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転移先で困って現代技術を再現した件  作者: 空白
第一章 ロア帝国編
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二十六話 【人助けをした】2



「じゃあ始めます」


ありがたい事に、どうやらグスタフは俺の荷物をそのままにしたみたいだ。


洗面器で手を洗い、鞄から酒のボトルを取り出す。


このお酒はロジャーさんの好きな銘柄だ。

クリークの土産で買っておいたつもりが、少し残念な気がする。


「まさか飲むんじゃ無いだろうな?」


はは、まさか。


「まあ見てて下さい」


俺は、クリークで買ったサバイバルナイフの丸い所ですり潰して痺れ薬を更に細かく粉末状にする。


ペットボトルを取り出し、念の為に新しい水と入れ替えて痺れ薬を混ぜる。


父親がさっきから驚いているが、今は無視だ。


まずは木材を取ろう。

ゴム手袋があれば感染症とか防げたけど、残念ながら無いみたいだ。

俺はこれから使う物を消毒する。

ヒリヒリするが、これはアルコールだ。

消毒液の無いこの世界で、アルコールを含んだ酒は一番消毒効果がある。


足に巻かれた布を丁寧に剥がし、どの様に刺さってるのかを見る。


グロいとは感じない。

地獄の修行で魔物や動物を倒すときに見ているからだろう。

料理されるお肉と思い込めば意外にも大丈夫だった。

因みにヘレンさんはグロいのダメだったらしい。


木材をどう抜こうかと思っていたら、既に試した様な跡があった。

木材に触れると、それを感じ取ってディッシャーが苦しそうにする。


ここはペットボトルに入った痺れ薬を使うことにしよう。


まあ、最初からそのために準備したわけだが・・・


よく効くように水と薬の量は調節してある。


ディッシャーの口にペットボトルを近づけて薬を飲ませる。


するとディッシャーが寝始めた。


少し濃過ぎたか?思ってたよりも早く効いてる。例え多くても健康に害は無いから副作用の心配はない。強いて言えば、眠気ぐらいだろう。


ヘレンさん家で本を読んでなかったらどうする事も出来なかったが・・・帰った時にお礼も言っておこう。


ディッシャーは苦しむ表情から普通に寝てる時の寝顔になった。


「おい大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ」


父親を落ち着かせながら次の作業に入る。


痺れ薬が全身を回りそうな頃合で木材に手を掛ける。

少し動かしてみるが、ディッシャーは眠ったままだ。

傷みを感じている様子も無い。


よし。


ゆっくり慎重に木材を引き抜くが、引っかかる。

消毒したナイフを取り出し引っかかるところを切る。

ちょっと使いづらいな。あとでメスを作っておこう。


父親は心配そうに見守るだけで何も言わない。


結果、見事木材の摘出に成功した。

念の為、取り残しが無いか確認する。


この感触は・・・地獄の修行を思い出す。

そう、解体だ。

狩った動物や魔物から異物を取り除く・・・


何も残ってない事を確認すると、傷の修復にかかる。

本当は縫ったりするんだろうが、異世界には魔法という便利なものがある。

魔力石を使い、細胞組織まで魔力を通すイメージで傷口に魔力を流す。

魔力を帯びた細胞が分裂を加速し、足は何も無かったかのように無傷になった。

ついでに他の切り傷や打撲も確認できる範囲で治しておく。


「終わりました」


父親の方を向くと、いつの間にか人集りが出来ていた。


「すげぇ」

「あんな使い方があったとは・・・!」

「あの傷が完治してるぞ!」


ディッシャーの様子を見る者、俺が使った道具を見る者、様々だ。


まあ、他の怪我人は切り傷や火傷ぐらいだったし、血を大量に流したこの子が一番危なかったからな。


「本当に治ったのか?」

「はい。今は寝ているだけです。ただ、血がかなり減ってるのでしっかりとした食事を摂らせるように」


と言うのも、これはクリーク村でギルマスと闘った時と同じだ。

骨盤辺りに魔力を通せば血も増やせるが、そうすると肝臓の栄養を使い過ぎてしまう。

無理にやるよりは自然に治した方がいい。

俺があの後空腹になったのはそのためだ。


「本当にありがーー」


父親が言い終わるより先に、部屋にムキムキな老人と女の人が入ってくるなりディッシャーの方へ駆け寄った。


「ディッシャー!」

「可哀想にのう」

「うぅ・・・今日で10歳だと言うのに!」


今日で10歳?

ん?待てよ?

これって一年が何日か聞けるんじゃないか?

よく考えたら、異世界の一年が何日なのかまだ知らなかった。


思考が少し脱線したが、ムキムキ老人の言葉で戻される。


「残念じゃのう・・・せっかく新しく作った剣をやろうと思ったのにのう」


なんか勘違いしてるな。

父親もそれに気づいたみたいだ。


「アンネ、グルース爺さん。ディッシャーは無事だ」

「え?」

「あなた今なんて?」

「ディッシャーは生きてる!息子を勝手に殺すなと言ってるんだ!」


2人が勘違いするのも無理はない。

貧血で顔が青く、これも薬の所為だが、さすっても動かない息子を見れば、死んでると勘違いするだろう。


「心配して損したわい。やはり元気な子じゃのう!」


ムキムキ爺さんの発言にアンネが言う。


「いいえ、確かにディッシャーは元気な子だけどそんなんじゃないわ。私が見た時は木が刺さってたわ」

「そうなのかい?」

「アンネ、グルース爺さん落ち着いて」


ようやく落ち着いた2人に父親が説明をする。


その間俺は他の怪我人の治療に当たる。

殆どが終わっている様だが、()()を見ていて治療をすっぽかした人が居るため治療に追われている。


「すまん」という顔だが直接言うまで許さん。


全く、命を何だと思ってるんだ。



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