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第7話:身の程知らずの来訪者





世界樹の修復という大偉業を成し遂げた私。


その祝勝会として、レオンハルト殿下は帝国でも最高級とされる料亭の個室を貸し切ってくれた。

豪華絢爛な料理がテーブルに並び、私専属となったメイドさんたちが恭しく控え、隣には私を慈しむような眼差しで見つめるレオンハルト殿下が座っている。


「シルフィ、この肉料理も食べてごらん。君の健やかな笑顔を見るのが、今の私の最大の楽しみなんだ」

「あ、あの、殿下……! あまり甘やかされると、私、駄目になってしまいそうです……!」

「ふふ、いくらでも駄目になっていいよ。私が一生、面倒を見るからね」


甘い言葉に顔を真っ赤にしながら、夢のような時間を過ごしていた——その時だった。


バンッ!!


重厚な個室の扉が、乱暴な音を立てて蹴り開けられた。


「おいシルフィ!! こんなところで贅沢三昧かよ! 探したんだぞ役立たずが!!」


大声を上げて踏み込んできたのは、剣士のダグラスだった。

後ろには、薄汚れた魔法衣を着たミレーナと、疲れ果てた表情の聖女フィオナが続いている。

三人の装備はボロボロで、王都から必死で私を追ってきたのか、全身埃まみれだった。


「ダグラスさん……? ミレーナさんに、フィオナさんまで……どうしてここに?」

「どうしてじゃねえよ! お前、追放された腹いせに俺たちの装備に呪いをかけて逃げただろ!」


ダグラスは部屋の豪奢な装飾には目もくれず、私を指さして威圧的に怒鳴り散らす。


「おかげで依頼は失敗、装備は壊れて破産寸前だ! まったく、陰湿な嫌がらせをしやがって!」

「そうよシルフィ! あんたのせいで私たちがどれだけ大変な目にあいか!」

ミレーナもキンキン声で責め立てる。


「でも安心してちょうだい、シルフィさん」

フィオナがフッと勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「反省して私たちの装備の呪いを解いて、またタダでメンテしてくれるなら、パーティーに戻してあげてもいいってダグラスさんが言ってくれたのよ? 感謝しなさいね!」


彼らは本気で、私が泣いて喜び、また雑用係として従うと思っているようだった。

自分たちの装備が壊れたのは「私がかけた呪い」であり、私がここにいるのも「自分たちに連れ戻されるのを待っていたから」だと、都合よく信じ込んでいるのだ。


あまりの身勝手さと呆れ果てた言動に、私は言葉を失ってしまう。


「おい、さっさと荷物をまとめろ! 戻ったらお前の報酬は今の半分にしてやるから——」

ダグラスが私の腕を掴もうと無造作に手を伸ばした、その瞬間。


ドスッ……!


ダグラスの手前一ミリの床に、刺すような威圧感を纏った一本の銀のナイフが突き刺さった。


「ヒッ……!?」

「静かにしろ、愚か者ども」


凍てつくような冷たい声が、部屋の空気を一瞬で氷点下まで引き下げる。


ダグラスたちが恐る恐る視線を向けると、そこには優雅にワイングラスを傾けながら、紫水晶の瞳に見たこともないほどの殺気を宿した、美しい青年——レオンハルト殿下が佇んでいた。


「私の大切な客人に……その汚い手で触れようとするな」


レオンハルト殿下の背後から、部屋を埋め尽くすように帝国の精鋭騎士たちが一斉に姿を現し、剣を抜き放った。


「な……なんだお前らは!? 俺たちは『銀翼の風』だぞ! 邪魔するな!」

状況が理解できず突っかかるダグラスに、レオンハルト殿下は心底蔑むような冷ややかな笑みを向けたのだった。






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