十七話 【屋敷】1
朝起きたらセバスチャンに食堂へ案内された。
中は広く、長いテーブルには料理が並んでいた。
「すごい・・・」
「ショウ様はこういうの初めてですか?」
「あ、うん」
「今までどの様な食事を?」
「・・・言っても分からないと思う」
異世界の料理を説明しても理解してもらえないだろう。
「そうですか。では、楽しんで頂ければと思います」
「ありがとう」
「あ、ショウ!さまっ」
ヘレンさん、無理に様を付けなくてもいいのに・・・
「おはようございます」
「おはよ!」
めっちゃ元気だな。
「何か良いことありました?」
「うん!ショウが賢者だって言ったら叔母様許してくれた!」
元凶あんたかい!
「ロジャーさんが言ったのかと思いました」
「ううん、私が手紙でね」
「手紙?」
「ほら、ショウを家に入れる時の準備早かったじゃない?」
家じゃなくて屋敷ね。
「そうですね」
急に来たが、案内された部屋はちゃんと整ってた。
「あれは私が手紙を送っていたからなのよ」
「へぇ」
「ヘレン、ショウ、おはよう」
「あ、ロジャーさん。おはようございます」
「おはよー」
「食事は勝手に食べて良いからな?」
「何であんたが言うのよ」
「言わないとショウが食べて良いかダメか分からないからだろう」
勝手に食べて良いのか。
「それに、腹ペコのまま試験を受けることになるからな」
「!?」
試験?
「何ですかそれ!?」
「ヘレンから聞いてないのか?」
「聞いてないです!」
「ヘレン・・・」
「こ、これから言おうと思ってたのよ!」
忘れてましたね?
絶対忘れてましたよね?
「まあ食事しながら軽く聞き流してくれ」
聞き流して良いのか!?
「はあ」
「それでだ、ショウが受ける試験と言うのは、叔父さんが考えたものだ。書斎で受けるから、食べ終わったら案内しよう。例の物もそこで作る」
「え」
「叔父さんの事だから分からない問題しか出さないかもね」
「叔父さん?」
「ああ、デフロット叔父さんね。グレイプス家の当主で、普段は学長をしている」
学校あるんだ・・・
「まあ、それなりに知識はあるから覚悟した方が良いぞ」
この世界で問題出されても分かるわけ無いだろ・・・
「解ければ何か良い事あるかもね。うふふ」
ヘレンさん、「うふふ」じゃないから。
ーーーーーー
「なんじゃと!」
目の前でローブをヒラヒラさせながら左右を歩き回り、白髪頭をかく老人がいる。
「何百年も分からなかった魔法の正体を噂通りに暴き」
磁力・・・
「再現することに成功し」
例の電磁石・・・
「誰も解けんじゃろう難問を簡単に計算するなど!」
授業でやった・・・
「むむむ!!!」
顔近い近い近い!
「・・・」
「一つ、聞きたい事がある」
「な、なんですか?」
「お前は、賢者、か?」
「・・・」
どう答えれば良いんだ?
「違う」と言えば追い出されそうだし、「賢者だ」と言ったらそれはそれで面倒な事になりそうだ。
「儂も、昔は、賢者と言われたものじゃ」
「・・・」
デフロットさんはそう言うと書斎の窓をぼーっと眺めた。
「あの・・・」
「なんじゃ?」
「僕は、賢者じゃ、無い、です」
「そうか」
「・・・」
「知ってた」
「え?」
どういう事だ?
「セバスチャンに聞いたんじゃよ」
「セ、セバスチャン!?」
あの執事!
