三十六話 【人助けをした】
俺はアリッサの後を追いかけた。
ドアが並んだ廊下を走りながらここが何処なのか考える。
アリッサと一緒にいた人達の言った言葉も気になるが、ここが何処か?という質問の答えにはならなかった。
というかアリッサ、グスタフに遊んでろって言われなかったっけ?
なんでここにいるんだ?
彼らの後ろを走っていると、1人気づいて振り向いた。
俺が持ってる白いローブをチラ見する。
「誰かと思えば!助かる!」
いや何が?
ローブはこの人達の目的地で渡せばいいか。
なんて思ってると着いたみたいだ。
一つの部屋に入る。
ホコリが溜まっている程汚い訳では無いが、彼らがする作業としては相応しくない様な部屋であると同時に、この建物がどんな施設か想像できた。
床にマットが沢山並んでおり、そのマットに寝かされた怪我人を白いローブを着た人達が診ていた。
「盗賊のお兄ちゃんもそれ着て!」
「あ、うん」
返すはずがそのまま着てしまった。
てかアリッサここで何してんだ。
と思ったらローブの人達に加って魔法をかけ始めた。
というか、なんだこの怪我人の数は・・・
とりあえず近くに人に聞いてみるか。
「何があったんだ?」
「採掘中に爆発が起きたらしい。ついさっき運び込まれた」
爆発事故か・・・
「石炭でも掘っていたのか?」
「セキタン?何だそれは?金属に決まってるだろう。それより手伝ってくれ」
「分かった」
石炭はまだ知られていないみたいだ。
鉱山か洞窟かは知らないが、場所や資源について気になることはある。
また後で考えることにしよう。
「傷が深すぎる!魔法でもどうにもならん!」
なんだ?
向こうの方からだ。
「あの方はどうなんだ!」
「彼の方?言っちゃ失礼じゃが、彼の方よりも私の方が治癒魔法は上じゃぞ!」
「・・・でも!」
「この私が言ってるんじゃ!こりゃどうにもならん!」
そんな会話が聞こえた。
彼の方って誰のことだろうと思いながら近づいてみると、全身傷だらけの男の子が寝かされていた。足には木材が刺さっていて、この部屋に運び込まれた者の中で一番重傷だろう。
こんな子供まで働いているのか・・・?
「ちょっと失礼します」
「ん、何じゃ?」
止血はしている様だが、処置したのが遅かったのだろう。既に血を流していてあまり効果が無いように見える。
「痺れ薬はありますか?」
「痺れ・・・何を言っておるんじゃ?」
この痺れ薬と呼ばれる薬は、地球でいうところの麻酔と同じ効果がある。
服用すれば傷みを感じなくなる。
「あと食べ物と魔力石を持ってきください」
「貴様、そんな物を用意させてその子に何する気じゃ!」
ただ、この世界での痺れ薬は、飲み物や食べ物に混ぜて動けなくなったところを拉致、暴行、酷い場合は殺害の用途に使われる・・・犯罪性の高い薬だ。
だから痺れ薬は国が管理する事が多い。
時に闇市で取引される。
まあ、神経が麻痺しきって鎮痛の効果が出る前に事が起こるため、この事はあまり知られていない。
だからだろうか?ローブの爺さんに睨まれる。
「助けたいんですよね?」
「信じられるか!何しにここへ来たんじゃ!」
爺さんが怒鳴るから視線が集まる。
「息子・・・ディッシャーが助かるのか!?」
やはり、父親だったか。
よく見ると父親の方も所々怪我をしている。
「息子さんを助けたいなら言うと通りにしてください!」
ちょっとドラマの台詞みたいになったな。
「何じゃ貴様!」
「あんたには用は無い。オレはこの少年を頼る!」
「何じゃと!?じゃあもう知らん!勝手にしよれ!」
父親がそう言うと爺さんは別の怪我人の方へ行った。
えーと、男の子の名前は確かディッシャーだったな。
俺はディッシャーに近づき容態をみながら質問をする。
「どこかに痺れ薬と魔力石はありませんか?」
「・・・分かった。一つ当てがある。少し待ってくれ」
俺が頷くと、ディッシャーパパはどこかへ行ってしまったが、そう時間もかからないうちに戻ってきた。
「コレだ。息子の為だ」
そう言うと父親は俺に薬草をすり潰した物と魔力石をくれた。
一体どこで手に入れたのやら・・・
「罪人に手を借りるなど・・・神は許してくださる」
パパさんがなんか言っているのが、必要な物を揃える作業に夢中していてよく聞こえなかった。
「望みは叶えたぞ。料理は後ででいいだろう。息子を助けてくれ」
まあそうだな。
食べ物はこの子が家に帰ってからでも大丈夫だろう。
「じゃあ始めます」




