだ」
はい?
「窓から見てたが、カンニングではなさそうだ」
窓?カンニング!?
「とりあえず、落ち着くのじゃ。これが確かめたかったのじゃろう?」
デフロットさんが入って来た人達を落ち着かせながら話を続ける。
「生徒達も驚いておる。彼等にも説明しよう。エルミア先生の特例の再試は別として、今回の試験結果じゃが、そもそもショウが原因じゃ」
と言いながら俺の回答を見せる。
「何ですか?私も同じ入学試験解きましたよ?」
「よく見るのじゃ、ナタリア。そうじゃなぁ、例えばこの問題、これどうやって解いたかわかるかね?」
なんだ?
今デフロットさんが指で差しているのは一見普通の式だ。長ったらしい問題も公式を使えばかなり短くなった。普通に解いただけだし、ヘレンさんの屋敷に入れてもらう時の賢者テストでも使った。
計算ミスを誘うためのただウザいだけの問題にしか感じない。
「途中式が短い・・・どんな解き方よ!?」
「では、エルミア先生、ロバート。君たちにもこれが何か分かるかね?」
「数字の間に線が引いてありますね。どういう意味かしら?」
それは分数というものでして・・・
「さっぱりだ・・・分かりません」
「そして、魔方陣を書けというこの問題じゃが、これも素晴らしい。陣の周りには難しい数式が書いてあるが、これは陣をより正確に書くためのものじゃ。そうじゃろう?ショウ」
「は、はい。そうです」
「あとこれもじゃ。エルミア先生は・・・いくら教師志望とは言え、流石に解けなかったようじゃのう」
デフロットさんがエルミアさんのを見て言う。
「ッ!これは・・・その・・・問題がおかしいと思います・・・!」
「おかしい・・・か」
そこで俺に顔を向けられても目線をそらすくらいしかできないんですけど・・・
「気にしなくてもよい。どうせ、こんな式を使う機会はないじゃろうから・・・書いた本人は別として」
「は、はあ」
その後、後から入ってきた人達がこの学院の先生だと説明を受けた。俺の解き方が異常だったので、若干名の再試を含め、見にきてた様だ。
その後、これはどうやって解いたのか?という質問が飛んでくるのは言うまでもない。場の流れでそのまま授業擬きをやった。
もちろん講師は俺だ。
新たに分かったことは、分数を使った計算方法や、使われてる記号の種類が少な過ぎて複雑な計算どころか、公式すらまともに出来上がってない。未知の数“x”の様な文字を使わない為に公式すら作れないと言った感じだ。
例えばこれだ。
「1人,4人,9人,16人,25人 と兵が並んでいる時、10列目の人数は何人か?」
と言う問いがあれば、an=n² で n=10 を入れると答えが 100人 になる。
(ロア帝国総合学院-訓練統制課 出題)
他にも魔方陣や図は感で書かれてることが多く、そのまま写したり、複雑なものになると補助線を入れて書いたりとにかく凄く面倒臭いらしい。
そんな感じでスマホの解説の様に分かりやすく説明した訳だが、途中で俺が入学する意味を問われた。教師をやった方がいいのではないかと言う意見も出たが、俺の説得と「友達作り」という言葉が心に響いたのか、生徒という立場は保たれた。ただ、「友達作り」と言った時、可哀想な目で見られたのが少々気掛かりだが・・・結果オーライということにしよう。
まあ、魔法に関しても知らない事いっぱいあるし、学院へ通いたいと思ったのは本心。セバスチャンにも勧められたんだ。学校生活楽しんでやる!
「では年が明けたら入学式で待っておるぞ!」
「「「はいっ」」」
こうして俺たちは学院を後にした。
〜〜〜〜〜〜
「ショウって頭よかったんだね!」
「は は は ・・・」
「全くです。何者です?あなた」
敵意を剥き出しにするのはナタリアだ。
「いや〜ここに来るまでの記憶が無くなってまして〜、それ以前の事を覚えて無いんですよ〜」
もちろん設定だ。
最初から説明すると面倒臭いからな。
「ふんっ!嘘つき!」
「ナタリア、やめろよ!」
「そうよ!ショウが可哀想じゃない!ショウも何とか言いなよ!」
やはり持つべきは友達だ。
ただ、ナタリアの言う通り、俺が言ってるのは嘘だからなぁ。
反論できん・・・
このまま話を逸らす形でいこう。
「そう言えば、みんなは何で学院に入ろうとしたんだ?」
「何って・・・優秀な成績で卒業できたら、推薦状を出してくれるし、お父様とお母様と同じ最上区の重役や研究者にもなれる!運が良ければ皇帝のお側にいられる!そう!ここには未来があるのよ!」
「そうなんだ。アルマは?」
「私は、ナタリア程じゃないけど、目的は大体同じ。魔法の研究がしたくてきたんだよ。あと今ショウがさらっと流したけどナタリアの御両親、最上区で働いてるって何者よ!」
「ひっみっつー!」
確か入学者の平均年齢は17〜18歳だっけ?
同い年とは思えない子供らしさを感じるぞコイツ・・・
「オレも、剣術が学びたくて来た。世界一の剣士になるのが夢だ。今のうちのコネ作っといたほうがいいぜっ」
色々あるんだな。
そう言えば俺が高校選んだ理由は、大学へ推薦してくれるからだったな。
「ショウは友達作りとか言ってたけど本当は何で入ったのかなー?」
「そうだぜ。オレ達友達だろ?秘密は良くない」
「そ、そうですわ!」
ナタリア、お前絶対違うだろ。
「すごい頭いいんだし、何か研究するためとか?そんな事出来ないか!」
「アルマ、そうかもしれんぞ?」
その通りです。
「流石にないでしょう!学院がそんな設備整えてるとは思えないわ」
整えてくれるとの約束をいただきました。
「で、実際は何でここ入ったの?」
このまま会話が少しずつ逸れていくかと思ったのに・・・
と思いつつも、確かに今後人間関係を作る上で聞かれるかもしれない質問ではある。
「なんかやりたい事があって入ったんだろう?」
やりたい事か。
友達作りと・・・偵察機作。
ドーヴェルさんが倉庫じゃ狭くて作れないって事でそうしたんだったな。
「ほらやっぱり何かあるんでしょう?そんな顔してるよ!」
「えーっと・・・」
飛行機って言っても分からないか。
「道具!魔道具に興味があってさ」
「魔道具か!結構難しそうだな!」
「そうね。作るのは大変って聴いたことあるわ。でも完成したら物凄い力を発揮するから今も続いているのよ」
なるほど。ロバートはともかく、アルマは詳しそうだな。
あとで聞いてみようかなーーー
乗合馬車に乗っても会話は続いた。
ナタリアは何も喋らず途中で馬車を降りた。
しばらくするとロバートもアルマも降りて話し相手が居なくなった。
やっぱり屋敷は遠いな。
寮があるみたいだし、持っていくもの考えておこう。
ガタンッと馬車が止まり、客が1人減った。
結局最後まで乗ってるのは俺だけか。




