三十話 【今日も馬車は平常運転】
しばらく馬車に揺られていると、後ろを見張っていた冒険者がこう叫んだ。
「なんか後ろから凄いのが来るぞ!」
なんだ?
「おお!?なんだ!?」
「何よあれ!」
他の者には見えるようだ。
目を凝らすがよく見えない。
魔眼で見ようとしたが、魔力石を使い切っていた為に見えない。
「ショウ、あれ何か分かる?」
そう聞いてくるのはベラだ。
「・・・ちょっと遠くて分からないな。ベラは分かるのか?」
「あたしもよく分からない」
「あれはギルドの魔獣だな」
「「ギルドの魔獣?」」
俺とベラがハモるが、気にせずジュークが解説を始めた。
「クリークのギルドで飼育されてるやつだ。普段は職員以外は入れないところに居るからこの事を知る者は少ない」
じゃあ、なんでお前が知ってるんだよ。
ベラも同じ事を思ったのだろう。
「なんであんたが知ってるのよ!」
「そりゃ、企業秘密ってもんだぜ。あ、でも勘違いするなよ?犯罪者とかじゃ無いからな?」
と言うことは、おそらくジュークはギルドで働いていたのかな?
確認を取るように聞いてみる。
「ジューク、ちょっといいか?」
「おう、なんだ?」
「ひょっとしてだが、ギルドで働いていたか?」
「よく分かったな!流石ショウだ!ギルドでしばらく働いていたんだが、辞めた!冒険者の方が楽しいからな!あと魔獣の世話もしたからなんでも聞いてくれ!」
あっさり認めた。
というか企業秘密とか言っときながら、質問してもいいとかどうかと思うが・・・まあいいか。
しかし、ベラの注目はそこではなかった。
「ねえ、ランク上げる方法知らない?」
そう、いわゆるコネというやつだ。
「おっとベラさん!こいつは企業秘密だって言ったろう?」
ジュークの言う企業秘密の定義が知りたいとこだが、話している間に魔獣が近づいたようだ。
「来たぞ!」
「おお!」
ジュークとの会話も周囲に聞こえていたこともあって、魔獣を攻撃する者はいない。
魔獣の上に人が乗っていたのもあるのだろう。
魔獣は馬にそっくりで、鞍にギルドの模様が見えた。
と言うか、乗っていた人、バジルっぽかった気がする。
それにしても、魔獣と言うより馬にしか見えないな・・・
「あれ本当に魔獣なのか?」
疑問を口にするとジュークが答えてくれた。
「魔獣だ。普通の馬はあんな魔力放たないよ」
魔力の質みたいなものか?
とりあえず、魔獣についてまた今度調べるとしよう。
そのようなことを考えていると、ジュークがなんか言い出した。
「ショウって不思だよな。俺たちが知らない事を知ってるけど、逆に俺たちの常識は無いみたいだ」
「ほんとよね〜。まるで別の世界から来たみたい!」
「別の世界と言ってもこの大陸しかねえだろ」
「海の向こうにあるかもしれないわ!」
「ベラ、海の向こうは崖だぜ。この大陸が世界の中心くらい知ってるだろう?」
「知ってるわよ!」
なんか話が進んでるし、そうっとしておこう。
ーーーーーー
あれから3日程経ち、他の乗客や冒険者とも交流した。
もちろんこの世界の常識も聞いておいた。
ヘレンさんの屋敷で俺が読んだ本には無かったが、この世界は平面世界らしい。
世界の端が存在し、海が流れ落ち、そこは【世界の端】もしくは【世界の果て】と言われている。
帰って来たものはいない。
羅針盤が高度な技術として扱われているとこを聞くと、航海技術が発達して無さそうだし、大陸があったとしても遭難するか、沈むかしてまだ見つかってないんだろう。
たどり着いても帰ってこれる余裕はないだろう。
収穫はこれくらいだろうか?
道中、魔物も数体現れたが、それほど強く無かったのか、すぐに討伐された。
そしてようやく帝都の壁が見え、門に着いた。
門番がやけに多い。
何かあったのか?
「っ!?」
「ショウ、どうしたの?」
「いや、ちょっとね」
目が合ってしまった・・・
すると門番の帝国騎士が一人こちらへ近づいて来た。
「やあ!ショウ君じゃないか!」
「・・・どうも」
名前覚えられてたのかよ・・・あんぽんたん・・・




