四十話 【学院に入る】 3
そしてこの日はすぐに来た。
見送りはセバスチャンとヘレンさんがしてくれた。
ロジャーさんは商会を、ジャックは執事の仕事を手伝っていて今はいない。
「学院までの道のりは分かりますね?」
「覚えてるよ」
「ショウ、頑張ってね!」
「頑張ります!」
「もう・・・ショウったら本当に・・・こんなに大きくなっちゃって・・・自分の事も『俺』って言うようになったし」
そう言えば、前は「僕」だったな。
いつの間にか自然と「俺」を使うようになってた。
「時の流れは早いわ!」
あなたは俺の親ですか・・・
出会って一年も経ってないのにそんな言葉が出てくるのは逆にすごいと思う。
「受験票は持った?忘れ物はない?」
「持ちましたよ!」
準備はできてるのにそう何度も言われると不安になってくる。
確認も兼ねて受験票を取り出し、ヘレンさんに見せる。
「大丈夫そうね」
「じゃあいってきます!」
「いってらっしゃいませ」
「いってらっしゃい!」
学院へは、乗合馬車で行ったのだが、たまたまロジャーさんがその馬車を運行していたので乗せてもらった。
本当かどうかさておき、本人が言うにはたまたまらしい。
道中、実技試験のコツや、試験官のぶっ飛ばし方など、色々と物騒なアドバイスももらった。
いったいどんな実技だよ・・・
と思ったけど、試験内容はその年や受験生によって試験官が色々変えてるらしく、決まった内容はわからないとのこと。
まあそりゃそうか。
学院に近づくにつれて、他の受験生と思われる人達が乗ってきた。
制服を着てるわけでも無いのになぜ分かるかというと・・・
「ロバート!頑張ってねー!お母さん愛してるわよー!」
「父さんもだぞー!」
「わーってるよ!」
周囲の人達はニヤニヤしてその様子を見守る。
そんな感じで学院前の停留所に着く頃には乗客の半数が受験生だったりする。
「頑張れよ!」
「はい!」
下りる時、他の人に聞こえないくらいの大きさでロジャーさんが応援してくれた。
学院の門を過ぎると、在校生と思わしき人達が案内をしていた。
「会場はあちらでーす」
あの広場か。
人が集まってる。
さっそく人の集まっているところへ行く。
「皆さん!持ってる受験票を確認して下さい!受験票のアルファベットと同じ文字の書かれた旗のとこへ移動してください!」
俺のは・・・あった!
あの旗のとこへ行けばいいのか。
「あれ?君ひょっとして御者とコソコソ話してた人じゃないか?」
声をかけられ振り向くと・・・!
「ロバート・・・くん・・・だっけ?」
「なっなぜオレの名前を!?」
「だってご両親が言ってたじゃん」
途中で馬車に乗ってきた人だ。
「えっと翔だ。よろしく」
「よろしく。お前もBなのか?」
「うん。そうだけど?」
受験票に書かれたアルファベットを確認する。
「じゃあ一緒だな!どうせなら一緒に行こう!」
まあ断る理由も無いし、これを機に友達ができればいいかな。
「行こう!」
Bの旗のとこへ行くと、在校生が案内図を渡してくれた。
試験会場の案内図だ。
「あの校舎じゃないか?」
案内図によると・・・
「そうみたいだ。階段を上がって3つ目の教室だ」
場所が分かればあとは歩くだけ。
「きゃっ!」
「あ!すみません!」
案内図を見てたら女の子とぶつかってしまった。
「私こそすみませんわ。地図を見てた私の不注意だわ!」
「俺もです!すみません。あとこれ落としましたよ」
落とした案内図を拾い、彼女に渡す。
「ありがとう!また会ったらよろしくお願いします」
「いえ!こちらこそよろしくお願いします!」
「ショウお前何やってんだよー」
「ぶつかっちゃって」
てかお前も隣にいただろう。
「向こう行ってさっさと終わらしちまおうぜ。終われば今日は自由行動らしいし!」
そう。受験票には、受験日初日は筆記試験のみで実技は翌日。試験は監督の監視の下行われ、早く終われば退室することができる。と書かれている。
「終わったら見学しようぜ!」
「分かった分かった!」
ロバート君に引っ張られながら校舎の中を進む。
階段を上がり、案内図を確認する。
あれ?
「ごめん間違ってた。階段を上がって2つ目の教室だった」
「危うく試験会場を間違えることだったな!」
「ごめんって!」
「わーってるよ」
Bの旗にたくさん人がいた割に席がなんか少ない気がするけど気の所為かな?
教室に入ると机と椅子が4個ずつと、試験監督か?いかにも先生って感じの雰囲気を纏った人が教卓の後ろに立ってる。
「こちらの用紙と鉛筆を持って始めて下さい。制限時間はありませんが、長くなりすぎないように!席は自由です」
言われた通りに俺とロバートは席に着き、解答を始める。
内容は・・・この世界でごく一般的な常識から始まり、算術では高校数学の基礎だけでよかった。
難しそうな問題も、問題集の解き方を応用すれば簡単に解けた。
なんだ。
そこまで難しくないじゃん。
国語は単語やその意味を答えるといった感じだ。
面白いことに、武術の選択式の問題もあった。
知らない技は全部"感"で答えた。
そして一番面白かったのは魔術の問題だ。
選択問題と実際に魔方陣を書くという問題、書かれた陣にどんな効果があるかを答えるという問題だったが、屋敷で魔法関連の本はたくさん読んだ。
答えた問題はほぼ間違い無いだろう。
最後に名前と受験番号を書いてっと・・・?
桁が合わない。
俺の受験番号は5桁だが、この解答用紙は4桁だ。
制作側のミスか?
枠をはみ出す形になるけど書いておけばいっか!
用紙を裏側にして席を立つ。
ロバートくんはもう退室後みたいだ。
教室を出ると、ロバート君が待ってくれてた。
「はあ〜どうしよう・・・」
「ん?」
「難しかった・・・」
難しかったな。
武術とかロジャーさんの教え通りにやってれば、選択問題も解けたんだろうけど・・・
「終わったんだし、休もうか?」
「そうだな!学食行ってみたい!」
「学食!?」
この世界にそんなものが!
高校にも学食はあったけど、まさかここにもあるとは!
「何があるんだろうなぁ」
その日はロバート君と校舎の見学と、ロバート君の友人とも友達になった。




