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[完結保証]規格外の最強皇子、自由に生きて無双する〜どこへ行っても、後世まで語られる偉業を残していく、常識外れの皇子〜  作者: 西園寺
婚約者選抜

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第94話「選抜開始」

迎賓館の広間には、候補者たちが集められていた。


高い天井。磨かれた床。壁に掲げられた帝国旗。


本来なら、そこは華やかな社交の場として使われる空間だった。


だが今、広間に漂っている空気は、舞踏会のそれではない。


誰も大きな声で笑わない。誰も無駄に近づかない。ただ、互いを見ていた。


タン王国第二王女、リベナ。


その後ろには、候補者ではない少女――タン王国隠密隊長リリが、侍女のような顔で控えている。


アジス獣王国第一王女、テジナ。


シドル大公国第一公女、セレナ・シドル。


ブロドン共和国中央統領の長女、レティア・ゲンデル。


エストル樹国、世界樹の巫女、エリ。


そして、帝国側の三人。


ラインハルト公爵家長女、エルシア・ラインハルト。


カーマイン辺境伯家次女、ミレーユ・カーマイン。


ノルトハイン辺境伯家長女、ユリア・ノルトハイン。


合計八人。


それぞれが違う国、違う立場、違う目的を背負って、この場に立っていた。


リベナは静かに全体を観察している。


テジナは退屈そうに見えながらも、誰が強いかを本能的に測っている。


セレナは人の立ち位置、距離、視線の動きから場の構造を読んでいた。


レティアは柔らかく笑いながら、誰が誰を警戒しているかを見ている。


エリはほとんど動かない。ただそこにいるだけで、周囲の空気を静かに沈めていた。


帝国側の三人もまた、それぞれの表情で他国の候補者たちを見ている。


外から帝国を見に来た者たち。内側から帝国を知る者たち。


その視線が、静かに交わっていた。


その時、広間の扉がゆっくりと開いた。


入ってきたのは、ギルタル・アルノーだった。


王太子補佐長。


皇太子アルトの右手として知られる男。


その姿を見た瞬間、テジナの目がわずかに細くなる。


門前で自分を止め、帝国の力を見せた男。


ギルタルは広間を見渡し、静かに一礼した。


「皆様、お待たせいたしました」


候補者たちは、それぞれ姿勢を正す。


ギルタルは続ける。


「これより、皇太子殿下がお越しになります」


その一言で、広間の空気が変わった。


レティアの笑みが薄くなる。


セレナの視線が鋭くなる。


テジナの口元が少し上げる。


リベナは背筋を伸ばす。


エリは目を伏せる。


エルシア、ミレーユ、ユリアの三人も、帝国貴族としての礼を整えた。


そして、扉の奥から一人の少年が現れた。


皇太子アルト、十五歳。


年齢だけを見れば、この場にいる候補者たちと大きく変わらない。


だが、彼が広間に足を踏み入れた瞬間、誰もが理解した。


ただの少年ではない。


歩き方に無駄がない。


視線に揺らぎがない。


威圧しているわけではない。


声を張っているわけでもない。


それなのに、場の中心が自然と彼へ移る。


帝国という巨大なものが、人の形を取って歩いてきたような錯覚さえあった。


アルトは広間の中央で足を止めた。


そして、候補者たちを一人ずつ見た。


リベナ、テジナ、セレナ、レティア、エリ、エルシア、ミレーユ、ユリア


その視線は、優しくも冷たくもない。


ただ、見ている、その身分ではなく。

その奥に何があるのかを


アルトは静かに口を開いた。


「皆様、帝都までよく来てくださいました」


候補者たちは一斉に礼をした。


アルトは続ける。


「本日より、皇太子妃選抜を正式に開始します」


広間の空気が、一段重くなった。


選抜。


その言葉を聞いた瞬間、全員が改めて理解する。


これは、ただの顔合わせではない。


もう始まっているのだ。


アルトは落ち着いた声で続けた。


