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[完結保証]規格外の最強皇子、自由に生きて無双する〜どこへ行っても、後世まで語られる偉業を残していく、常識外れの皇子〜  作者: 西園寺
婚約者選抜

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第83話 「仕組みを理解せし者」

「シドル大公国第一公女、セレナ・シドル殿下。入都時に騒ぎは起こしませんでした。検査にも静かに従いました」


「でしょうね」


「ですが、門の意味を見抜きました」


アルトの目がわずかに動いた。


「どこまで」


「兵の配置、荷を確認する順番、候補者が苛立ちや油断を見せやすいのかどうか。それらを見て、帝国は荷だけでなく人間の反応も見ている、と」


執務室に短い沈黙が落ちる。


やがてアルトは、小さく呟いた。


「構造を見る人間ってことか」


「はい」


ギルタルは頷く。


「彼女は門を、設備ではなく仕組みとして見ていました」


「面白い」


アルトは短く言った。


その言葉に、ギルタルはほんの少しだけ目を細める。


それはただの感想ではない。


評価だった。


「さらに、セレナ殿下は大使館までの経路を三つ把握していました。最短経路、混雑回避経路、そして監視が多いと思われる経路です」


「選んだのは?」


「監視が多い経路です」


アルトの手が止まる。


「理由は」


「帝国が何を見ているか、見るためだと」


アルトは、セレナの名の横に小さく印をつけた。


「こちらも、見る価値がありますね」


「ええ」


アルトは名簿を見下ろした。


「テジナ殿下は力で門を揺らした。セレナ殿下は門の意味を読んだ。どちらも自分の武器を持っている」


ギルタルがあえて問う。


「どちらが上でしょうか」


「今は比べる必要はない」


アルトはすぐに返した。


「力と構造理解を同じ物差しで測る意味はありません。重要なのは、その武器をどこで、どう使えるのかということです」


ギルタルは黙って聞く。


「この選抜は、優劣を一列に並べるためのものではないことはわかりますよね?」


アルトは候補者名簿を閉じる。


「皇太子妃の役割に耐えられる者を見つけるためのものです」


窓の外では、夕陽がさらに沈み始めていた。


皇城の庭へ、いくつかの馬車が入り始めている。


ギルタルが視線を向けた。


「そろそろ帝国貴族側の候補者も陛下への挨拶に来ている見たいですね」


「公爵家、辺境伯家、侯爵家ですね」


「はい。特にラインハルト公爵家のエルシア嬢は、最有力候補の一人と見られています」


アルトは静かに頷いた。


「外から帝国を見る者と、内側から帝国を知る者」


「そこで差が出ルカもしれない」


「帝国貴族側はみんな優秀です」


「でしょうね」


アルトは否定しない。


「ですが、優秀であることと、私の隣に立てることは違います」


ギルタルの表情が引き締まる。


「帝国を知っているだけでは足りない。外を知らなければ、連合の中心には立てない。逆に、外を知っているだけでも足りない。帝国を理解できなければ、いずれ潰れることになる」


「どちらにも弱点があるということですか?」


「はい」


アルトは短く答えた。


「だから見るのだ」


ギルタルは少しだけ笑った。


「殿下らしいですね」


「そうですか」


「はい。選ぶ前に、まず壊れ方を見る」


アルトは否定しなかった。


「壊れる者を、中心には置けませんから」


その声は静かだった。だが、内容は冷たい。


ギルタルは静かに一礼する。


「迎賓館での顔合わせは、予定通り進めます」


「お願いします」


「候補者たちには、すでに評価が始まっていると伝えますか」


「必要ありません」


アルトは書類へ視線を戻した。


「気づく者だけが気づけばいい」


「厳しいですね」


「皇太子妃選抜ですから」


また同じ答えだった。


ギルタルは苦笑を隠すように頭を下げた。


「承知しました」


退出しようとしたところで、アルトが再び口を開く。


「ギル」


「はい」


「テジナ殿下、セレナ殿下、リベナ殿下、そしてこれから来る候補者達全員、継続して観察を」


「承知しています」


「帝国貴族側についても同じです」


アルトは窓の外を見た。


「誰が最初に、自分の価値を示すか楽しみです」


ギルタルは深く一礼した。


「では、迎賓館の準備へ向かいます」


「お願いします」


扉が閉まる。


執務室に静けさが戻った。


アルトは一人、候補者名簿を見下ろす。


リベナ。


リリ。


テジナ。


セレナ。


そして、これから集まる帝国貴族の娘たち。


それぞれが違う武器を持っている。


観察。


隠密。


力。


構造理解。


そして、帝国の常識。


アルトは小さく呟いた。


「さて」


窓の外では、帝国貴族の馬車が皇城へ入り始めていた。


「内側の者は、どこまで帝国を理解しているでしょうね」


アルトは笑みを浮かべながら窓に立つ。

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