「賢者が来ると聞いて、本物か確かめる必要があったからのう。監視を付けさせてもらった」
「・・・」
まあ当然か・・・
「話は以上じゃ」
「は、はい」
「あ、忘れておった」
「はい?」
手を掛けたばかりのドアノブを放す。
「屋敷の中は、自由にして良い。あと、何か欲しい物があれば、セバスチャンに言いなさい。用意させる」
「ありがとうございます」
書斎の外ではロジャーさんとヘレンさんが待っていた。
「ふう・・・」
「どうだった?」
「もうめっちゃ緊張しましたよお!」
「大丈夫だったんだな?」
「はい」
「やったあ!」
「ヘレン、書斎の前で大声出すな」
「あ、ごめん」
書斎での出来事を話しながら部屋に戻る。
ヘレンさんは途中で「ちょっと用事がある」と言って別れた。
戻ると中は綺麗に掃除されていた。
布団は綺麗に整えられ、出しっ放しの服はハンガーに掛けられクローゼットに入っていた。
「ロジャーさん」
「なんだ?」
「部屋がいつも綺麗にされるんですけど、ロジャーさんの部屋もそうなってますか?」
「いや、散らかったままだ。多分ショウが賢者だからじゃないか?」
「そうですか?」
「そうだよ」
でもデフロットさんだっけ?「賢者じゃ無い」ってバラしちゃったしなあ・・・
今後、対応が変わるかもしれない。
「それより、ショウ」
「はい?」
「早くあれ作ろう」
「あれじゃ分かりません」
「ほらあれだよあれ、なんて言うんだっけ?」
分かるわけ無い・・・
「さっぱりです」
「あれだ!馬無し馬車!」
ああ、あれね。
「自動車」
「それだ!」
確かに早く乗りたい。
作るのも面白そうだ。
「じゃあ、早速作りますか!」
「おお!」
「「・・・」」
「設計図書きましょう」
「そうだな」
「綺麗で大きな紙って有りますか?」
「んー、地図の裏面?」
「・・・」
そう言えば、デフロットさんに「セバスチャンをパシれ」的な事言われたな。
「セバスチャンに頼みましょう」
「できるのか?」
「デフロットさんに許可も貰いましたし」
「ショウ、やっぱお前凄えな。叔父さんのお気に入りの執事長を自由にできるとか」
「・・・」
ーーコンコンーー
「はい」
「セバスチャンです」
すごいタイミングだな。
「デフロット様に言われて来ました」
話は既にしてあるのか。
デフロットさん仕事早いね〜
「セバスチャン、大きくて綺麗な紙を用意して貰いたいんだけど」
「紙ですか?」
「うん」
「分かりました。他に何か有りますか?」
いろんな部品を作るのに、材料を加工する必要があるな。
「鉄を加工できる人っている?」
「どの様な物を作るかによりますが、集めましょう」
「あと適当な馬車を一台と、鉄をできるだけたくさん」
「他にはございませんか?」
「今はそれで十分かな」
「分かりました。すぐに用意しましょう」
「じゃあお願いね」
セバスチャンが部屋を出る。
ロジャーさんを見ると、ポカーンとした表情でこっちを・・・違うな、これはフリーズしてるのか。
「ロジャーさーん」
「ん、あ」
「大丈夫ですか?」
「あ、いや、なんか、あの執事と自然に話してたから驚いた」
「そんなに驚きますか?」
「普段は叔父さんのところだし、出てくるのは貴族が来た時だけだからな」
「そうなんですか?」
「しかも、出て来て相手する訳じゃなくて、部下がちゃんとやってるか確認するだけ」
そうか、滅多にお目にかかれないってことか。
ん?
「それで執事の仕事務まるんですか?」
「まあ、執事というより、叔父さんの使いだな」
執事というのは名前だけなのか。
「その執事を自由に使えるんだ。驚くだろ」
「あはは・・・」
なるほどね。
ある意味、とんでもない駒を手に入れたって訳か。
「それで自動車が作れるなら、いいじゃないですか」
「それもそうだな」
この後ロジャーさんに屋敷を案内して貰った。
一階は玄関ホール、大広間、食堂、応接室、図書室。
二階は客や個人の部屋。
三階はデフロットさんとその奥さん、ジェナさんの部屋、書斎。
地下は厨房と倉庫。
トイレは各階にあった。
あと使用人の部屋が各階にあり、すぐに対応できるようになっているらしい。
部屋の場所と道を覚えれば、セバスチャンに誘導して貰う必要も無くなるだろう。




