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42.オスティル、破滅を覚悟する
わたしは愛する人間の腕に抱かれていた。
その人間の腕は、その人間の本来の身体ではなかった。
だが、それは神であるわたしには関係のないことだ。
なぜ、彼に惹かれたのだろう?
神でありながら、人と恋に落ちる。
よくできた、それだけにありふれた物語。
自分がそのヒロインになるとは想像だにしていなかった。
わたしの愛した男は負けようとしている。
わたしが甘かったからだ。
相手の力を見誤った。
果たすべき役割を果たせなかった。
その報いを、彼が受けようとしている。
いや、グレートワーデンというわたしの世界全体が、だ。
悔しかった。
言葉では言い表せないほどに。
しかし打つ手はもうなかった。
(唯一の救いは――)
彼の腕の中で逝けること。
わたしは破滅を覚悟した。




