三十三話 【交渉成立】
何なんだよ!
こいつの仕事は確かに儲かるが、リスクどころか、今回は俺の命すら落とすところだった。
何が「ストリアで面白い武器が見つかったそうだ」だ!
元はと言えば、酒場で「王族並みの一般人」捜しを引き受けたことだ。
俺がストリアで死にかけたのも、全部お前の所為だぞグスタフ!
いくら払ったと言えど、金貨10枚じゃ割に合わん。さらに10枚払ってほしいくらいだ。
それに何でグスタフはショウと一緒にいるんだ?
俺の力無しにどうやって見つけた?
何を考えている?
今考えてもしかたねぇな。
そんな事を考えていると、自分が呼ばれていることに気づいた。
「ジャック!君に聞きたいことがあるんだ」
賢者のくせに聞きたいだと?
まあ、信じちゃいないがな。
「何だ?」
「君が向こうで見たもの・・・武器は、大体想像できる。聞きたいのは、ストリアで何が起きてるかだ」
「・・・」
「例えば、誰が指導者か、その武器の数、要は兵力はどれぐらいあるか?」
・・・そんな情報、俺が口を割るとでも思ってるのか?
「ぶっちゃけると、単にこっちへの脅威の有無が知りたい。もちろん話せる範囲でいい」
話せる範囲・・・俺が言ってもいいと判断した物だけでいいと言うことか。
というか、お前はどこまで知っている?
ロアにはその情報はまだ無いはずだ。
弾の存在、その威力、なぜ知った風な言い方をする?
俺が恐れる事を知って弾を見せたのだろう?
何者なんだ?
やはり賢者か?
でも伝説通りの賢者なら、質問する時点でおかしい。
賢者ではないにしろ、只者ではないな・・・
「だがなぁ、諦めろ!金を払わんなら情報は渡さん!」
金さえ出せば、俺が喋ることは向こうも分かってるだろう。
金を貰ってトンズラするか。
「ジャャャック!おのれ賢者様の前でそんな態度をォ!」
「グスタフさん、俺に任せる約束でしょう?」
「し、失礼いたしました!」
グスタフが俺を怒鳴るが、ショウがそれを止める。
グスタフがすぐに謝罪するなど見たことがない。
やはり只者ではない。
「何をすれば話してくれるんだ?」
ふむ、じゃあ先ずは要求を飲んでもらおう。
「金貨10枚」
◇◇◇◇◇◇
ジャックの傷はどうだろうか?
布から染み出た血や、打撲の跡。逃げる時に負った傷だろう。それらの見た目は痛々しいが、俺は甘くないぞ。
さっきから「イタタ」と言っているが、全て棒読みだ。
グスタフの言う通り、見た目に反して怪我の心配はあまりしなくても良さそうだ。
しかし金貨10枚か・・・
財布を見てみる。
金貨5枚、大銀貨3枚、銀貨4枚、銅貨5枚、鉄貨30枚。
足りないぞ・・・
「今の手持ちが金貨5枚しかないのだが・・・そうだ!グスタフさん!金貨5枚出せる?」
「えっ私ですか!?」
この中で金持ってそうなやつ他に誰が居るんだよ。
「し、しかし、そんな大金持ち合わせていません!」
あっそ。
グスタフは使えないな。
ジャックを見れば、何かおかしかったのか、少し笑っている。
しかし困ったな。
これではストリアの情報が入らないぞ。
こうなったら・・・
「ジャック、俺の正体が知りたいんだよね?金貨5枚と俺の正体でどうだ?」
黙りこむジャック。
「・・・いいだろう」
なもやら考えがまとまったのか、納得してもらえた。
俺は財布から金貨5枚を出し、ジャックに渡す。
ジャックは受け取ると、それを歯で咥えて本物か確かめた。
じゃあ俺の事を話すか・・・
嘘でも良いが、あとで矛盾するよりは本当の事を話した方が良いだろう。
っとその前にグスタフと兵士を追い出そう。
「グスタフさんと兵士さん、外で待ってもらえるかな?」
「ヒッ!」
「は、はい!」
なぜか怖がっている。
急に話しかけたからかな?
まあ、にっこり笑顔で言ったら言うこと聞いてくれた。
グスタフと兵士が部屋を出て行き、戸が閉まるのを確認する。
これでこの部屋にいるのは2人だけになった。
「さて、どこから話そうか」




