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プロローグ

――月は、いつだって退屈を嫌う。


それは比喩でも詩でもなく、事実だ。


地球の衛星として静かに浮かぶあの天体の“内部”には、文明がある。

そしてそこに住む者たちは、ある種どうしようもなく——暇だった。


「ねぇ、地球ってさぁ」


ピンと立った短い耳を揺らしながら、ひとりが言う。


「弱いんでしょ? 人間って」


「あぁ。脆くて簡単にぶっ壊れる」


垂れた耳で目を覆い隠すようにしている誰かが、ぶっきらぼうにそう答えた。


「じゃあさ」


軽い調子で、笑いながら続ける。


「強くすればよくない?」


沈黙は、三秒。

そのあと——爆発的に、場が湧いた。


「なにそれ、面白そう!」


「育成ゲームみたいだな!」


「まずはレベル上げさせて、そのあとに侵略テストしちゃう!?」


「最高じゃな〜い!」


彼らにとって、倫理は娯楽の前では羽よりも軽く、ひどく薄っぺらい。

議論でも計画でもない、ただの雑談――思いつきが、世界を書き換えるのに十分な重みを持つ。


こうして、軽いノリのままに地球へ流し込まれた。


――星脈アストラ


それは宇宙に満ちる流れ。

空気のように地球へ溶け込み、人間の肉体と精神を変えていった。


さらに、彼らは敵も用意した。

宇宙植物の種。

侵略者を模した存在。


すべては——


「成長した頃に、遊ぶ」


ためだった。


そして――

「どんな形でもいい。地球を侵略した者には、褒美を与える」


その宣言が、宇宙全体にばら撒かれた。


だが、一つだけ誤算があった。


別の宇宙人たちが、やり方や目的は違えど、同じようなことをすでにしていたのだ。

人間を攫い、強制的に星脈を浴びせ、兵器として育てる。


その中に、壊れた育て方をされた人間がいた。


地球へ集まり始める厄介者たちはまだ知らない。


その星に——

侵略というゲームを、根本から壊す存在がいることを。



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