三十七話 【逃げた】
魔力石の魔力が無くなってきた。
幸い、この人で最後だから魔力は足りた。
少し魔力石に余っているが、残しておこう。
「ありがとよ」
「いえいえ」
そんなやりとりをしてるとアリッサが近づいてきた。
「盗賊のお兄ちゃん凄い!」
「盗賊じゃないけどね」と呟くが聞こえていない。
まあ、自分にできることをやったつもりなんだけどね。
もっと医療機器とかあればスムーズに行くんだよな。メスやライト、手袋とか麻酔の機械だったり・・・
残念ながら医療は専門外だ。
日本で医大を受ける友達の話をもっと聞いておけばよかった。
「私のにいにもそんなことできなかった。あれ?にいに居ない・・・鍛冶屋のお爺さん来てるのに?」
鍛冶屋のお爺さんって誰だ?と思いながら、グスタフを部屋に閉じ込めてた事を思い出す。
と思ったらご本人登場。
ドアでも突き破ったのか?
「遅れて申し訳ない!事情を聞いた!怪我人はどこだ!?」
もの凄く焦ってるとこすまないが、もう終わったぞ。
「あ!にいに!」
「アリッサ!何故ここに?」
それ俺も気になる。
「外で遊んでなさいと言ったでしょう」
「だってレイさん達が、にいにの力が必要だから手伝ってって言うんだもん!」
アリッサがそう言うとグスタフがレイに視線を
移した。
アリッサと一緒に走ってた連中か。
「す、すみません!」
「成る程、アリッサを囮に私を誘き出す作戦でしたか・・・」
「・・・」
「しかし、妹を巻き込むなとあれほど!」
グスタフがレイに威圧をかける。
「で、ですが、先生があの少年を助ければ我々貴族の印象も良くなるかと」
グスタフって先生なんだ。
「レイ・・・貴様は何を第一に考えてここへ入学したんだ!」
「う・・・すみません」
グスタフは息を吐くとレイに聞く。
「で、その少年はどこにいるんだ?」
「あそこです」
レイが方向を指すと、グスタフは寝ているディッシャーの方へ近づいて親とムキムキ爺さんと話を始めた。
「グルース様、丁度お時間みたいです。お孫さんも一緒に診察しますよ」
「え?お孫さんは大丈夫?」
「ふむふむ、なんと!?その青年がお孫さんを・・・!?」
あれ?
なんかややこしくなりそうだ。
「にいに!私も見た!あれ凄かったよ!」
「アリッサ、その青年を見たのかい?」
「うん!」
「どんな姿か教えてくれ」
よし逃げよう。
俺は気配を殺して部屋を出る。
と言っても普通に隠れて音さえ立てなければ体質的に気づかれない。
「にいにも知ってるよー!だって、盗賊のお兄ちゃんの事だもん!」
言ってしまった!
「ショウ様!?どこだ!?」
すると扉に手をかける俺を見つける。
感のいいやつめ・・・
俺は扉を閉め、急いで建物から出た。
〜〜〜〜〜〜
どうやらここは第5地区みたいだ。
実は建物を出た後、ローブを着たままだった事に気付いた。
目立つし、それで誰かが追いかけてくる訳だが・・・
ローブを捨ててもよかったけど、捨てるところを見られては意味が無い。
結果だけ言うと、スマホを囮に逃げ切った。
方法は至って簡単。
1、追跡者に向かって「やーい捕まえてみろー」と叫ぶ。
この時スマホの録音機能で自分の声を録音しておく。
2、建物の角で追跡者の視界から一旦外れる。
この時、追跡者が来そうなタイミングに合わせてタイマーをセット、録音した声が1回だけ流れる様にしたら、箱の隙間や樽の中、音が大きく響きそうな場所に入れる。
3、少し離れて、ローブを脱ぎ、まるで誰かに投げつけられたかの様に自分に掛けて顔を隠す。
4、追跡者が俺に近づいたタイミングで運良くタイマーが鳴る。
「やーい捕まえてみろー」
追跡者が勘違いして声の方へ走る。
まあ、街中でスマホを操作する羽目になるが、見ている側もそれが何なのか分からないだろう。
結果逃げ切れた。
スマホの電池が残り僅かだから急いでヘレンさんの屋敷に戻らないと・・・
旅の途中は電源を切っていたとはいえ放電はするからな。
と思いつつこの地区を探索する。
確か建国記念日か何かだったはずだ。
まあその日は過ぎたけどお祭りは続いている。
それで賑わっているが、数日ともなれば品切れで店を閉める所もある。
来年も店出すんだろうなぁと思いながら見て回ると、面白そうな店を見つけた。
路上販売っていうやつか?
布が敷いてあっていろんな小物が並べられている。
その中に見覚えのある物があった。
「あら、いらっしゃい!是非見てって!ついでに買って」
本人は小声で言っているみたいだが、最後の方聞こえてる・・・
「その置物珍しいでしょう!今なら銀貨1枚よ!」
「ただ見てるだけです」
「そう」
銀貨1枚か、銀貨の価値ってそんな安いのか?
俺は手に取った置物を見ながら考える。
印刷も綺麗に残っていて、まだ開けられてない。
別にいらないな。
ていうか、期限過ぎてるし・・・
「それは銀貨2枚よ!」
今手にした電卓が銀貨2枚?
コンビニやホームセンターで1000〜2000円くらいで売られてそうな物だ。
ソーラーとボタン電池で動くみたいだ。
ON/OFFのスイッチをいじったらちゃんと機能した。
しかしこれが銀貨2枚か。
銀貨の価値思った以上に安い?
あれ?
そういえば宿泊まった時って風呂と食事付きで銅貨だけで済んだ気が・・・
今いくら持ってるんだっけ?
足りるなら買ってしまおう。スマホにも電卓機能はあるが、ソーラーで使える機能は無いからな。買っておいて損はない。
俺は財布を取り出し確認する。
「なにそれ?」
「財布です」
「へえ〜」
お?お金足りるぞ。
「買うの?」
「買おうかなぁ」
「ほんと!?銀貨2枚よ!」
うーん。
値切るか。
「本当に銀貨2枚の価値があるのか?」
「そ、そりゃあるわよ!」
ふむ、曖昧なのか・・・
「これは何なんだ?」
「それは・・・お、置物!飾りよ!」
電卓がか。
「このボタンは何だ?」
すると困りながら俺から電卓を取る。
「えっと・・・その・・・こう・・・ポチ」
何も起きなかった。
裏のスイッチをONにしないと点かないからな。
「ほ、ほら!教育にも使えるのよ!ここに数字と記号もあるし、この数字どんな形だったかな〜って時に・・・ね!」
ねえよ。
その後色々言われたかがどれもこれも的外れだった。
結局、電卓の価値は銅貨5枚まで下がった。
「まいどあり・・・」
自信なさげな声だったが、売る側が商品について詳しくないのはまずいだろう。
自業自得だ。
その逆もそうだが・・・
っと!
聞き忘れてた。
「そう言えば、聞きたいことあるんですけど、コレどこで手に入れたんです?」
すごく嫌そうな顔ですねー
電卓で大損したって顔だ。
「銀貨1枚でどうでしょう?」
「売った!」
意外と現金でした。
話を聞くと、第4地区の商店街で見つけたらしい。
第3地区に戻る時に通るルートだ。
ついでに見ていこう。
そう言えばあそこの料理店潰すって言ったんだっけな〜
まあ、他の職業も使う大通りを歩けば絡まれないだろう。
翔の現在地を第五地区から第一位地区、商店街を第四地区から第二地区に修正しました。
と思ったら最初であってました。




