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転移先で困って現代技術を再現した件  作者: 空白
第一章 ロア帝国編
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三十九話 【偵察方法を考える】



ジャックとの話で、ストリア国を偵察する必要があると考えた。彼も同意見だったが、問題はその方法だ。


「ショウ、お前ならどうする?」

「どうしよう」


現代だと、ヘリコプターや飛行機、人工衛星といったものがあるが、残念ながらここは異世界だ。そんなものは無い。


「ワイバーンって使えないのか?」

「どこで調達するんだよ・・・そもそも偵察に向かない。デカいし魔術師の格好の的になる」


それは残念。

ちょっと興味があった。


「そう言えばストリアの場所って・・・」

「山脈の向こう側だ」


山の天気はよく変わるし頂上は夏でも吹雪く。こちらからも行けないが、敵からも襲われない絶対の壁。飛行機でも使わない限り越えるのは難しい。

通りで帝国の首都が山脈の近く(攻めにくい場所)にあるわけだ。


ん?


「そうか!作ればいいのか!」

「・・・?」


ジェット機を作るか?

ジェットエンジンは燃やした燃料で羽を回すだけの原理だが、回転数と強度、精度、熱、燃費の悪さ、構造、クリアしなきゃいけない条件が多い。倉庫のエンジンは試験運転はまだだが形は完成してる。あれと同じ感じで星型エンジンを作るか?

まずは車を完成させよう。飛行機はそれからだ。


「ど、どうした急に!?」

「ちょっと面白いの思いついて」

「面白いの?」

「うん。じゃあ倉庫行ってくる。何かあったら屋敷まできてくれ。俺の名前出せば通してもらえると思う」

「倉庫?お、おう?」


また数日間部屋に引籠もることになる。

飛行機のモデルはどうしよう?

ミリオタの友人の影響もあってか、シンプルなデザインのプロペラ機と言って俺が想像したもの・・・


零戦。


幸いにもスマホには博物館で撮った写真が残っていた。それに友人がわざわざ海外から取り寄せたスケールモデルの製作も手伝った。ブログ投稿用に使われた製作過程の写真も俺のスマホに入ってる。

編集したの俺だし・・・

そうだ!

どうせなら車の車体も作ってもらおう。

なんで最初から頼まなかったんだろう・・・?


この日は設計図を描くのが楽しみで仕方がなかった。



〜〜〜〜〜〜



その数日が経過した。


セバスチャンからエンジンの周辺に頼まれた物を取り付けたとの報告もあり、新しい設計図を片手に倉庫に向かう。


「あれ、ショウさん?こんにちは!」

「こんにちは」

「今日は例の魔道具についてですか?」


俺を出迎えてくれたのは獣人族のシェリルさんだ。


「まあそんな感じです。あと、ちょっと仕事を頼みに来まして」

「新しい仕事ですか!?」


なんで驚かれるんだ?


「まだ前の依頼の確認も終わっていませんし・・・?」

「今確認しても?」

「はい!ちょっと待って下さい!」


そう言うと倉庫の中へ入り、そうかからないうちに戻ってきた。


「準備できました!」


シェリルさんの後をついて行くと、ドワーフ族のドーヴェルさんが待ち構えて居た。

片手にはクランク棒(手回しハンドル)を持っている。

エンジンに目をやると、燃料タンク・・・魔力回復薬の入った樽と、直接付いているため見た目は見苦しいが、排気管と消音器となるマフラーが新たに取り付けられていた。

燃料パイプとエンジンの間には空気を混ぜる機構もついてる。魔方陣と回復薬があればエンジンはかかるが、空気を入れて圧縮させた方が燃費が良くなるのと、空気に混ぜる量で速度調節ができるから取り付けた。まあ、役割は元の世界のキャブレターと呼ばれる部品と同じ。空気と燃料の混合気を作る。ただそれだけ。


シェリルさんの合図でドーヴェルさんがハンドルを回す。カコンと音が鳴るが、ドーヴェルさんは構わず回す。一瞬エンジンがブルンと震え、ブルルルと音を立ててエンジンがかかった。


「成功・・・した!?」


作業員達は自分達のやっていた作業を止め、口を開き目を白黒させる。


まさか最初からちゃんと動くとは思わなかった。もっとこう、タイミングを調整したりする必要があるかと思ってた。


自分の興奮も抑えつつ、異常がないか確認をする。


「ん・・・?」


早速見つけた。


「ど、どうされま、した?」

「シェリルさん、ここを見てください」


やはり異世界の技術だと制度に限界があるか。


「ここから空気が漏れています」

「え、ええ?そうみたいですね?」


多分思考が追いついてないみたいだ・・・

音もうるさいし一回止めよう。


止める前にスロットルも弄ってみたが、問題無く吹かすことができた。

他に異常はなさそうだ。


「よし、止めてくれ」


俺が言うと、ドーヴェルさんが燃料パイプの栓を閉じてエンジンを切った。


「す、凄いですね・・・よくこんな物を・・・」

「ワシもビックリじゃ」


無理も無い。

初めて機械を見たのだからそりゃそうなる。

そう言う俺も、自分で設計した物が思った以上の出来で嬉しい。


視線を感じ、ふと、ドーヴェルさんに目をやる。


目が輝いてる・・・!


