三十八話 【工房ギルド】
「セバスチャン。ちょっと工房ギルドに行ってくる」
「工房ギルドですか?分かりました」
そういうとセバスチャンはお辞儀し作業員たちの方へ戻った。
工房ギルドまでの道は知っている。ここからそう遠くない。歩いてもよかったけど、この近くに乗合馬車があるから今回はそれに乗る。
クリークから帝都へ戻る時は荷馬車だったし、乗合馬車に乗るのは初めてだ。
少し楽しみ。
馬車乗り場に着くと、ちょうど馬車も着いたところみたいで、馬車には"東回り 一律銅貨1枚"と書いてある。
帝都はざっくり言うと、城を中心に円の形をしていて、各地区がドーナツの様な形をしている。帝都の正面とされる場所、俺が入って来た門の方だが、そこには何もなく平原が広がっている。逆に反対側、数十キロ先には山脈があり、山脈を越えると他国になる。そして農業や牧畜が盛んだ。しかし、この農牧地帯だけでは帝都の食料事情は解決しない。他所から定期的に運び込んでいる。そもそも、食料と物資が行き渡っている方が不思議なくらいに帝都は馬鹿でかいところだ。
その輸送を受け持っているのが冒険者と商会だ。個人でやってる場所もあるみたいだが、今回はどこかの商会が運営している馬車に乗る。
馬車に乗り、運賃を払おうと御者に銅貨1枚を渡す。
「あれ、ショウ?」
「ロジャーさん!?何してるんですか?」
「何って親父の手伝いだよ。ボード商会って聞いたことあるだろう?」
「はい」
そんな話もしたな。各地に支部がある大きな商会だ。そのお得意さんがヘレンさんの家であるグレイプス家。今もその関係が続いているんだっけ?
「その仕事を手伝ってるんだ」
「いつもこういうのをやっているんですか?」
「いや、他にも輸送だったり護衛もやってるぞ? っと、早く乗ってくれ。出発するぞ」
「あっすみません!」
時々いないと思ったら手伝ってたのか。
馬車に乗り込み、ロジャーさんの近くに座ると馬車は間も無く発車した。
「ところで、ショウはここで何してるんだ?」
「セバスチャンと倉庫の様子を見に行ってました」
「倉庫?なんかやってるのか?」
「言いませんでしたっけ?例のやつ作ってるんですよ」
「えーと、デンジシャクとやらか?」
言ってないみたいだ。
「車のエンジン作ってるんですよ」
「車?ショウの言う車と言ったら車輪では無いな・・・ジドウシャか?」
「それです。その動力源を作ってるんです」
「あーそうか・・・思い出した」
と言うとため息をついた。
何かいけないことでもしたか?
「ショウ。それについてお前に謝らなければいけないことがあるんだ」
「な、なんでしょうか?」
なんかすごく申し訳なさそう。
「・・・実は」
実は?
「うちでも燃えやすい液体について探したんだが、何も見つからなくてな。ショウの計画を・・・潰してしまうことになる」
なんだそんなことか。
一安心。
でもちゃんと探してくれたんだ。
ガソリンほどじゃなくても、引火性の高い液体を探してもらっていた。
「それなら大丈夫ですよ。解決しましたから」
「そうか!良かった!」
「あったところでプラグが無くて使えなかったけど・・・」
「何か言ったか?」
「なんでもありません!」
聞こえてなくて良かった。
探した意味が無かったと思われたら困る。
まあ、ガソリンの様に引火性の高い液体が異世界に無かったという事が分かればそれも収穫か。
因みにアルコールは却下された。
「ショウ、どこまで行くんだ?」
「工房ギルドです」
「何か外注するのか?」
「いえ、待ち合わせです。遅刻ですけどね。あはは」
「そうか。ところで、俺がいない間、無理して無いか?顔が疲れてるぞ?」
なんか心配された。
ていうか、ロジャーさんが居ない時の方が何気に平和ですよ!地獄の修行も魔物居ないですし!消耗品とかはセバスチャンが用意してくれるから大丈夫です!
