四十話 【学院に入る】 2
--コンコン--
「セバスチャンです」
ドアの向こうから声が聞こえた。
「今行く」
ガチャリとドアを開けると、そこにはよく知った人物がいた。
「ジャック?」
「よう」
「ショウ様、遅くに申し訳ありません。こちらの方を地下で発見しまして・・・」
発見?
「不法侵入したのか」
「仕方ねえだろ。それはさておき、話だ!話!」
肩を叩かれながら机の方へ移動する。
「では私はこれで失礼します」
「あ、セバスチャンありがとう」
ペコリとお辞儀をすると出ていってしまった。
「で、話って?」
「そりゃ沢山あるぜ。お前が『ちょっと面白いの』と言って去ったきりなんの音沙汰も無いんだからな・・・話してもらうぞ?」
そう言うと俺を睨む。
「面白いの・・・」
なんだっけ?
「あああ!!」
思わず声に出してしまった。
そうだ!思い出した!
飛行機だ!
俺が声を上げた瞬間、バキバキッと音を立ててドアが破られセバスチャンと他の執事達が戦闘態勢で入ってきた。
「ショウ様!今悲鳴が聞こえました!ご無事ですか!?」
「え!?何事!?」
俺は椅子に座ったまま、振り返るようにセバスチャンの方を見た。
セバスチャンは無表情のまま部屋を見回すが、俺が襲われたような形跡は無い。
「先ほどの悲鳴は?」
「えっと、俺が、何か思い出した時の声・・・?」
何か思い出した時の声って何だよ!
自分で自分にツッコミを入れる。
「その男に襲われたわけでは無いのですね?」
ジャックに襲われる?
「襲われてないけど」
「ではショウ様。彼がどこの誰かご存知ですか?」
そう言えば知らないな。
「ジャックという名前しか知らない」
「そうですか。彼は、ジャック・ドーブロという名前で、手配書にも載っている盗人です」
「え・・・」
俺がジャックを見ると、ジャックは目をそらしてため息を吐いた。
「ジャック?」
「悪い。いつか話そうとは思っていた・・・」
「ショウ様。何がきっかけで彼と知り合ったのかは知りませんが、彼は罪人です。罪人は投獄する必要があります」
突然の出来事に思考が追いつかなかった。
ジャックが盗人?
確かに詳しい話は聞いてない。
ジャックとの取引もジャック個人の情報は含んでいなかった。
「ショウ様」
「は、はい」
「もし彼が本当に信用できるならば、私はこれに目を瞑ります」
ジャックを見る。
「そういう事だぜ。俺が信用できるか?と言うか信じてくれ!」
投獄されたくないのか、セバスチャンに何されるか怖いのかよく分からない。が・・・
「あの時いった事は本当だ!俺が居なきゃ大変な事になるぞ!」
確かにジャックが居なければストリアの情報なんて得られなかった。飛行機を作ろうと思わなかった。これからもジャックの力が必要になるだろう。
「・・・信じるよ」
「え、いいのか?」
「ショウ様よろしいのですか?」
「ああ、信じる。セバスチャンにも後で事情を話すよ」
「分かりました」
するとセバスチャンが他の執事達に手で合図を送って武装を辞めさせ、退室させた。
「これでショウ様とジャック殿と私の3人になりました。できれば今、何があったのか伺いたいのですが、よろしいですかな?」
セバスチャンの普段薄っすらとした目が少し開いてジャックを見つめる。
「あ、ああ」
説明は後でもよかったけど、今でも問題無いか。
「大丈夫。今話そう」
そしてストリアのクーデターについて、向こうの戦力、武器について、その対策。色々話した。セバスチャンは熱心に聞いてくれた。
それで警戒を解いたのか、ジャックも彼がどこの何者か、そしてここでは要らない彼の生活や愚痴も聞く羽目になった。
そして、話が終わろうとした時。
「ショウ様」
「ん?」
「ちょうどいい機会ですし、これを渡しておきましょう」
何だ?
するとセバスチャンがモーニングコートの内ポケットから封筒を取り出した。
「えっと、これは?」
「学院の受験票です」
「え?」
なぜ今このタイミングで?
「ジャック殿もこちらを」
そしてジャックも同じ封筒を渡されていた・・・
「俺も受けんのか?冗談じゃ・・・ありがたく受けさせてもらいます」
セバスチャンを睨んだジャックが急におとなしくなった。
「開封すれば分かりますが、念の為に説明します。ジャック殿に渡した方は施設管理員としての推薦状です。その推薦状で学院の管理をお願いします。業務の際、学院内の施設、設備は自由に扱えます。生徒とコミュニケーションをとっても構いません。仕事さえしっかりしていればですが」
妙に最後だけ強調したように聞こえたが気のせいだろう。
しかし・・・
突入してまで敵視してた相手に推薦状など考えられない。
「ショウ様、私を疑ってますね?」
いつの間にかセバスチャンをじっと見てた。
「あっ!いや・・・準備がいいなと思っただけで・・・」
「なるほど。実はこの推薦状、ドーヴェル殿とシェリル殿当てに前もって作ったものです」
「前もって?」
「ショウ様が彼等を学院に入れるだろうと予想していたのですが、どうやら当たったようです」
流石だ。
そんなところまで考えてくれてたのか。
「では、ショウ様に渡された方ですが、そちらは入学用の受験票です。無くさないでくださいね」
「あ、うん」
「私からは以上ですが、何かございますか?」
ジャックは首を横に降る。
俺も特に無い。
「ううん」
「分かりました。では失礼します。扉が修理されるまでは、隣室をご利用ください。私の部下が既に準備を済ませております。ジャック殿のお部屋はこの部屋の向かいになります」
セバスチャンはいつものようにお辞儀をして部屋を出て行く。
「言い忘れていました。入学試験は明後日なのであまり無理しないように」
「はああ!?」
「ははっショウがんばれ!」
明後日!?
ヤバイじゃん!
最近全然勉強してない!
「因みに管理員の採用試験は明日です」
「ああああ!!??」
ふっ
「俺よりヤバイじゃん。ジャックも頑張れー」と声をかける。
「失礼。採用試験は来年です」
何だよ・・・
「お、お前わざとだろ!?」
「私の勘違いです」
「明日と来年を勘違いする奴がどこにいる!」という声がジャックから聞こえる。
「来年なのでご案内を」
「本当だな?」
「本当です」
採用試験が来年なら・・・
「あの・・・セバスチャン」
「はい」
「入試も来年だったり・・・?」
「いいえ。明後日です」
「うあああ!」
徹夜しながらの勉強が始まるのであった。




