二十二話 【ランク上げたいんですけど】3
ランクを上げてもらうべく、部屋まで付いていく。
バジルは自分の席に着くと引き出しを漁って、一枚の紙に何やら書き始めた。
「少し散らかってるが我慢してくれ」
よくこれを少しと表現できたな・・・
机の上は書類が山積み。壁や棚には本や箱と一緒に表彰状やメダル、あれは勲章か?凄いな。
紙くずと一緒に入ってなければもっと凄いが・・・
「・・・自己紹介してなかったな、俺はバジルだ。ここでギルドマスターをやっている。まずは謝らせてくれ。あそこまでやるつもりは無かった。すまん・・・それと、ギルドカードを出してくれ、約束通りBランクにしてやる」
「あ、どうも」
「しかしアレは凄かったな!流石魔術師!Aランクの俺でもどうやったか分からん!」
俺、魔術師と思われたのか。
てかオッさんAランクかよ!?
俺Aランクに勝ったのかよ!?
Aに勝ったのにBまでしか上がらないってちょっと納得できない。
「ほら、俺が間違えて致命傷与えただろ?下手したら殺してた。どうやって治したんだ?」
「あー」
これは言って良いものなのか?
生物分野を応用しました★なんて言えねぇぞ!?
「アレは・・・治癒魔法だ!治癒魔法で治したんだ!」
「ははっ治癒魔法か!俺が知ってるものとは随分と違う様だが・・・?」
おっと、バレたか?
「まあ、どんな手を使ったか知らんが、この噂を聞きつけて、ちょっかいを出す輩もいる。気を付けろよ」
うん。これは確かに気をつけないといけないな。
特に帰り道。
さっきの戦闘で魔力が残ってないから自分の体力しか当てにならない。
魔法が使えない自分が弱いのは自覚している。
ロジャーさんと張り合えるかも定かでは無い。
今バジルに攻撃されたら死ぬだろう。
まあコイツが心配してるのはそこじゃないとは思うけど・・・
「気をつけるよ」
「でだ、Cランクの依頼の件だが・・・あれは受けるな」
「なぜ?」
「俺がもっと良いものを紹介しよう」
もっと良いもの?
なんだ?
依頼の掲示板を見たわけでは無いが、受付嬢によるとランク上げできそうなのはあれのはずだ。
「安心しろ!ちゃんと稼がせてやるから!お前、金が欲しいんだろう?」
俺が欲しいのは金じゃなくてランクなんだが・・・
バジルはニタニタしながら一枚の紙を書類の山から引っ張って来た。と言うよりさっき書いてたやつか。
俺は目を通すと、呆れてそれを棒読みした。
「けいやくしょ。バジルさまの配下になります」
「な!どうだ!いいだろう?」
ダメだこいつ・・・
「・・・あのですね、もっといろいろ書くものあるでしょう!」
「え?何で怒るんだ?俺の下で働けるんだぞ?」
「だぁれが!あんたの下で働くかよ!俺勝ってるのに配下って書かれてるし!条件も何も書かれて無いじゃないか!」
「お金もらえるんだぞ!?」
「額!金額が書かれてないのによく言えたな!そんなんだから机が書類の山になるんじゃないか!?」
「全くです!」
呆れていると部屋の入り口から声がした。
「ルーシー!?」
俺に討伐依頼を紹介した受付嬢だ!
「そこの彼の言う通りです!これだからバジルさんは・・・」
彼女は部屋に入るなり、バジルの悪し点をズバズバと言い始める。
言われてる本人はと言うと・・・
うわぁ・・・
大の男が涙目だ・・・
さっきまでの調子はどうした?
まあ俺には関係無い事だが・・・
「あなたもです!」
「!?」
なんで俺も!?
「討伐依頼は受けようとするし、ギルドマスターであるバジルさんには勝っちゃうし・・・もう言うこともありませんわ!」
「・・・」
俺がやったのそれくらいだと思うが・・・
というか褒めてるのかこれは?
「・・・そうだ!ルーシー!悪いが見ての通り来客中だ!待っててくれないか?」
「仕方ありません、終わったら机の書類もありますし覚悟して下さい」
「わ・・・分かっとる」
受付嬢は冷たい視線をバジルに向けると部屋を出て行った。
バジルは緊張が解けたのか「ふう」と息を吐く。
「しかし部下に怒られるとは・・・」
「ちっ違うぞ!?彼女、ニーナは俺の婚約者!になる予定なんだ!それであれだ!あれなんだよ!可愛いだろ!」
なるほど、それで立場逆転ってか。
リア充め・・・
「はいはい、わかりました。じゃあ俺は用があって帰りますんでカード返して下さいな」
バジルの嫁自慢を聞く心の余裕は無い。
早くここから出たいものだ。
そして怒られろ!!
「もう行くのか!?分かった。今カードを返す」
「お、上がってる。ありがとう」
ギルドカードを見ると、ランクがBに上がっていた。
「最後に一つだけ、気を付けろよ」
「あ、ああ」
今のはなんだ?
何かを予兆している様な気がしてならない・・・
まあいいか。
ーーーーーー
「おお?マスターに勝ったのってあいつじゃねーか?」
「そうだ!そいつだ!」
「あいつに賭けて正解だったぜ!」
「ちっ!いつもマスターが勝ってたから・・・」
「明日どうするー?」
「俺は例の森いくぞ」
「あー魔物のやつねー」
ギルドを出るためにロビーを通るとそんな声が聞こえる。
テーブルは満席どころか、その後ろから割り込む形で話してる者もいる。
俺は混雑したギルドを出た。