それに疲れて見えるのは昨日眠れなかったからだ。
「おっと着いた!工房ギルドだ」
弁解する隙もなかった。
「無理すんなよ!あとこれ返すぞ」
と言われて銅貨1枚を受け取る。
「運賃は・・・?」
「身内から金取ったりはしない。じゃあな」
「あ、ありがとうございます!」
優しいのかそうで無いのかよく分からないな。
馬車を見送り工房ギルドど書かれた建物に入る。
立派な石造りだ。
中に入るとそれなりに人がいた。
ジャックはいないみたいだ。
さて、冒険者らしくいくか。
「こんにちは!」
「どうも。あの、コレってどうすればいいんだ?」
受付嬢にジャックからもらった紙を渡す。
「これは・・・確認してみます!」
ふと思った。
受付ってどこも女の子使うのか?
どの受付でも女の子が対応しているように思える。
「お待たせしました、こちらになります」
「ありがとう」
カウンターに布に包まれたものが乗せられる。
「受取日が過ぎていますので、手数料銅貨2枚と延滞料金貨1枚になります」
延滞料高くね?
いくら相場が分からない俺でも高いと思う。
どんだけ過ぎてんだよ!
ジャックめ、俺に払わせるつもりでこれ渡したな・・・
「ありがとうございました!」
料金を払い、カウンターを離れる。
「はぁ・・・」
「何ため息ついてんだ?」
「!?」
ジャックだった。
いつの間に!?
「ジャックてめえ、延滞料・・・」
「ははは!昨日の取引代って事で残りはパーにしてやる!」
「お、おう?ありがとう?」
金貨5枚の約束だったからな。安く済んだわけだしこれで良いか。
「じゃあ着いてこい」
「おう」
ジャックの後について行くと酒場に連れていかれた。
「マスター。ジョッキ2つ」
「あいよ」
テーブルにドンッと酒が置かれる。
「俺飲まないけど」
「そうか、じゃあ俺が飲む」
「おう」
「で、これについてだが」
と言うと、さっきもらった荷物を指差す。
俺がそれをテーブルに置くとジャックは布をとった。
「銃だね」
「それはピストルの別名か?」
「うん。別名だよ」
ミリオタの友人を思い出す。
彼の部屋にこの銃はなかったが、やはり本物というのはモデルガンとは違う。
少し弄ってみると、マガジンの中にまだ弾が残っていた。
その後、スった銃は2丁あった事、銃声のなった方が軍に持ち去られた事。あと第5地区での鉱山についてだが、第5地区には鉱山が無く、帝都の外、山脈側の鉱山だろうと言われた。
◇◇◇◇◇◇
同時刻、帝都の外にある農牧地帯の一軒家。ベットにはディッシャーと言う名の少年が眠っていた。
「う・・・」
「ディッシャー!?」
「あれ?・・・おかあさん?」
「大丈夫?どこも痛くない?」
「うん。痛くないよ」
「よかったぁ・・・心配したんだから!」
「あれ・・・?僕って、お父さんにご飯を届けようと山に入って、ドーンッて大きな音が鳴って・・・」
そう言うとディッシャーは自分の体を確認し始めた。
「怪我してない・・・夢?」
「いいえディッシャー。あなたは大怪我をしたのよ。治療院の院長さんもお手上げなくらいに。でもね、治癒師の人が助けてくれたの」
「僕助けられたの?」
「そうよ。他のみんなも、お父さんも生きてるわ」
グゥーと少年の腹が鳴る。
「あら?」
「なんか凄くお腹が空いてる」
「今何か作るわ。待ってて」
「うん」
アンネが部屋を離れる。
ベットでは、ディッシャーが自分の身に起きた事を理解しようとしていた。
「僕を・・・みんなを助けてくれた人・・・誰だろう?」
彼がロア帝国で最年少で治癒師になるのはまた別の話。




