二十六話 【ストリア事変】
「大佐殿!制圧完了しました!残るは王の立て籠もった部屋のみです!扉は魔法で守られてて破れそうにありません!」
「・・・そうか。さすが異世界だな・・・まあ、国王も出られないだろう。出てきたら捕らえろ。抵抗あらば殺せ。弱いストリアはこれで終わりだ」
ストリア国は現在、クーデターが起きている。
起こしたのは大佐と呼ばれた男。ストリアは決して弱いわけでは無い。彼がそう表現した理由は、ストリア国が戦力を持っているにも関わらず、決して攻めないのが気に食わなかったからだ。
ある日、一部の部族がストリアに攻め込もうとし、返り討ちにした。が、ストリア兵は部族が国境を出た瞬間、それ以上追わなかった。
これに対し、彼は抗議した。
なぜ追ってはならないのか?
何百人という部族がストリア国に攻め入り住人を殺し、ストリアに宣戦布告をした。が、これはストリアの完全勝利で終わった。部族は自分達の負けを確信すると、ストリアから逃げた。しかしストリア兵は彼らが国を出ると同時に追うのをやめてしまった。いや、追わなかったのだ。戦力は十分にある。相手は白旗を上げ、降伏したわけでも無い。逃げた後、応援を連れてまた来るかもしれない。敵を目の前で逃すなど、あってはならない。これは戦争なのだと。
もちろん賛同者が居なかったわけではないが、それでも敵を追うことができなかった。
それは国王がそう決めたからである。
国王がなぜそう決めたのか、その説明を聞いても軍人である大佐には理解できなかった。
もちろん軍人=理解できない。ということでは無いが、少なくとも彼の今までの環境上、概念的な意味で理解できなかった。
故に男はクーデターを起こした。
それを実行することが、ストリアの為、民の為になると本気で思っているのだ。
大佐と呼ばれた男は、自分の占拠した館のベランダへ出ると、拳銃を空へ向けた。
パァン!
この世界に似つかわしくない音が反響する。館の外でパップテントを張り、待機してた兵達がベランダに立つ軍服姿の男を見上げる。
「皆に知らせたい事がある!たった今、国王を追い詰めたという知らせが入った!ストリア国は、我がストリア軍の保護下になる!ストリアを危険に晒すあの国王は居ないも同じ!ストリアを狙う敵から、ストリアを守るのだ!」
「やったぞー!」
「おおー!」
「よっしゃー!」
大佐と呼ばれる男の宣言で兵達が歓喜の声をあげる。
ーー5年前ーー
「大尉っ!大尉っ!」
「む・・・なんだ・・・?」
「陸です!向こうに陸地が見えました!」
「なに!?」
漂流したボートに数人の海軍兵士がいる。
彼らは駆逐艦の搭乗員で、船体のメンテナンスに造船ドックへ向かう途中、所属不明の潜水艦から攻撃を受けてボートで脱出した。視界は濃い霧で3メートル先は真っ白。周囲は船体の一部が浮いたりと状況は最悪。そのおかげか、潜水艦に見つからずに済んだのは不幸中の幸いだった。
漂流して2日・・・
霧は晴れたが食料も水も、助かる希望も無い。
この状況で48時間というのは過酷なものだ。
もし、ここままであれば「死ぬ」と思ってただろう。
だが彼らは希望を見つけた。
「陸、陸だ!」
「やったぞ!助かった!」
「オールを持て!向こうまで漕ぐぞ!」
「「「アイサー!」」」
陸はだんだん近くなり、船もチラホラと見えてきた。
ボートを桟橋へつけ、港へ入った彼らは疑問に思った。
ここはどこだ?と。
見慣れない風景で異国というのは確かなのだが、それよりも気になったのは人だ。いや、人もだ。着ぐるみにしては明らかにリアル過ぎる上に本物であるかの様に動く。建物は全て石かレンガ。道は舗装されてるが、そこに停まっているのは車ではなく馬車だった。
まるでショッピングモールで迷子になった子供の様に、彼らは思考力を失っていた。
後に彼らはここを異世界だと理解し、色々と驚きつつもそこで暮らすことにした。
軍人である彼らはそのままストリア軍へ入隊し、彼らの持ってる武器と知識で土台を築き上げた。
そして今、土台の上で、彼らの信じる正義を実行しているのだった。




