表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[完結保証]規格外の最強皇子、自由に生きて無双する〜どこへ行っても、後世まで語られる偉業を残していく、常識外れの皇子〜  作者: 西園寺
連合編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/95

第68話「選択の夜」

夜は、どの国にも平等に訪れる。

だが、その重さは決して平等ではなかった。


帝都の空は静かだった。

風も弱く、まるで何かを待つように、街全体が息を潜めている。


その中で――各国は、それぞれの答えに辿り着こうとしていた。



エストル樹国の一室。


灯りは最小限。

外から差し込む月光と、わずかな燭台の光だけが空間を満たしていた。


エリは、窓の外の木々を見つめている。

風が揺らす葉の音が、かすかに響いていた。


背後には、数人の長老たち。


誰も急かさない。

だが、誰もが待っている。


やがて、一人の長老が口を開いた。


「巫女よ。あの条約……どう見る」


エリは、すぐには答えなかった。


指先をそっと窓枠に置く。

そのまま、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「……流れを変えるもの」


「流れ?」


「ええ」


振り返る。


その瞳は、静かで、どこか遠くを見ていた。


「これまで、国はそれぞれに動いていた。争いも、交易も、すべてが分かれていた」


長老たちは黙って聞く。


「でも、あれは違う」


エリは小さく息を吐いた。


「全部を一つにまとめる“流れ”を作ろうとしている」


「帝国が中心となって、か」


「……ええ」


否定しない。


一人の長老が、低く言った。


「危険ですね」


「危険ね」


エリは同じ言葉を繰り返す。


「でも」


少しだけ、口元が緩んだ。


「面白い」


長老たちの空気が、わずかに変わる。


「面白い、だと?」


「だって」


エリは窓の外に視線を戻した。


「止められないもの」


その一言に、誰も反論できなかった。


風が、また葉を揺らす。


「ならば、どうする」


長老の問いは、静かだった。


エリは少しだけ考え――


そして、はっきりと言った。


「行くわ」


「……参加するのか」


「ええ」


短い答え。


だが、その中には迷いがなかった。


「ただし」


その一言で、空気が締まる。


「流されない」


長老たちは、黙って頷いた。


それで十分だった。



同時刻――帝国。


小さな会議室。


そこには、皇帝とアルト、そして四公爵がいた。


誰も座っていない。

机の上には、各国からの報告が並んでいる。


アルトが一枚の紙を手に取る。


「タン王国――参加の意向。ただし条件交渉を前提」


「予想通りだな」


アルノーが言う。


次の紙。


「ブロドン共和国――参加。積極的」


ラインハルトが小さく笑う。


「市場は正直ですね」


さらに。


「シドル大公国――参加。ただし逐条調整を要求」


モンテリオが頷く。


「技術を守る気でしょう」


最後に。


「アジス獣王国――参加。ただし軍事的独立性を強く主張」


デストが低く言った。


「牙は抜かせない、か」


アルトは紙を置いた。


「想定通りです」


誰も驚かない。


むしろ、予定通りだった。


皇帝が初めて口を開く。


「で?」


短い一言。


だが、それで十分だった。


アルトは迷わず答える。


「全て受けます」


四公爵の視線が一斉に向く。


「……受ける、だと?」


アルノーが眉をひそめる。


「条件交渉も含めて、ですか」


「はい」


アルトは静かに頷いた。


「その代わり」


その一言で、空気が変わる。


「条約の“骨格”は変えません」


誰も口を挟まない。


「細部は譲る。だが、通貨、港、制裁、この三つは絶対に動かさない」


ラインハルトが笑った。


「つまり、見える部分だけ譲ると」


「はい」


モンテリオが静かに言う。


「各国は“交渉した”と思う」


「その通りです」


デストが腕を組む。


「そして気づいた時には、もう抜けられない」


アルトは否定しなかった。


皇帝が、わずかに笑った。


「いいだろう」


それだけで、全てが決まる。



翌朝。


再び、同じ会議室。


だが、空気は昨日とは違っていた。


誰もが、すでに答えを持っている。


逃げるか、乗るか。


そして――ほとんどが、後者を選んでいる。


アルトが立つ。


「では、各国の意向を確認します」


静かな声だった。


だが、その一言で、世界が動く。


最初に口を開いたのは――


ハイトス・タン王だった。


「……参加する」


短い。


だが、重い言葉だった。


続けて言う。


「ただし、条件がある」


アルトは頷く。


「承ります」


次に、バイトル・ブリストル統領。


「我々も参加だ」


迷いはない。


「市場は逃さない」


その一言に、誰もが彼らの立場を理解した。


メキシマス・シドル大公は、ゆっくりと言った。


「参加する。ただし、条文は詰めさせてもらう」


「もちろんです」


アルトは即答する。


そして――


メラノ・アジス獣王。


「乗る」


それだけだった。


だが、その後に続ける。


「だが、牙は折らん」


アルトはわずかに頷く。


「承知しています」


最後に。


エリが、静かに口を開いた。


「……参加するわ」


その声は、他の誰よりも静かだった。


だが、不思議と一番響いた。


「流れは、もう止まらないもの」


誰も否定しない。


アルトは、全員を見渡した。


そして、言う。


「では――条約の最終調整に入ります」


その瞬間。


会議は、「提案」から「決定」へと変わった。


逃げ場は、もうない。


世界は、選ばれたのではない。


選ばされたのだ。


静かに。


確実に。


――新しい秩序が、形を持ち始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