二十五話 【ストリア国の異変】
翔がクリーク村で次の店に向かう頃、屋敷の書斎では・・・
「デフロット様!緊急速達便が届いております!」
普段、落ち着きがあり、あまり感情を表に出さない執事が興奮気味に事を伝える。
「なに!?どこからじゃ?」
「宮殿からです!」
滅多に来ない速達便。前回と違って、送り主が皇帝のいる宮殿からという事もあり、屋敷の主人であるデフロットは赤一色の封筒を受け取り封を切る。
「ーーッ!これは・・・!」
「何が書かれていたのですか?」
「ストリア国でクーデター発生、隣国への影響の可能性大。これが届いた者は"記念日"に宮殿へ出頭せよ・・・」
"記念日"とは3日後に迫る"建国記念日"のことだ。
現在、帝都ロアでは記念日の準備が行われている。屋台を出す者は食材を調達しに、露店を開く者は帝国を象徴とした物品を、帝国軍はパレードの練習、他の者はその日をまだかまだかと首を長くして待っている。
その日に出頭命令、このタイミングからすると、"記念日"をカモフラージュに会議が開かれるのだろうと予想する。
その"記念日"に集めるという事態から、目の前の執事も、護衛のつもりで「私も同行を」と提案するが、
「いや、お前は屋敷を頼む、セバスチャン」
何かが起こることはまず考えられないが、念の為に残れと断る。
「・・・かしこまりました。他に何かございますか?」
「・・・これから学院へ行く。支度を頼む」
「かしこまりました。表に馬車を回しておきます」
出頭は3日後だと言うのに今出かける理由は単純だ。屋敷の主人であるデフロットには学院長という仕事がある。むしろ今回の出頭命令はデフロット個人では無く、学院長としての彼に関係している。様々な分野に手を広げ、研究を行なっている機関からの情報提供をということだ。勿論、高価な情報で自分の株を上げる目的もあるが・・・兎に角、今は学院にある資料を取りに行かなければならないのだ。
学院へ向かう馬車の中、デフロットは考える。
勿論、速達便に書かれてた内容についてだ。もし、内容通りならストリア国との戦争が始まるかもしれない。まあそれはストリア国が周辺国に手を出すか出さないかで決まることだが・・・と、難しい表情をしながら思考を巡らす彼にふと声が掛けられた。
「どうしたの?デフ」
愛称で呼ぶのは妻であるジェナだ。彼女は速達便のことも、デフロットが呼び出されてることも何も知らない。今はただ、彼女視点で、学院に行くだけで難しい表情を見せる彼を心配して言っているのだ。
それに気付き「何でもないよ」と返事をする。彼女もまた「そう」とだけ言うと窓の外を眺め始めた。
ーーーーーー
総合学院へ到着すると、デフロットは学長室へ向かい、本棚の資料を漁る。ジェナは出された資料をまとめたりして手伝う。資料はここ最近の生徒達の成績、実績の記録や、上位だった者の資料だ。
そしてクリーク村のギルドマスターであるバジルにも赤い封筒が届いていた。
「マスター!たたたたたたたっ!!!」
「お、落ち着け!ルーシー!何が"たたた"なんだ?」
ドアをバンと開けて慌てた彼女に声をかける。
「た、たいへんです!さっき兵士の人がこれを!」
「!?」
彼女が手に持っていたのは緊急速達便だった。
「貸してみろ!」
なになに?
ストリア国でクーデター?隣国への影響の可能性大!?これが届いた者は"記念日"に宮殿へ来い!?
バジルは内容にも驚いていたが、最も驚いたのはこれが自分に届いた事だ。
それは自分が軍から退役したにも関わらず、これが自分に届いたからである。
「チッ!帝国め!また殺れってんか!」
「えっなにっ!?」
「な、何でもないぞ!」
ルーシーにいろいろと内容がバレてしまうとこだった。
彼女からすれば、バジルが何か重要な知らせが来たと言う認識でしかない。速達便が軍事以外の個人間でも使われるからだ。今回は帝国兵が届けに来たからものすごく緊張しただけであって、国に関わる重大な知らせとは思ってもいない。
その日を迎えようと各地で準備で賑わう中、一部の人達にはそんな知らせが届くのである。




