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吸血鬼の花嫁 ——怪物の城に春は来ない——  作者: 胡蝶
第二章:深まる絆と城の秘密
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【幕間:第2-2話】ノートに記された「孤独な王の味」

今夜、お腹の痛みが引かなくてうとうとしていたら、テオドール様がずっと傍で背中をさすってくれた。 彼の手は冷たいけれど、不思議と心の中が温かくなる。


私が「テオドール様はどうして料理がそんなに上手なの?」と聞くと、彼は少しだけ困ったように笑って、昔の話をしてくれた。


セバスチャンさんからこっそり聞いたお話も合わせて、忘れないようにこのノートに残しておこうと思う。


それは、テオドール様が人間としての時間を失ってから、まだそれほど経っていない頃のお話。 当時のテオドール様は、今の優しい(たまに意地悪だけど)彼からは想像もつかないほど、心が凍りついていたらしい。


「アリア。当時の俺にとって、食事とは単なる『栄養摂取』であり、血とは『渇きを癒やすための毒』に過ぎなかった」


彼は、月明かりに透ける自分の白い指先を見つめながら、静かに語り出した。


五百年前、彼はある戦いで致命傷を負い、生き延びるために吸血鬼の呪いを受け入れた。家族も、友人も、愛した女性も、みんな彼を「化け物」と呼んで去っていった。


広い城に一人取り残された彼は、自分が「生きているのか、死んでいるのか」さえ分からなくなり、何十年も、ただ暗闇の中で座り込んでいたそうだ。


「主様は、ご自身の心さえも、この城の石壁のように無機質なものに変えようとされていました」


そう教えてくれたのは、セバスチャンさんだった。 セバスチャンさんは、テオドール様が初めて自分の「魔力」を使って作り出した人形。


「寂しいから作ったんじゃない。便利な道具が欲しかっただけだ」


とテオドール様は言い張るけれど、セバスチャンさんは「いいえ、主様はあの時、確かに震えていらっしゃいました」と、からかうように笑っていた。


テオドール様が初めて「料理」をしようと思ったのは、ある雨の夜。 城の門の前に、行き倒れた旅人の子供がいたのを見つけた時だった。 当時のテオドール様は人間を憎んでいたけれど、冷たい地面で震えるその子を見捨てることができなかった。


「……セバス。人間に食わせるものは何がある」


「主様、この城に食べ物などございません。貴方はもう、数十年も何も食べていないのですから」


テオドール様は舌打ちをして、自ら森へ入り、泥だらけになりながらカブや人参を掘り起こしたそうだ。 五百年経った今なら完璧に作れるスープも、その時はひどいものだったらしい。


「包丁の使い方も知らず、魔法で野菜を粉砕し、味付けという概念さえ忘れていた。……俺が初めて作ったスープは、泥水のような色をしていたよ」


テオドール様は、恥ずかしそうに顔を伏せた。 でも、セバスチャンさんは見ていた。 テオドール様が、その泥水のようなスープを、どうにかして「美味しく」しようと、自分の魔力を少しずつ混ぜて、凍えた子供の体を温めようとしていた姿を。


「……結局、その子供はスープを一口飲んで、『あったかい』と言って笑って、その後すぐに村へ帰っていった。……俺の手元には、汚れた鍋と、生まれて初めて感じた、言葉にできない『充足感』だけが残った」


テオドール様は、それから何百年もかけて、料理を研究した。 いつかまた、誰かがこの城に迷い込んだ時。 あるいは、自分が「怪物」ではない何かになれる瞬間を、スープの湯気の中に探していたのかもしれない。


「……だから、アリア。貴様が俺のスープを『美味しい』と言って飲む時、俺は五百年前のあの雨の夜、救われなかった自分自身がようやく救われたような気がするのだ」


テオドール様の声は、とても優しくて、少し震えていた。 彼が私に作ってくれるスープが、あんなに温かくて、魔法みたいにお腹を元気にしてくれる理由が、やっとわかった気がする。 あれは、五百年の孤独を耐え抜いた彼が、私に贈ってくれる「愛」そのものだったんだ。


私は、彼の冷たい手を握りしめて、こう言った。


「テオドール様、私。……ずっと、貴方のスープを食べていたいです。……一生、ずっと」


彼は一瞬、悲しそうに目を細めたけれど、すぐに私を抱き寄せた。


「……ああ。……一生、などという短い時間ではない。……永遠に、俺が貴様を満足させてやる」


ノートのこのページには、私の涙の跡が残ってしまった。 テオドール様の孤独を知るたびに、私は彼をもっと愛おしく思う。 彼がこれ以上寂しい思いをしないように、私は明日も、明後日も、彼のスープをたくさん飲んで、精一杯の笑顔を見せたい。


明日のメニューは、何かしら。 テオドール様、おやすみなさい。 大好きです。

ありがとうございました!

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