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ホテル花鳥櫻月の殺人  作者: 天草一樹


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21:音無寧々との会話

 改めて、私、音無寧々は忍者である。アニメや漫画で描かれる通りの、黒装束を身にまとい闇夜を疾駆するあの忍者。

 あれはフィクションであり現実には存在しない? いや、いる。忍者は古来よりこの日本に生息し、継承されてきた秘術を用い責務を果たし続けている。

 忍者の責務とは何か? それは決まっている。

 妖退治だ。

 ああ、またそんな疑わしい目で見つめてきて。気持ちはわかる、昨今の科学万能時代に妖だの忍者だの何を宣っているのだと。しかしこれは紛れもない事実だ。

 この世界には妖と呼ばれる、科学では説明のつかない、異形の怪物たちが紛れ込んでいる。その数は年々減り続けており、妖全盛期であった平安時代などに比べればかなりましにはなっているものの、今なお人類の脅威として幅を利かせている。

 彼らの存在が公になれば人間社会はまともに機能しなくなるため、私たち忍者が陰で退治し続けているのが現状だ。

 だからあなたが知らなくてもそれは仕方がない。むしろ知られていないことが私たちにとって大前提であり、役目を果たせていることを意味している。

 え? そんな誰にも認知されない命懸けの仕事なんて割に合わなくないのかって?

 うーん、それについてはあまり考えたことがない。だって大なり小なり人は生まれた時から何らかの縛りを負うものだ。今でこそ少なくはなったのかもしれないが、家を継ぐことを決められ、結婚相手を決められ、自身で選択できることが少ない人なんてざらにいる。じゃあ彼らは幸せじゃないかって言ったら、そんなことはないはずだ。

 結局大事なのは選択の有無じゃない。周りに誰がいるかだ。

 私には、音無寧々には最愛にして最高の親友である伏見理桜がいる。彼女といられればそれはどこだって天国だし、不平不満は何一つとして思い浮かばない。だから私は今の生活に心より満足している。

 え? 理桜がもし忍者をやめたいと言ったらどうするか?

 ははははは。そんなの言うまでもないことだ。

 忍者の里を滅ぼし、追手が来ないようにしてから、一緒に逃亡するに決まってる。

 その時はもちろん君にも手伝ってもらうから、覚悟してね?


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