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[完結保証]規格外の最強皇子、自由に生きて無双する〜どこへ行っても、後世まで語られる偉業を残していく、常識外れの皇子〜  作者: 西園寺
婚約者選抜

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第111話 捨て駒の先

資料保管室侵入事件から、その日の夜。


皇城の一室では、再び帝国中枢が集まっていた。


シクタルン帝国皇帝レオンハルト・シクタルン。


王妃レイラ・シクタルン。


皇太子アルト・シクタルン。


王太子補佐長ギルタル・アルノー。


そして四公爵。


ヴィクトル・アルノー公爵。


ゼドリック・モンテリオ公爵。


エドガー・ラインハルト公爵。


レグナ・デスト公爵。


会議室には重い沈黙が流れていた。


その沈黙を破ったのはギルタルだった。


「調査結果です」


机の上へ数枚の報告書が置かれる。


「拘束した男の所属は、予想通りカルバート男爵家の私兵でした」


レオンハルトが腕を組む。


「その男爵は」


「行方不明です」


会議室が静まる。


ギルタルは続けた。


「本日昼過ぎから消息を絶っています」


「逃げたか」


ヴィクトルが言う。


だがギルタルは首を横に振った。


「可能性は低いかと」


「理由は」


アルトが問う。


「男爵家の屋敷に残されていた荷物が多すぎます。逃亡準備の形跡がありません」


レオンハルトが鼻で笑った。


「自害か」


ギルタルは答える。


「あるいは消されたか」


アルトは静かに目を閉じる。


どちらでも同じだった。


男爵は末端。


使われる側。


本命ではない。


「金の流れは」


エドガーが問う。


「追っています」


ギルタルは資料を一枚めくった。


「カルバート男爵家は、この半年で急激に資金が増えています」


ゼドリックが眉を動かす。


「出所は」


「不明です」


ギルタルが答える。


「商売の記録なし。領地収入でもない。どこかから流れ込んでいます」


レオンハルトの金の瞳が細くなる。


「誰かが飼っていたか」


「その可能性が高いです」


アルトは静かに言った。


「ですが、男爵家は捨て駒でしょう」


会議室の全員が頷く。


本命はまだ見えていない。



その頃。


迎賓館。


候補者たちもまた、事件について話していた。


談話室。


リベナ。


テジナ。


セレナ。


レティア。


エリ。


エルシア。


ミレーユ。


ユリア。


八人が集まっている。


最初に口を開いたのはリベナだった。


「本命は最初から別でしょうね」


レティアが頷く。


「ええ。あの男は囮です」


「なら、何を追うべきかしら」


リベナが問う。


レティアは迷わず答えた。


「お金です」


全員が見る。


「人は嘘をつきます。でも、お金は意外と正直です」


レティアは微笑む。


「誰が得をしたのか。そのために誰へ金が流れたのか。それを追えば大抵のことは見えます」


セレナが静かに続ける。


「私は組織を追います」


「組織?」


ミレーユが首を傾げた。


「はい」


セレナは答える。


「男爵家が単独で動くとは思えません」


資料を指で叩く。


「誰が命令したのか。その命令はどう伝わったのか。組織構造を追えば上へ辿れます」


「なるほど」


ユリアが頷いた。


エリは静かに窓の外を見ていた。


やがて、小さく口を開く。


「原因を見るべきです」


「原因?」


ミレーユが聞く。


エリは頷いた。


「誰がやったかも大切です」


一拍。


「ですが、なぜやろうと思ったのかも大切です」


静かな声だった。


「木が倒れた時、倒れた木だけを見ると、次も倒れます」


テジナが笑う。


「難しい言い方ね」


「森では普通です」


エリは穏やかに答えた。


その時。


テジナが腕を組んだ。


「私は見つけたら殴るわ」


談話室が静まる。


数秒後。


ミレーユが困ったように言った。


「殴る前に話を聞こうよ……」


テジナが真顔で返す。


「聞いてから殴る」


「変わってないよ!?」


思わずミレーユが叫ぶ。


そのやり取りに、重かった空気が少しだけ緩んだ。



同じ頃。


帝都南区。


カルバート男爵家。


夜の屋敷は静まり返っていた。


誰もいない。


使用人も。


私兵も。


まるで最初から無人だったかのように。


その闇の中を、一つの影が進む。


リリだった。


音もない。


気配もない。


彼女は窓から侵入し、屋敷内部を調べていく。


数分後。


書斎。


リリの目が細くなる。


「……遅かった」


机の上には灰が残っていた。


燃やされた帳簿。


消された記録。


意図的に処分されている。


だが。


完全ではなかった。


リリは灰の中から一枚の紙片を取り出す。


焼け残った部分。


そこには短い文字だけが残っていた。


――第二段階へ移行する


リリの表情が変わる。


さらに周囲を探る。


机の裏。


隠し箱。


そこに数枚の紙が残されていた。


その瞬間。


リリの目が鋭くなる。


紙には名前が並んでいた。


リベナ。


テジナ。


セレナ。


レティア。


エリ。


エルシア。


ミレーユ。


ユリア。


皇太子妃候補者名簿だった。



深夜。


迎賓館。


リリは誰にも気づかれず戻ってきた。


リベナの部屋。


扉が閉まる。


リリは報告を始めた。


リベナは静かに聞いている。


やがて。


紙を見た瞬間。


表情が変わった。


「候補者名簿……」


「はい」


リリは頷く。


「候補者が狙いではありません」


リベナが目を細める。


「なら?」


リリは答えた。


「候補者同士を争わせるのが目的です」


部屋が静まる。


リベナは紙を見つめる。


誰かが。


選抜そのものを壊そうとしている。



その頃。


帝都のどこか。


暗い部屋。


一人の人物が座っていた。


顔は見えない。


机の上には数枚の紙。


そして。


候補者たちの名前。


その中の一つだけに印が付いていた。


人物は静かに呟く。


「第一段階は失敗したか」


沈黙。


だが、すぐに笑った。


「まあいい」


蝋燭の火が揺れる。


「第二段階を始めよう」


その声だけが、闇の中へ消えていった。

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