二十三話 【剣を預ける】
ギルドを出た俺は次に武器屋へ向かった。
今回の戦いに限らずだが、剣がボロボロになったからである。
ロジャーさんやヘレンさんにもいろいろ聞いてはいるが、やはり武器は自分で選んだ方が良い。
屋敷にも武器庫があり、バジルとの戦闘で使った剣もそこで選んだ。
剣を鞘から抜いてみる。
傷がいくつも付いているのが分かる。
軽くて気に入ってたけど仕方ない。
新しいの買うか。
大通りを歩けば武器屋はすぐ見つかった。
さすが冒険者の村、クリーク。
まあ、ギルドへ行く途中で何軒かチラっと見てたからどこにあるかは大体分かったりする。
そもそも武器屋で買う必要性もないが・・・
安心が欲しい。
本来、剣や盾、矛といった物は武器屋に限らずどこでも手に入れることができる。
違いは品揃えと保証があるかどうかだ。
武器屋は基本的に何でも揃っている。
鍛冶屋に定期的に発注するのだ。
また、オーダーメイドを注文すると、武器屋から鍛冶屋へ作製依頼が来る。
鍛冶屋へ直接頼むのもありだが、他の武器と比べて「あの剣にこのグリップを付けて欲しい」など組み合わせが出来なくなる。
品揃えが豊富だと自分に合う剣も見つけやすいと言うことだ。
そして武器も鍛冶屋で作られた物か、鑑定された物しか販売しない為、質が保証されてる。
「いらっしゃい!」
店へ入ると店長と思わしき獣人がドガッと座って居た。
「何かお探しかな?」
「ああ、今使ってる剣が脆くなってね」
「なぁるほど!因みにどんな剣を持っているんだ?」
「これだ」
店長は俺の出した剣をじっくり見ると、不思議そうに聞いてきた。
「んん〜、これ結構いい素材で出来てるんだけどな・・・見てごらん、輝き方が少し違うだろう?ヘルミット鉱石を少し混ぜてるんだ」
「ん、んん、ほんとだ・・・」
ヘルミット鉱石・・・鉱山や迷宮での採掘量は僅かで、乾いた土のように脆い。故に見向きもされなかったが、賃上げを断られた労働者が怒り、金属の精製の際に故意に混ぜる事件が起きた。この時、合金にすることで強さを増す事が判明、素材として高値で取引されるようになった希少な高級品である・・・と屋敷にあった本に書かれていたな。
「どうやったらこんな傷出来るんだ?」
「地獄の修行とバジルとの戦闘で出来る・・・ぞ?」
するとギョッとした感じでこちらを見る。
何か言ったかな?
「地獄の修行は知らんが・・・バジルってあいつか?ギルマスの!?」
「ああ、ギルマスのバジルだ」
ギルマス、ギルドマスターのことか。
「すげぇな!んでどうなったんだ?」
「俺が勝った」
「すげぇな!あのバジルに!?それでこの傷か!?」
なんか「すげぇすげぇ」言ってるが、俺はお喋りに来たわけでは無い。
「・・・できれば本題に戻ってくれ」
「あ、ああ、すまん。なんかびっくりした。で、この剣に似た剣が欲しいと?」
「あるか?」
「・・・形が似た物は有るが、これと同等な威力と耐久力を揃えたのはねぇぞ?」
「んーそうか・・・じゃあ・・・」
「おーっと待ってくれ!良ければウチで修理しないか?」
「修理できるのか・・・いくらかかりそうだ?」
「この剣だと、ざっと大銀貨2枚ってとこだなぁ」
大銀貨2枚・・・高いのか安いのか分からない。が、それくらいは出せる。
俺は財布を出し、支払いを済ませる。
「へっへっいい買い物をしたね。ところで何だ?その変わった入れ物は?」
「財布だ」
俺と一緒に転移してきた財布だ。使い慣れてる。この世界の住人の様に小袋に貨幣をいれてジャッジャッ音を鳴らすつもりはない。
第一、小袋よりも使いやすい。
店長は「変わってるな〜」と言いながらも、しっかり大銀貨をカウンターに仕舞った。
「じゃあ剣は預かるよ。ほれ、証明書だ。これと引き換えになるから絶対に無くすなよ?絶対だぞ?」
無くして欲しいのか?
まあそうすると俺が困るわけだが・・・
「修理は多分明日には終わるだろうから、また明日きてくれ」
「わかった」
結構早くできるんだな。
さて、剣が無い間は何で身を守ろうか?
短剣くらいは持っていた方がいいな。
側に短剣がいくつかあるが素人の俺にはどれが良い物か分からない。
「店長、オススメの短剣ってないか?」
「短いの持ってても魔物は倒せねぇぞ?」
「分かってて頼んでるんだ」
「そうか?じゃあそうだなぁ。これとかどうだ?」
店長が取り出したのは刃渡り約20センチの妙に黒っぽい短剣だった。




