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アフタヌーンティーはジャスミンで  作者: tosa


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突入

 フランシスコと式神が死闘を演じていた頃、マテオとバレンタは非常用階段で下の階に降り立った。


 廊下の壁に隠れながらマテオとバレンタはスイートルームの扉を覗く。 そこには今日、二度目にした黒いスーツ姿の男が立っていた。


 しかも一人ではなく、同一人物が二人扉を守るように立っていた。


「······あれが式神? 気持ち悪い。同じ人間が何人もいるなんて」


 バレンタが口を押さえながら黒渕の式神を遠目に見る。これからどうするかマテオと相談しようとした時だった。 マテオは扉に向かって駆け出した。


「マテオ!? ちょっと待ってよ馬鹿!!」


 扉に猪突猛進してくる人影に、二体の式神は即座に臨戦態勢に入る。


「吹き飛べっ!!」


 マテオが叫びギフトを発動させる。その瞬間、二体の式神は爆発四散した。爆風は扉も破壊し、埃と煙が舞う中、マテオは構わずスイートルームに突入する。


 突然の爆発音に、恩納はソファーから飛び上がった。後ろを振り返ると、玄関からの煙がリビングまで流れてきた。


 険しい表情のまま、マテオはリビングで歩みを止める。マテオの正面に映ったのは三人。


 ソファーから腰を浮かして怯えるように顔を歪める男、もう見飽きた黒いスーツ姿の式神、そしてソファーに深く腰を沈める白髪の少女。


 マテオは説明を受けることなく、自分が最終目的地にたどり着いたことを理解した。


「僕の名はマテオ。ルサンチマン、ナショナル・モールの虐殺の罪を贖ってもらうぞ」


 小麦色の肌の少年は、ジョセフの死も重なり怒りに満ちた瞳をルサンチマンに向ける。対して、白髪の少女も黙ってはいなかった。


「······黒渕を殺した輩の一人か。ならば我にも理由があるな。貴様を排除する理由がな」


 白髪の少女の漆黒の瞳が妖しく光る。その瞬間、マテオの背後に黒い霧が発生する。


「······なぜだ? なぜ我の印がつけられんのだ?」


 白髪の少女はソファーから立ち上がった。マテオの身体から霧が消えていく。かつてジョセフがマテオ達に言った。


 神から呪われた一族のマテオ達なら、ルサンチマンの呪いにも対抗し得ると。亡きジョセフの言葉を思い出し、マテオは涙ぐむ。それを腕で拭い、決着をつけるべく再び駆け出す。


「アメリカは僕が、僕達が守る!!」


 マテオがルサンチマンにギフトを発動しようとした瞬間、式神が壁となって立ちはだかる。


「どけよ!」


「急々如律令《きゅうきゅうにょりつりょう》!」


 マテオがギフトを発動した瞬間、式神は印を結び黒い光の結界を張り巡らす。


 ドオンッ!!


「うわっ!?」


 リビングに轟音が鳴り響き、恩納は爆風で吹き飛ばされた。厚く柔らかい絨毯が幸いし、軽い打ち身で済んだ恩納は状況を把握しようと周囲を見回す。


 煙が充満する中、白髪の少女は恩納の近くに倒れていた。そして黒渕の式神は仁王立ちしていたが、その胴体には大きな穴が開いていた。


 マテオと名乗った侵入者は、亀裂が入った壁の下に倒れていた。


「······一体この少年は? 何が起こったんだ?」


 恩納は非日常的な光景に混乱しつつも、白髪の少女の安否を確認する。恩納に抱き起こされたルサンチマンは朦朧としながらも意識があった。


「······ちくしよう。なんで僕のギフトが跳ね返されたんだよ?」


 全身に裂傷を負ったマテオは、震える身体を無理矢理起こして黒渕の式神を睨みつける。


「······爆発を引き起こす。それが貴方の能力のようですね。恐ろしい力だ。別の式神から貴方達の情報は共有済です。ギフトの使用回数の制限もね。貴方は既に二度ギフトを使った。果たしてあと何回使えるのでしょうか?」


 式神は穴の開いた胴体から大量出血をしながら含みのある笑みを見せる。そしてその場に倒れ、身体は塵となって消えた。


「······くそっ。僕のギフトはあと一度使える。あと少しだ。あとちょっとでルサンチマンを倒せるのに」


 マテオは前に進もうとするが、身体が言うことを聞かなかった。その時、マテオは誰かの足音を聞いた。


 マテオの前に現れたのは、脳が見ることを既に拒否している式神の姿だった。そして式神は一人ではなかった。


 右腕をバレンタの首に回し、無慈悲な両目でマテオを見下ろしていた。


「······ごめん。マテオ」


 式神に首を絞められ、バレンタは苦しそうに涙を浮かべマテオに謝る。


「降伏しなさいマテオ。貴方達は兄弟のような間柄なのでしょう? 家族を人質に取られた時点で貴方の負けです」


 式神の降伏勧告に、マテオは歯ぎしりをする。その時、マテオの視界の端に人影が映った。途端にマテオは不敵に笑う。


「ああ、そう家族さ。僕達は三(・)人(・)そろって家族だ!!」


 マテオが叫んだ瞬間、式神の背後にフランシスコが躍り出る。式神が振り返る前に、褐色の肌の少年はナイフで式神の首を裂いた。


 式神がよろめき、腕から解放されたバレンタをフランシスコが抱きとめる。だが、式神からの反撃は即座に実行される。


「······力の入り具合が足りませんでしたよ、フランシスコ。もしや我々式神に情が移りましたか?」


「······抜かせ!」


 式神からナイフによる刺突の攻撃が繰り出され、フランシスコがそれをナイフで防ぐ。耳をつく金属音の中、フランシスコが叫ぶ。


「行けマテオ! 全てを終わらせろ!!」


「マテオ! お願い!!」


 フランシスコとバレンタの言葉に背中を押されるように、マテオは不屈に立ち上がる。 そしてアメリカ全国民にとって災厄の元凶である悪魔に向かって走り出す。


「······これで終わりだルサンチマン! 自分の罪を償え!!」


 マテオがルサンチマンを射程に捉え、ギフトを放とうとした瞬間、恩納が両腕を広げ白髪の少女の前に立った。





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