十五話 【執事にびっくり】
コンコンとドアを叩く音がする。
「はい」
「俺だ」
ロジャーさんか。
ドアを開けて中に入ってもらう。
「これからについて話がある」
おう、なんだろ。
「まずお前は賢者だ。良いな?」
え?
良くない良くない。
この世界の事なんてまだ1ミクロンも分かってないんだぞ?
この世界での問題を出されても答えられる気がしない。
「無理です!僕にはできません」
「ほら、デンキとやらを見せれば、問題ないだろう?」
電気を見せる?
それロジャーさんが見たいだけだよね?
顔に「見たい」って書いてあるぞ。
それに電気を目で見るには放電させる必要がある。
電圧が高くなるのだ。
「電気、ですか・・・」
「準備なら俺が手伝うぞ!」
準備中に感電するオチが見える。
「電気を使った物でも良いですか?見えるようにするにはリスクが少し高いので」
「そうか、じゃあ仕方ない。何を作るんだ?」
納得してもらえたようだ。
何を作ろう・・・
電磁石あたりで良いか?
金属がくっ付いたり離れたりする様子はさぞ不思議だろう。
モーターは・・・磁石が無いと作れそうに無いな。
そもそも前の世界のような質のいい磁石があるとも思えない。
あるとしても磁鉄鉱くらいだろう。
まあ、工夫すれば磁石無しでもモーターは作れる。
「--ウ」
これってエンジン作るより簡単だな。
なんでエンジンを作ろうと思ったんだろう。
この世界じゃどっちも同じか・・・
「ショウ!」
「あ、はい!」
「大丈夫か?ぼーっとしてたぞ」
「大丈夫です。何を作るか決めてただけなので」
「で、何を作るんだ?」
簡単なものでいこう。
「電磁石です」
「デンジシャク?」
どう説明しよう・・・
まず磁石があるか確かめてみるか。
「磁石って分かります?ほら、鉄がくっついたり、方角を示したりするやつです」
「むう・・・吸鉄石に似てるな」
吸鉄石?
「鉄を引き寄せたりするんですか?」
「ああ、ショウの言ってたジシャクと同じようにな」
たぶん磁石の事だろう。
「その、吸鉄石でしたっけ?それを作るんです」
「作れるのか?鉱山でしか取れない、鉄を引きつける魔法を持った石を?」
鉄を引きつける魔法・・・
「その魔法はたぶん磁力です」
「ジリョク?」
ああ、しまった。
磁力をどう説明すればいいか分からない。
そもそも自分がよく分かっていない。
問題集の解説に載ってればいいな・・・
「後で説明しますね!」
「お、おう・・・」
いつもこんな風に説明を後回しにしてるような、いや、気の所為だ。
「そういう訳で電磁石を作ります。電磁石は色々用途があるので面白いと思います」
「デンジシャクを作るんだな?」
「はい」
「分かった。明日の朝また来るから、その時に必要な材料を教えてくれ」
「分かりました」
そう言って部屋から出て行く。
ん?
結局、賢者の話はどうなったんだ?
明日聞くか。
今日はもう寝よう。
ーーコンコンーー
ん?
「はい」
「セバスチャンです」
セバスチャン?
「御食事をお持ちしました」
ドアを開ける。
例の執事だ・・・
「ど、ども」
「まだ、済まされてないとの事でしたので、ご用意しました」
料理の乗ったワゴンを部屋に入れ、一礼する。
「あ、ありがとうございます」
こちらもお辞儀をする。
「お風呂はいかがなさいますか?」
「入ります」
「かしこまりました。しばらくしたらお呼びします」
「ありがとうございます」
「あと、ショウ様は賢者様とお伺いしております。敬語などのお気遣いは必要ございません」
なに!?
いつから賢者になった!?
「賢者じゃ無いです」
「そうですか。では何かお困りでしたらお呼びください」
流された!
しかも既に困ってる!
セバスチャンはワゴンを机へ寄せると、料理を並べて「それではごゆっくり」と言い残し部屋を去ってしまった。
用意された料理を見る。
すぐに豪華だと分かる。
ここはどうなってんだ?
執事やメイドがいて、料理も豪華だ。
ヘレンさんに叔母様と呼ばれてた人、まだ見た事ないけど凄い人なんだろうな・・・
そんな事を考えながら、料理を食べる。
まるで全て見ていたかの様に、食べ終わった頃にドアがノックされ、セバスチャンが入る。
「浴室へご案内します。着替えは準備しておりますのでご心配なく」
「あ、ありがとうございます」
「ですから、お気遣いは必要ありません」
「わ、分かった」
別にいいだろ・・・
「それではこちらへ」
ーーーーーー
浴室はバスタブがあり、シャワーもあった。
タオルもシミ一つ無かった。
因みに、用意されていた着替えは、妙にサイズが合う下着とバスローブだった。
戻る時、セバスチャンがナビとしての同行を求めたが、部屋までの道は覚えていたので断った。
まあ、断った第一の理由は気味が悪いからなんだけどね・・・
部屋に戻ると食器は片付けられ、部屋の荷物も整理されていた。
部屋の灯り・・・と言ってもロウソクだがベッドの側にあるのを残して他は消されていた。
火を吹き消し布団に入る。
今日は疲れた。
明日はもっと大変なんだろうな。
そう思い目を閉じる。




