アイの世界
「ん?ここは...?」
瞬きをするとそこは、薄暗い車のなかではなかった。明るい空、輝く太陽。そして、私が見慣れた景色、私が生まれ育った街だった。だけど、なにか違う、太陽は子供がクレヨンで買いたいような落書きだし、ビルの広告は私が今までみたことない読むことができない文字列だった。大型パネルでは、子供向け番組みたいなの映っていた。
そして何より、人気がない、誰もいない、車すら一台も通らない。
不気味すぎる、あの車内よりかはましだけど.......
「ここがアイの世界……?」
私が想像した「アイ」の世界は、子供の頃読んでもらった童話の世界に似たメルヘンな世界かと思っていたけど、あまりにも違いすぎる。どちらかというとディスピトアだ。
「ねぇ......アイ......」
この世界の主を呼び掛けてみても返事がない。
「アイ.......!!」
ハァ......ハァ.......私の限界の大声で叫んでみた。だけど、返事がない。この世界に呼んでもらったのは嬉しいけど、案内がないのは寂しい。ここで私は何すればいいのだろう。
私は胸が苦しくなりその場に座りこんでしまい、目から涙がぽろりぽろり零れ落ちて来た。
「お父さん、お母さん会いたいよ.......」
「あら、有川さんじゃない?」
顔をあげると、朱莉がいた。周りの街はガラッと様変わりしていた。ビル群はRPGゲームに出てきそうな、洋風の建物になっていた。
そして、さっきまでいなかったのに人がいた。だけど、黒っぽい、影だ。少年の影は犬の影を追いかけ、店では商人の影が客引きをして、男女の影が楽しくおどっていた。
さっきよりのゴーストタウンより不気味だ。もう頭がおかしくなりそうだ。
「朱莉さん...?」
目の前の朱莉は、何故か煌びやかなドレスを纏っていた。隣には王冠をした男の影が居た。
「あら、あなたもアイの世界に来ていたのね」
「うん、そうみたい」
「なんで、あなたがこんなところにいるの?」
「え?」
「あなたは、自覚はないかもしれないけど才色兼備で何もかも恵まれていて、友達がいて、皆から羨ましがられて......私はあなたみたいになりたかった」
「......」
「私は、あなたみたいな華やかな世界にはなれなかったの。いつも、誰かと比べられてた」
「そんなことないよ!朱莉さんは私なんかよりとても魅力的だよ!」
「嘘つき!」
「……っ!!」
「皆!彼女を捕まえてっ!」
朱莉は急に叫びだし、犬の影を追いかけていた少年の影が急に私の片方の足にしがみつき、犬の影はもう片方のあしに嚙みついた。
次々と住人の影が私を取り押さえてくる。痛みは不思議とないが、身動きが取れない。
「×××様、あの女の首を撥ねちゃって!」
「朱莉さん、落ち着いてっ!!」
朱莉の眼は爛爛とし、冷静さを失っていた。
隣にいた王子の影が腰辺りに手を延ばした。黒くてわからないが、恐らく、剣を抜いたのだろう。私の首を撥ねるつもりなのだろう。
「お願い朱莉さん、辞めさせてっ!!」
王子の影が剣を天高く掲げ私目掛けて降り下ろした。




