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[完結保証]規格外の最強皇子、自由に生きて無双する〜どこへ行っても、後世まで語られる偉業を残していく、常識外れの皇子〜  作者: 西園寺
婚約者選抜

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第109話 「資料保管室」

「資料保管室を確認しろ。今すぐに」


ギルタルの命令と同時に、護衛たちが走り出した。


迎賓館の廊下に張り詰めた空気が広がる。


先ほどまで危機対応試験だと思われていた出来事は、別の意味を持ち始めていた。


リリが見つけた紙片。


そこに記されていたのは、資料保管室への経路だった。


アルトは黒い影の男を見る。


「拘束してください」


「はっ」


護衛たちが男を押さえつける。


男は何も話さない。


だが、その沈黙が逆に不自然だった。


アルトは候補者たちへ視線を向ける。


「皆様も同行してください」


候補者たちは驚かなかった。


むしろ当然だと思った。


もし本当に何かが起きているなら、それもまた選抜の一部になる。


いや――。


選抜以上に重要な何かかもしれない。



資料保管室前。


護衛たちはすでに周囲を封鎖していた。


ギルタルが先頭に立つ。


「開けろ」


扉が開かれる。


中は静かだった。


整然と並ぶ棚。


書類箱。


封印された記録。


一見すると異常はない。


だが、ギルタルの目が細くなる。


「誰か入ったな」


護衛が即座に確認する。


「封印が一つ切られています」


全員の視線が向く。


棚の奥。


帝国紋章が押された箱。


その封印だけが不自然に切れていた。


セレナが呟く。


「狙い撃ちですね」


「ええ」


アルトも頷いた。


無差別ではない。


最初から目的があった。


ギルタルが箱を開ける。


中には複数の資料が入っていた。


連合裁定の資料。


輸送路計画。


候補者評価記録。


そして――。


ギルタルの表情が変わる。


「これは……」


アルトが横から確認する。


そこには。


『皇太子妃選抜候補者評価一覧』


と書かれていた。


ミレーユが目を丸くした。


「私たちの資料?」


「正確には途中評価です」


アルトが答える。


候補者たちの視線が集まる。


誰が高く評価されているのか。


どんな記録が残されているのか。


知りたくないと言えば嘘になる。


だがアルトは箱を閉じた。


「見せません」


レティアが苦笑する。


「でしょうね」


「公平性が失われます」


アルトは淡々と言った。


ギルタルが周囲を調べる。


「他には」


護衛が報告した。


「一枚だけありません」


「何だ」


「候補者評価総括書です」


空気が変わった。


セレナが即座に理解する。


「個別評価ではなく、全体比較資料」


「その通りです」


ギルタルは頷いた。


つまり。


誰が有力候補なのか。


帝国が何を重視しているのか。


それがまとめられた資料。


それだけが持ち出されていた。


リベナが静かに言う。


「候補者本人を狙ったのではなく、選抜そのものを見に来たのですね」


「ええ」


アルトも同意した。


「かなり冷静です」


エルシアは棚を見つめた。


(評価資料……)


誰かが欲しがる理由は分かる。


有力候補が分かれば動き方を変えられる。


交渉もできる。


排除もできる。


テジナが腕を組む。


「で? 誰の仕業なの?」


全員が思っていることを、そのまま口にした。


ギルタルは即答しない。


代わりにリリが床へしゃがみ込んでいた。


誰も気づかなかった。


彼女はすでに痕跡を追っている。


「一つ」


リリが呟いた。


全員がそちらを見る。


リリは床の隅から小さな布片を拾い上げる。


黒い布。


だが、先ほど捕らえた男の服とは違う。


もっと高品質だ。


リベナが目を細める。


「二人いた?」


「少なくとも」


リリは答えた。


「侵入者は一人ではありません」


ギルタルの表情が険しくなる。


「陽動か」


「はい」


リリは頷く。


「捕まった男は囮です」


静寂。


つまり。


本命は別にいた。


危機対応試験の混乱。


灯りの消失。


転倒騒ぎ。


黒い影。


すべてが利用された。


アルトは静かに目を閉じる。


数秒後。


ゆっくり開いた。


「面白いですね」


その声は冷たかった。


候補者たちが初めて見る声だった。


いつもの穏やかな皇太子ではない。


帝国の中枢を預かる者の声。


「私たちの試験を利用するとは」


ギルタルが問う。


「追いますか」


「当然です」


アルトは答えた。


そして候補者たちを見る。


リベナ。


テジナ。


セレナ。


レティア。


エリ。


エルシア。


ミレーユ。


ユリア。


全員を見渡し、静かに告げた。


「皆様」


誰も口を挟まない。


「皇太子妃選抜は続行します」


一拍。


「ですが、ここから先は少し状況が変わります」


候補者たちの空気が引き締まる。


アルトは続けた。


「帝国の敵は外だけではありません」


その言葉が、重く響いた。


「誰が資料を狙ったのか」


「何を知ろうとしたのか」


「そして、その背後に何があるのか」


アルトの紫の瞳が静かに光る。


「それも含めて、見させていただきます」


候補者たちは理解した。


選抜は新しい段階へ入ったのだと。


ただ能力を競うだけではない。


帝国の現実。


権力。


陰謀。


そして国家そのもの。


それらの中で、誰が皇太子の隣に立てるのか。


その試験が、始まろうとしていた。

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