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[完結保証]規格外の最強皇子、自由に生きて無双する〜どこへ行っても、後世まで語られる偉業を残していく、常識外れの皇子〜  作者: 西園寺
婚約者選抜

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第110話 帝国の敵

資料保管室から戻った後。


迎賓館には重い空気が流れていた。


候補者たちは、それぞれ用意された応接室へ案内されている。


誰も騒がない。


誰も不安を口にしない。


だが、全員が理解していた。


これはもう、ただの選抜ではない。


帝国の内部で何かが動いている。


そして、自分たちはその渦の近くに立っている。



皇城。


会議室。


そこには再び帝国中枢が集まっていた。


皇帝レオンハルト・シクタルン。


王妃レイラ・シクタルン。


皇太子アルト・シクタルン。


ギルタル・アルノー。


ヴィクトル・アルノー公爵。


ゼドリック・モンテリオ公爵。


エドガー・ラインハルト公爵。


レグナ・デスト公爵。


机の上には、一枚の報告書が置かれている。


『資料保管室侵入事件』


レオンハルトは静かに報告書を閉じた。


「外か」


短い言葉だった。


だが、全員が意味を理解する。


ギルタルが首を横に振った。


「可能性は低いかと」


会議室の空気が変わる。


レオンハルトの金の瞳が向く。


「理由は」


「候補者評価総括書のみが狙われています」


ギルタルは答えた。


「帝国の軍事資料でもない。国境防衛計画でもない。連合の機密でもない」


アルトが続ける。


「選抜に関する資料です」


ヴィクトルが腕を組む。


「つまり」


「皇太子妃選抜そのものに関心がある者」


アルトは静かに言った。


「それも、かなり近い位置の者です」


レイラが少し眉を寄せる。


「候補者たちでは?」


「違います」


アルトは即答した。


「少なくとも、あの八人ではありません」


レオンハルトが小さく笑う。


「随分と信用したな」


「信用ではありません」


アルトは答えた。


「観察です」


一拍。


「もし候補者本人が狙うなら、自分の評価だけで十分です」


エドガーが頷く。


「確かにな」


「総括書を欲しがるのは、選抜全体を動かしたい者です」


静寂。


その意味は重い。


誰が有力か。


誰を落とすべきか。


誰を押し上げるべきか。


それを知りたい者。


つまり――。


「帝国内部か」


レグナ・デストが呟いた。


ギルタルも頷く。


「その可能性が最も高いです」



沈黙が落ちる。


帝国は広い。


貴族も多い。


皇太子妃の座に価値を感じる者など数え切れない。


レオンハルトが椅子に深く座る。


「面倒だな」


「ええ」


アルトは否定しない。


「ですが、予想の範囲内です」


ゼドリックが目を細めた。


「予想していたのか」


「はい」


アルトは静かに答える。


「皇太子妃選抜です」


一拍。


「各国が動くのは当然です」


さらに続ける。


「ですが、それ以上に帝国内が動きます」


エドガーが苦笑する。


「耳が痛いな」


「事実です」


アルトは淡々と言った。


「皇太子妃は未来の皇妃です」


「帝国の中枢に入る」


「皇族になる」


「権力に触れる」


アルトは机の上の資料を見る。


「価値が大きすぎる」


誰も否定できない。



その時だった。


会議室の扉が叩かれる。


「入れ」


レオンハルトが告げる。


現れたのは、近衛騎士だった。


「報告します」


全員の視線が向く。


騎士は一礼する。


「拘束した男の身元が判明しました」


ギルタルが問う。


「どこだ」


騎士は答えた。


「帝都南区の下級貴族の私兵です」


会議室の空気が変わる。


アルトの目が細くなる。


「家名は」


「カルバート男爵家」


聞いた瞬間。


ヴィクトルが鼻で笑った。


「小物だな」


だが、アルトは首を横に振る。


「違います」


全員が見る。


アルトは静かに言った。


「男爵家が単独で動ける案件ではありません」


「だろうな」


レオンハルトも同意する。


皇太子妃選抜。


各国候補者。


迎賓館。


警備網。


そこへ手を出す。


男爵家単独では不可能だ。


つまり。


背後がいる。



レイラが静かに言った。


「表に出てきた者は、捨て駒ですね」


「その可能性が高いです」


ギルタルが答える。


レオンハルトは笑う。


だが、その笑みは冷たい。


「面白い」


誰も笑わない。


皇帝が本当に怒る時ほど、声は静かになる。


アルトも理解していた。


帝国内部で。


皇太子妃選抜を利用した者がいる。


それはつまり。


帝国そのものへ手を伸ばしたということだ。


レオンハルトは立ち上がった。


黄金の魔力が、わずかに漏れる。


会議室の空気が震えた。


「調べろ」


短い命令。


だが重い。


「男爵家だけで終わらせるな」


「金の流れ」


「人の流れ」


「命令系統」


「全部掘れ」


ギルタルが一礼する。


「承知しました」



その頃。


迎賓館。


エルシアは窓際に立っていた。


夕暮れの帝都を見ている。


その隣にはミレーユ。


「難しくなってきたね」


ミレーユが呟く。


エルシアは静かに頷いた。


「ええ」


「選抜だけじゃなくなった」


「そうですね」


ミレーユは空を見る。


「アルト殿下って、大変なんだね」


その言葉に。


エルシアは少しだけ目を伏せた。


帝国。


連合。


各国。


貴族。


皇族。


敵。


味方。


その全ての中心に立つ者。


アルト・シクタルン。


彼が見ている景色は、自分たちが思っていたより遥かに広い。


エルシアは静かに呟いた。


「だからこそ……」


ミレーユが見る。


エルシアは遠くの皇城を見つめた。


「隣に立つ者も、覚悟が必要なのでしょう」


夕日が帝都を赤く染める。


だが、その影では。


誰かが動いていた。


皇太子妃選抜を利用しようとする者。


帝国を揺らそうとする者。


そして、それを追う帝国中枢。


選抜は続く。


だが、その裏で始まった戦いもまた、静かに動き始めていた。

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