第61話 帝都の客人
次話は明日19時投稿予定です。
晩餐会まで――三日。
帝都。
大陸最大の都市は、いつも以上の活気に包まれていた。
城壁の内側に広がる無数の街路。
商人の声。
行き交う馬車。
そして、各国から訪れた使節団。
皇城の一角には、各国の代表たちが滞在していた。
帝国は他国の王族や代表を皇城へ迎え入れる。
だが、すべての者が城に泊まれるわけではない。
護衛や従者の多くは、担当の辺境伯の帝都屋敷に宿泊していた。
皇城の廊下を、一人の男がゆっくり歩いていた。
巨大な体格。
黄金の鬣。
獅子の獣人。
アジス獣王国の王――
メラノ・アジス獣王。
彼は廊下の窓から外を見た。
視界の先に広がる帝都。
屋根がどこまでも続き、遠くには城壁が見える。
メラノは低く呟いた。
「……でかいな」
獣王国の都も決して小さくはない。
だが、それでも帝都とは比べ物にならない。
まさに大陸の中心。
それが帝国だった。
一方、その頃。
皇城の別の棟。
窓の前に立つ男がいた。
シドル大公国の統治者。
メキシマス・シドル大公。
彼もまた帝都を見下ろしていた。
「相変わらずだな」
静かな声だった。
帝国は昔から強かった。
だが、ここ最近は明らかに違う。
海洋国。
そして魔王国。
短い期間で二つの国が帝国の手に落ちた。
大陸の勢力図は確実に変わりつつある。
メキシマスは小さく息を吐いた。
「……さて」
「どこまで本気なのやら」
その頃、皇城の別室では。
ブロドン共和国の代表、
バイトル・ブリストル統領が机に向かっていた。
机の上には書類が広がっている。
帝国の軍。
帝国の貿易。
そして――
皇太子アルト。
彼はペンを置くと、小さく笑った。
「面白い」
「大陸の国がすべて帝都に集まるとはな」
これほどの外交の場は滅多にない。
だが今回の晩餐会。
その中心にいるのは――
皇帝ではない。
バイトルは静かに呟いた。
「皇太子アルト……か」
その名を口にする。
「どんな男だ?」
その頃。
皇城の庭園では、一人の少女が立っていた。
白い巫女衣。
長い銀髪。
エストル樹国の巫女。
エリ。
彼女は庭の木を静かに見つめていた。
帝都の空気は、森とは違う。
だが――
世界の流れは確かにここへ集まっている。
エリは小さく呟く。
「大陸が動いていますね」
そして思い出す。
昨日、会った少年。
皇太子アルト。
エリの唇に、わずかな笑みが浮かんだ。
エリの唇に、わずかな笑みが浮かんだ。
「……不思議な方」
帝都。
その巨大な都市の中で。
各国の代表たちはそれぞれ考えていた。
帝国のこと。
そして――
皇太子アルトのことを。




