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第3話:メッキの剥がれた『銀翼の風』





シルフィをパーティーから追い出した翌朝。


王都の高級宿屋の一室で、リーダーのダグラスは機嫌よく大剣を背中に背負い直していた。


「ハハッ! あの役立たずがいなくなって清々したぜ。無駄な飯代も浮いたし、今日からはガッポリ稼ぎ放題だな!」


「本当よ。あんな不気味に泥ばかり捏ねてる女、ずっと鬱陶しかったのよね」

魔法士のミレーナが、上等な装飾のついた自慢の杖を振りかざして同意する。


「ええ。私たちの実力なら、シルフィさん抜きでもBランクダンジョンなんて余裕ですから」

聖女のフィオナも可憐な笑みを浮かべ、三人は意気揚々とダンジョン『死霊の坑道』へと足を踏み入れた。


彼らにとって、今日の探索は自分たちの強さを証明するための消化試合になるはずだった。


——しかし、異変はダンジョン進入からわずか三十分後に訪れる。


「ちょっとダグラス! さっきから攻撃の出が遅いわよ! もっと前に出てヘイトを集めなさいよ!」

「うるせえな! なんか今日、剣が妙に重いんだよ! 関節の動きも引っかかるし……ぐっ!?」


迫りくるスケルトンナイトの斬撃を、ダグラスは大剣で受け止めた。

いつもなら軽く弾き返せるはずの衝撃。しかし——


ガシャアアンッ!!


甲高い破壊音とともに、ダグラスの愛用する大剣が、根元から真っ二つに叩き折れた。


「なっ……!? 俺の強化大剣が……落ちた骨の剣ごときに!?」

「きゃああああっ!?」


悲鳴を上げたのはミレーナだった。

後方から強力な火球魔法を放とうと詠唱を開始した瞬間、彼女の持つ高級魔導杖の先端が「バチバチッ!」と火花を散らし、黒煙を吹き上げたのだ。


「な、なに!? 魔法が暴走……うそ、杖の内部回路が焼き切れてる!?」

「おいミレーナ、しっかりしろよ! フィオナ、回復魔法を——」


ダグラスが振り返ると、フィオナは真っ青な顔で尻もちをついていた。


「む、無理です……! 私の防具、肩の金具が弾け飛んで……魔力の巡りが悪くて呪文がうまく紡げません……!」

三人全員の装備が、まるで伝染病にでもかかったかのように一斉に崩壊を始めていた。


「な、なんでだ!? 昨日まで完璧な状態だっただろ!?」

「嘘でしょ……まさか……あいつの言ってた『泥補強』って……」


ミレーナの脳裏に、昨夜シルフィが言い残した言葉が蘇る。


『私が施した武具の「泥補強」は、私の魔力が供給されなくなると、長くて三日ほどで定着効果が切れてしまいます』


「あいつ……! 何か呪いでもかけていきやがったな!?」

ダグラスは折れた剣を握りしめ、逆上して叫んだ。


彼らは理解していなかったのだ。

今まで自分たちが無傷でいられたのも、高級な武具が壊れずに性能を発揮していたのも、すべてシルフィが毎晩徹夜で魔導粘土を練り込み、細部まで精密に補修と耐久強化を施していたからだということに。


彼女という「絶対的なメンテナンス要員」を失った瞬間、『銀翼の風』の装備はただの粗悪な鉄くずと化していた。


「ひ、ひぃぃっ! スケルトンが集まってくるぞ!」

「逃げるわよ! 引き返すのよ!!」


命からがらダンジョンから逃げ出した三人は、全身傷だらけ、装備はボロボロという無残な姿で王都へと逃げ戻るハメになったのだった。





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