「まず、今回の選抜の意味を再確認しておきますよ」


誰も口を挟まない。


「今回選ばれた方は、私の婚約者となります。そして将来、私が皇帝となった時、次期帝国皇妃となる方です」


その言葉に、わずかに空気が揺れた。


皇太子妃。


その響きだけなら、まだ華やかさがある。


だが、次期帝国皇妃。


その言葉は重い、帝国の中心。皇帝の隣。


連合の頂点に最も近い場所。


そこに立つ者を、ここから選ぶのだ。


アルトは続けた。


「皇妃は飾りではありません。帝国の中枢に関わり、必要であれば帝国と連合の間に立つ存在になります」


ミレーユが小さく息を飲んだ。


エルシアは静かに目を伏せる。


ユリアは表情を変えないが、指先にわずかな力が入っている。


他国の候補者たちも同じだった。


リベナは静かに見ている。


テジナは楽しそうに目を細める。


セレナは言葉の一つ一つを整理するように聞いていた。


レティアは笑みを消さない。


エリは、風の音でも聞くように静かに立っている。


アルトは一拍置いた。


「次に、選ばれた方に与えられる力と権能について説明します」


その瞬間、広間の空気が明らかに変わった。


魔力。


帝国において、それはただの力ではない。


皇帝と皇太子のみが持つ、帝国支配の根幹。


そしてその魔力は、皇帝や皇太子が道を繋げ、許可を与えることで、他者にも使わせることができる。


つまり、魔力を与えられるということは、帝国の力の一部に触れるということだった。


アルトは言った。


「皇太子妃となる方には、私と魔力の道を繋げます」


候補者たちの表情が変わる。


「ただし、自由に好き勝手使える力ではありません。使用範囲、目的、権限は明確に定めます」


セレナがわずかに顎を引いた。


権能の制限。


力を与えると同時に、仕組みとして管理する。


いかにも帝国らしい。


アルトは続ける。


「皇太子妃に与える魔力は、皇妃権能として扱います。帝国中枢の判断、災害対応、魔物被害への緊急対処、連合内の危機対応。その範囲において、私の許可のもと行使できる力です」


テジナが口元を上げる。


「つまり、選ばれたら戦えるってこと?」


アルトの視線がテジナへ向いた。


「戦うことも可能です」


「いいわね。分かりやすい」


「ですが、戦うためだけの力ではありません」


アルトは静かに否定した。


「力は使い方を誤れば、守るものまで壊します」


テジナの笑みが少し深くなる。


門前での出来事を思い出したのだろう。


アルトは視線を全体へ戻した。


「そして、今回選ばれなかった方々についても、帝国は役割を用意しています」


候補者たちからの視線が集まる。

落選した後の話、普通なら、そこで終わりだ。


自国へ戻り、別の婚姻を結び、政治の駒として扱われる。

だが、アルトの言葉は違った。


「今回選ばれなかった方々には、可能であれば帝国に残り、各国の大使として滞在していただきたいと考えています」


広間が静まり返った。

リベナの目がわずかに細くなる。

セレナはすぐに意図を読み始める。

レティアは笑みを浮かべたまま、内側で計算している。

エリは静かにアルトを見る。

テジナは面白そうに眉を上げた。


「落ちても帰さないってこと?」


「強制ではありません」


アルトは即座に答えた。


「ですが、私は連合を一時的な仕組みで終わらせるつもりはありません。帝国と各国の間には、常に話せる窓口が必要です」


「それが私たち?」


「はい」


アルトは頷いた。


「この場にいる皆様は、それぞれの国の中心に近い存在です。皆様が帝国に残れば、帝国と各国の間で無駄な誤解を減らせる」


レティアが静かに笑った。


「それは、とても価値のある提案ですね」


「そう見えるのであれば、幸いです」


「ですが、価値あるものには必ず代価が必要になります」


「もちろんです」


アルトは表情を変えない。


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