夜道
「ここで、アイの世界に連れていかれた人を」
「えっ!?」
「私が注文を取りに行って、振り返ったら、消えたんですよ」
「あの。もっと詳しく聞かせて貰えないですか?」
「ごめんなさい。仕事に戻らないと」
そういうと、店員は微笑みながら去っていった。
「…………」
私は、その後ろ姿を呆然と見つめていた。『アイ』の世界。一体なんなんだろう。
「行ってみたいな…」
いつの間にか、『アイ』の世界に行きたがっている自分に驚いた。だって、気になるじゃない。
再び、胡散臭い本を広げて、続きのページをめくった。大丈夫、ケーキとコーヒーさえあれば、最後まで、根気が続くはずだ。
****
わからない...結局何もわからない。本には、世界の神隠しやら、目撃者のインタビューが載っているだけで、肝心の『アイ』の世界の実態については書かれていなかった。
『本日もご来店いただき、誠にありがとうございます』
本を読み終わる頃には、本屋の閉店のアナウンスが流れていた。
「帰りたくない…」
きっと、母親はカンカンだ。帰ったら、説教間違いない。スマホを見ると、母親からの不在着信が山のように来ていた。返信しようとしたがプチっと、
私は、急いで、帰る準備をして、店を後にした。日はすっかり落ちて辺り一帯真っ暗だった。夜道で怖かったけれど、家に帰らないわけにもいかず、足早に歩いていると後ろから声をかけられた。周りに建物はなく、街灯が心もとなく光っているだけだ。
「おい! お前!」
振り返ると、そこには金髪のヤンキーがいた。更に、後ろに3人ほどヤンキーがいる。その風貌に思わず、後ずさる。
「な……なんですか?」
「こんな夜道に女の子一人じゃ危ないだろ。俺たちが、家まで連れて行ってやるよ」
「けっ結構です。一人で帰れますから」
「まぁ、そう言うなって。ほら、行くぞ」
男の一人が私の腕を掴んだが、私は無理やり振り払って、来た道を引き返すように走った。しかし、すぐに男たちに囲まれてしまった。
「大人しくしてれば痛い目に遭わなくて済むぜ」
「やめてっ!!」
必死に抵抗するも、私の力ではどうすることもできず、あっという間に捕まってしまいバンに押し込まれた。車はそのまま発進した。