「ドーヴェルさん」

「!?ショウの旦那!」


すごい呼ばれ方だな・・・


「ここから空気が漏れてたんですけど」

「むむ?」


俺が指差したのは、ピストンの往復運動を回転運動に変えるクランクシャフトと呼ばれる部品だ。ピストンで圧縮された空気が、ピストンとシリンダーの隙間から抜け、クランクシャフトの軸受から白っぽい蒸気となって排出されていた。


「これ多分ピストンとシリンダーとの隙間が原因だと思うんです」

「むむむ!ワシの腕が劣ってるとでも!?」

「いやいやいや!」


むしろここまでできて奇跡だよ奇跡!


「なら何じゃ?」


こうなるのはある程度想定している。

この場合、クランクシャフトのある場所を粘度の高い液体で満たす。回転によって巻き上げられた液体はピストンやシリンダーに付いて隙間を埋めて密閉してくれる。


要はエンジンオイルだ。


実際は防腐剤だったり添加剤が入ってるんだろうがそこまで詳しく知らない。でもそれぐらいの役割を果たせそうな物ならある。


「スライムの粘液で隙間を塞ぐんです。なので、ここに穴開けてもらっていいですか?」

「スライムの粘液!?」


そこら辺の草原や森でスライムを見つけることができ、比較的調達しやすい。この世界でも知られているが、ベタついたり、処理に困ったり、処理するにも自然乾燥しか無く、これらの性質上厄介な液体として誰も使いたがらない。あとは高温に耐えられれば問題無く使えるが、これもヘレンさんの火魔法の練習で実証済み。スライム自体が過酷な場所でも生息しているからだろう。エンジン内で沸騰したり、こびりついたりする事はない。溶岩の流れる迷宮内でさえスライムがいるからな。


「穴開けてまで本当にスライムの粘液を使うのか?」

「ええ」

「むむ・・・ショウの旦那が言うならそうなんじゃろう」


よかった。


「じゃ早速次の話なんですけど」

「はっはい!」


シェリルさん復活したか。


「これを作って欲しいんです」


そう言い、車体の設計図を渡す。


舗装されてない場所を走れるように車高は高くなっていて、どこか軍用車っぽくなった。

タイヤはゴムがない為、魔物の皮をぐるぐる巻いた物を使う。魔物の皮は頑丈だし、多少の衝撃を和らげてくれるだろう。サスペンションは馬車と同じ板バネだ。変速機は構造が複雑でギア数は少なくなってしまった。あとは車輪に動力を滑らかに伝えるためにクラッチが必要だが、これは魔物の皮でできたベルトを使う。エンジンと変速機をベルトでつなぎ、別の滑車みたいなので引っ張ることで締め付ける。締め付けられると摩擦で車輪も回転するといった具合だ。普段は締め付けられてる状態で、ギアを変える時だけペダルを踏んでベルトを緩める。これによりスムーズな変速ができる。

エンジンは前に乗せ、変速機はレバー式で座席の横に。あとは変速機と車輪をシャフトでつなぐ。


「難易度が上がってないかの?」

「歯車一体いくつ使うんですか?」


ははは・・・


「知らないです」

「「設計者!!」」


どこにどの部品があるかは書いたけど、その数までは数えてない。


そんな彼らにもう1つプレゼントをする。


「あとこれもお願いします」


零戦をモデルにした設計図だ。


「わお・・・」

「凄いのう・・・」


機体内部の構造は若干違うが、外観は零戦そっくり。武装はしていない。

今回の依頼はエンジンだけじゃなくボディ付きだ。素材もこの異世界にある物で、いくつかの条件をクリアしたものを指定してある。

場合によっては【強化】の魔法も付与する。

ただし、これは最終手段だ。

できれば魔力を使うのは燃料とエンジンだけにしたい。


設計図の各所説明を終える。


「えっと・・・これを作れば良いんですね?」

「うん」

「でもこっちの小さい方ならともかく・・・えっと」


シェリルが倉庫内をキョロキョロ見渡す。


「その、ヒコウキはこの倉庫だと狭くて、とてもじゃないですけど、作れないです。それに・・・これだとドーヴェルさんの仕事の量が恐ろしい事に」

「そうじゃ。いくらワシでもこれはキツすぎる」


なるほど・・・


「そうじゃ!ワシの国はどうじゃ?」


ドワーフの国?


「ワシの国なら人も足りるし、環境も整っとる。どうじゃろ?」

「あ!聞いたことあります!多くのドワーフ族が住んでいる国・・・フォレス国!剣や鎧、様々な道具があってとても人気です!それに鍛治職人が沢山いるからオーダーメイドも可能だとか!でもつまらない依頼をすると大変な目に合うという噂も・・・」


シェリルさん詳しいな。


「な?どうじゃろ?ワシ1人だと大変じゃが、仲間が増えれば作業効率も上がるぞ?」

「私もいますよ!」


噂の部分がさらっと流されたんだけど。


「ショウさん・・・!」


俺の出す依頼がつまらないモノじゃなければいいが・・・


「じゃあそうしましょう。俺はセバスチャンに報告してくるんで・・・」


フォレス国についたら本格的に作ろう。


残るは・・・セバスチャンにフォレス国への安全なルートを聞くくらいか。


向こう(フォレス国)で飛行機ができれば、ストリアの偵察もできるし高速な長距離移動も可能になる。

あとは全てが終わる前にストリアが攻めてこないことを祈るだけ。



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