十三話 【お肉を食べる】
第四地区への門は何の問題も起きずに普通に通れた。
何か言われるのではないかとヒヤヒヤしたが、声すら掛けられなかったので、そのまま通過。
ロジャーさんの方を見ると「何だ?」という感じだ。
すると「ふっ」と、隣から笑いを堪えるような声が聞こえる。
「ヘレンさん!」
「ごめんごめん、言ってなかったわね。帝都に一旦入れば移動は自由よ」
「先に説明して下さいよ!」
「目覚ましの仕返しだもん!うふふっ」
「・・・」
この人子供だ・・・
確かに目覚ましの件は申し訳ない。あの機能を知らない人にとって、急に音を出し始めたら恐怖だろう・・・
でも、わざとじゃないし、ちゃんと謝ったぞ?
しかも「うふふん」と笑いながら歩いているのだ。
何だ?
ロジャーさんが歩く方向を変えた。
ヘレンさんも「あれ?」という表情をしてる。
行き先は・・・飲食店?
窓が大きく、テーブル席が見える。
そういえば朝食を取ってないな。
ちょうどお腹も空いてた。
「ショウ、少しここで待っててくれないか?」
「はい」
なるほど、
ボッチか・・・
銅貨を数枚貰う。
「ヘレン、ちょっとこっち来い」
あれ?なんか急に笑顔が怖くなったぞ?
ヘレンさん、何かやらかしたのか?
まあいい。
今は食事にありつける事をありがたく思おう。
◇◇◇◇◇◇
ショウが店に入って行くのを見届ける。
「で、何なの?」
「ヘレン、お前、自分が何やったか分かってるのか?」
「え、なんで?」
「ショウの怒りを買ってからじゃ遅いぞ!」
「怒りを買う?」
「そうなったらタダじゃ済まされないぞ」
「え、でもショウは戦えないし、心配する必要無いんじゃない?」
確かに、スマホとやらが武器では無いと分かった時、かなり気が楽になった。
だが、ショウはデンキという雷と同じものを作り出した。
雷だぞ?
それに、雷も作れるか聞いたら「やってみれば分かります」って言いやがったんだぜ?
ショウは大丈夫だとは思うが、そんな相手に今の様に喧嘩を売るなど自殺行為だ。
「ヘレン、よく聞いてくれ」
「何よ!」
「ショウは・・・雷と同じものが作れる」
「え!?嘘でしょう?」
それが本当なんだよなぁ・・・
「ショウのスマホはデンキと呼ばれる雷と同じエネルギーを使って動いている。この間、そのデンキを作ってスマホに補充してた」
「え・・・作って?」
まあな、冷静になって自分で言ってみればおかしな話だ。
雷と同じものって何だよ・・・
デンキって何なんだよ・・・
そもそもショウは本当に作ったのか?
単にその様なフリをしているのではないか?
そんな考えが頭の中を埋め尽くす。
あークソ!
考えても分からん!
ヘレンを見る。さっきの話で硬直したままだ・・・
「あー、やっぱり今の話は気にしないでくれ。でもショウには謝っとけよ?」
「!? あ、うん・・・」
さて、ショウのところへ行くか。
◇◇◇◇◇◇
うーん・・・
店に入ったはいいが、何をどのように頼めばいいか分からない。
とりあえず、カウンターにいる人に何があるか聞くか。
「あのー」
「んだ?なんか用か?」
興味無さげな表情でそう言われる。
客に対してそれはねえだろ。
「あのー、料理を頼みたいんですけど」
「はあ?お前カネあんのか?」
どこのチンピラだよ・・・
「ありますよ!」
「ははっどうせ盗んだやつだろ?」
は?
「お前みてえのがカネ持ってるんなら、俺たちゃ今頃大金持ちさ!」
「もういいです」
「失せな!はっは!」
周りからも笑いが上がる。
あるテーブルからは「あんな格好でよく店に入れたな」と、別の席からは「間違えて路地裏から出て来たんじゃないか?」「これだから一般人は!」とか言われた。
なんだこの店は!
よく見たら、店内にいる客のほとんどが、貴族っぽい服や装飾を身につけている。
階級差別か!
怒りで歯をくいしばる。
こんなとこごめんだ。
お望み通り失せてやろうじゃないか!
扉をドン!と開けると、ロジャーさんとヘレンさんがいた。
「この店絶対潰します」
「「え!?」」
「とにかくムカついたんで潰します」
「ショウ、一旦落ち着こうか」
「無理です。それより早く第三地区へ行きましょう。早くここから出たいです」
「お、おう。行こうか」
ーーーーーー
気づいたら、第三地区まであと少しと言われた。
「あれ?早くないですか?」
「ショウが馬車と同じ速度で進むから・・・」
そんな早く歩いて・・・た!?
怒りと悔しさで休憩も取らずにズカズカと歩いてたな・・・
てか馬車ってこれぐらいの速度なのか。
「なんかすみません」
「いいのよ」
「ああ、気にするな」
頭が冷静になって、俺が正気に戻ったところで休憩を取る。
今度は2人と一緒に屋台の焼肉を買って食べる。
腹は結構空いていたらしく、何個も食べた。
美味かった。
焼肉を食べた後、通りに一定間隔で掘られた井戸の石壁に背を預けて休んでいると、「そう言えばショウはどこから来たんだ?」とロジャーさんに言われ、どう答えるか迷ったが、「どこでしょうねぇ・・・」と答えておいたら「そうか」とだけ返ってきた。
とにかく肉は美味かった。




