十一話 【宿】
スリ騒動の後、俺たちは宿に向かった。
扉を開け、中に入る。
ここもクリーク村と同じ様に、一階が食堂になってる。
カウンターへ向かい、ロジャーさんが手続を済ませる。
「ヘレン、部屋の鍵だ」
「ありがとう」
「ショウは俺と同じ部屋だ」
「はい」
ヘレンさんと別れ、自分たちの部屋に入る。
クリーク村の宿より高級感がある。
壁や天井に所々装飾が施されていて綺麗だ。
トイレやシャワーもある。
シャワーは火か魔法で温めるのかな?
かなり良い部屋だ。
問題点を挙げるとしたら、ベッドが一人分しかない事だ・・・
「ショウ、何をボーッとしてるんだ?」
「え?あ、はい。エンジンをどう作るか考えてました」
「エンジン?」
咄嗟に出たのがエンジン・・・
まあ確かにこれから必要になってくるし、話を続けるしかないか・・・
「車を動かすための動力源ですよ」
「車?車ってあれか?馬車に付いてる車輪の事か?それを動かすってどうするんだ?」
あ、ちょっと違う。
動かすのは確かに車輪なんだけど、そっちの車じゃない・・・
「自動車の事です」
「ジドウシャか」
「はい。まあ、車輪を動かす点は当たってますけどね」
「で、エンジンとやらはどんな物なんだ?」
仕組みを説明する?
燃料を爆発させて動く装置を?
俺も質問魔に説明出来るほどの解説力は持ち合わせていない・・・
もっと別な感じで説明するか?
「そうですね、馬車を自動車だと考えたら、馬が自動車を動かすためのエンジンになりますね」
かなり雑になった・・・
「なるほど、馬車を引っ張る物をエンジンと考えれば良いのか?」
引っ張る・・・
「この際、どの様に動かすか?では無く、馬車を動かすための動力源をエンジンと考えてください」
「難しいな・・・」
「そのエンジンをどう作るか考えているんです」
「・・・今、俺に何かできることはあるか?」
ロジャーさんに今できること?
「そうですね・・・」
無くね?
「今は無いですね。第三地区に着いたら頼みますので、その時にお願いします」
「分かった」
「ショウ、そう言えば、お前は字が読めないんだったな?」
「はい、読めません」
「俺が教えようか?」
この世界で暮らす以上、必ず使うことになるだろう・・・
「お願いできますか?」
「もちろんだ」
こうして、この世界の字を覚えることになった。
ーーーーーー
「もう少しで覚えられそうだな」
「はい」
今覚えても、明日には3割しか覚えてないだろう。
前の世界でどこかの誰かがそう言っていた気がする。
単語帳っぽい物でも作っていつでも見れるようにしよう。
針金と紙があれば作れるか?
リングは針金を曲げて作ろう。
「疲れたか?」
「少しだけ」
「続きはまた今度にするか?」
「そうします」
紙と鉛筆を片付ける。
鉛筆は枝の先を火で燃やした簡単なやつだ。
「じゃあ寝るか」
「・・・」
この後、ベッドが一人分しか無い事に気付いたロジャーさんとの譲り合いが始まり、俺が負けてベッド、ロジャーさんが床に寝袋を敷いて寝る事になった。




