二十一話 【お稽古】
さて、ショウの訓練に行かなければ。
ショウが学院に入学することが決まり、その試験対策として俺が剣術を教える事になった。
「ロジャーさん!よろしくお願いします!」
「じゃあ始めるぞ、構え!」
ここ十数日、剣術を教えて来た。
「素振り100回、始め!」
「はい!」
訓練の始めは素振りからだ。
数日前は木の棒だったが、今は訓練用の剣だ。
重い物を素早く振るうと筋肉を使う。
腕力作りにはもってこいだ。
後は腹筋やら色々させる。
「後半分!」
姿勢は前に比べたらだいぶマシになったな。
ショウは昔ジョギングや運動をしていると言っていたが・・・
俺から見たら単に健康なだけだ。
筋肉も体力もそこまでじゃない。
第2地区の貴族連中と比べたら痩せてるだけ多少マシだが、学院の実技試験で高得点を取るとなると、ちと問題だ。
何しろ高得点を狙うとなると、相手である試験監督と互角に戦わなければならない。
正直、力勝負だと俺でも厳しい。
だが、体力だけで戦うバカはいない。
「終わりました!」
「よし!じゃあこれから取って置きの技を教えよう。よく見るんだぞ」
体内で魔力を循環させ、肉体組織を強化する【肉体強化】
ショウにコレを教えるのは初めてだ。
腰に下げた剣を持ち、近くにあった木をぶった切る。
シュンッと剣が風を着る音が鳴ると、切り株を残して木がゆっくりと倒れていく。
「凄い・・・剣で、一撃で、木を切った」
「これは肉体強化って言うんだ」
「・・・魔法ですか?」
「そうだ。文字通り肉体を強化する魔法だ。これが使えれば、普段切れない物は切れるように、硬い物は砕けるようになる」
そして使い方は他にもある。
「肉体強化と言っても、身体が動いても道具がついてこない時もある。例えばこうだ」
そう言って、倒れた木から丁度良さそうな枝を剣で切って拾う。
「ショウ、問題だ」
「はい!」
「肉体強化をした状態で、この枝を振るとどうなる?」
「枝が折れる?」
俺は【肉体強化】をして枝を振るう。
「正解だ」
枝は握ったところを残して折れた。
今度はもう一つ枝を用意し、ショウに聞く。
「じゃあ、木の枝に肉体強化をかけたらどうなる?」
「枝に肉体強化!?」
「まあ、物体強化と言う別名もあるが・・・」
「折れない?」
【肉体強化】を使ってもう一度振るう。
「正解だ。枝は折れない。枝は肉体では無いが、肉体と同じ様に強化することができる。体を強化するのが肉体強化、物を強化するのは物体強化と呼ばれているが、元は肉体強化という魔法を物体にかけただけだから基本は同じ。呼び名が違うだけだ」
「分かりました」
「普通の冒険者はそれなりに使えなくては旅の途中で命を落とす。まあ、遠距離型や、魔術師、治療師になる場合は必要無いが、ショウのように剣術の試験で高得点、ましてや特待生を狙うなら覚えていた方が良い」
「頑張ります!」
ショウの魔力量は非常に少ないが、魔力石を使えば問題ない。
また、魔道具を装備すれば、自動的に発動する。
わざわざ自分の魔力を使う必要もない。
まあ、その代わり多少高くつくが・・・
「こんな感じですか?」
ショウは魔力石で【肉体強化】を発動して、持ってた訓練用の剣を振るう。
ヒュッと音がなって、ショウが「あ」と声を漏らす。
剣はショウの手からするりと抜けて俺の方へ飛んで来た。
俺は剣でそれを弾く。
キンッと音がなり、弾かれた剣は地面に刺さった。
「すみません!」
「大丈夫だ、肉体強化を初めて使うときはよく起こる事故だ。俺も昔、振った剣が牛に当たって、その日の夕食が豪華になったよ。ハハハッ」
「でも・・・」
「良いんだ、気にすることはない。それより、さっきの感じでもう一度振ってみるんだ」
「はい!」
「今度は投げない様にだ。武器が無くなると言うことは死ぬのと同じだと思え。離すなよ!危ないし」
「はい!」
ーーーーーー
「よし、今日はおしまいだ」
「はい!ありがとうございます!」
ショウが【肉体強化】に慣れた頃、一度剣を合わせた。
訓練は順調だ。
俺の言ったことをしっかり守ってる。
このまま続ければ、剣術で満点までは行かなくとも、高得点は取れるはずだ。




