本を買うだけ
スマホを預けた私は本屋へと向かった。あの萩原って人。仏頂面で風紀委員ってだけで偉そうでとても嫌な奴だった。
私が求めていた本は本屋の店頭で、コーナーが作られるほど大体的に、、大々的に売られていて、すぐに見つかった。
『三月兎の事件簿』という題名の小説だ。
この小説はとても人気らしくて、もう何年もずっと売れ続けているらしい。私も読んでみたけど、主人公の女の子が可愛くて面白かったし、登場人物の人間関係も素敵だ。
だけどこの作者の本はあまりにも人気過ぎて入荷する数が少ない。……だから、こうやって発売日に来ないとすぐ売り切れてしまう。現に、もう数えれるほどに売れている。
私は、まだ残っていた一冊をとり、会計へと上機嫌で向かった。真のコレクターは3冊買うらしいが、私はファンだが、三冊もいらない。
レジの横の新作お勧めのコーナーにふと目に付いた本があった。
『真相!!アイの世界の世界は実在したっ!!』
いつもは胡散臭いなと、スルーしているが、今回はそうもいかない。実際に目にしてしまったんだ。人がアイの世界に導かれるのを。
私は、その本を手に取り、値段を見た。
(うわぁ…意外とする)
その本の価格に驚きながらも、買えないわけではないので、私はそれを購入した。
「ありがとうございましたー」
店員さんの元気な声を聞きながら、私はお店を後にし併設されているカフェに向かう。
そして、そのカフェに入り、今日のデザートセットを頼んで奥の方にあるテーブル席へと座る。
でアートセットが来るのを待ちながら、早速、さっき買ったばかりの本を取り出して読んでみる。
そこには、こう書かれていた。
「えっと……アイの世界って言うのは……」
私は本を開き、その内容を読み始めた。
***
【アイの世界】
この世界にはアイと呼ばれる女神がいます。彼女はこの世界の創造主であり、私たち人間が住まう世界を創ったと言われています。そんな彼女の仕事は、人間たちを見守り導くこと。
ですが、アイ様はこの世界に干渉することが出来ません。何故なら、神とは人間の信仰心によって力を得るからなのです。そして、アイ様には、ある秘密がありました。それは、自分が生み出した世界の住人たちからしか、愛されないということ。
アイ様は、自分のことをとても慕ってくれる存在がいるにも関わらず、自分を愛することが出来ず、他の神様や精霊たちのように、人を愛しませんでした。そんなある日のこと、アイ様は自分の力を欲するものたちに騙されてしまいます。
アイ様の力を手に入れれば、この世界で好き勝手出来ると思ったものたちは、アイ様の力を奪い取ろうとしました。しかし、それを許さなかったのが、異世界から来たという一人の少年でした。彼は、アイ様の力で召喚され、彼女の護衛役となり、彼女を守り続けていました。
そして、彼のおかげで、アイ様は徐々に人を信じることが出来るようになりました。それからというもの、アイ様は他の神々と同じように、人の住む世界に干渉できるようになりました。しかし、それでも、やはり、アイ様は人間たちを深く愛することが出来なかったのです。なぜならば、彼女が愛したのは、たった一人だけだったから……。そうして、アイ様と一人の少年の物語が始まりました。
***
「うぅ…頭が痛くなってきた」
私は、途中でギブアップした本を閉じて、頭を抑えながら重たい息を吐いた。
「お待たせいたしました。…お客様大丈夫ですか?」
デザートセットを持ってきた店員が心配そうに私の顔を見る。
「あぁ…大丈夫です。」
セットでついてきたコーヒーを飲み、リフレッシュして、立ち去ろうとしている店員に話しかけてみた。
「あの、一つ聞いていいですか?」
「はい、なんでしょう?」
「アイの世界ってどう思いますか?」
「そうですね…一時のブームじゃないですか?すぐに皆冷めますよ」
「そうですか…」
「でも、私見たことがあるんですよ」
「何をですか?」
「ここで、アイの世界に連れていかれた人を」




