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……。

……。

…………。



「君に頼みがある」

 賓客に用意された部屋で休んでいるところへ、足音もなく白装束の男がふらりと現れた。

 かつて間者のような真似をしていた自分が言えた口ではないが、一体この男はどこからやって来たのか。

 部屋の扉や窓は完全に閉まっている。衛兵が気付かないうちに忍び込める術はないはずだ。壁をすり抜けるか、時間を転移でもしない限りは――。

「おまえは何者だ」

 ジェイドは警戒の目を向けつつ、怪しい男に淡々と問いかけた。

「大切な彼女を助けるためだよ。言わなくてもわかるよね?」

 万が一にも殺意を向けてこようものなら、即座に剣に手をかけるつもりだったが、彼女といわれてジェイドは思いとどまる。

「リディのことか?」

 白装束の男は目を細め、唇を弓のようにしならせた。

「残念だけれど、君が知りたいことはここにいたって得られない。ただ不戦敗ゲームオーバーを待つだけだ」

「俺に理由も明かさずに戦えと? 言え。具体的に何を望んでいる?」

「君も一緒に時戻しの渦に流されてほしい」

「時戻し……」

 ジェイドは眉を潜めた。

 まさか本当に目の前の男は時間転移でもしてきたとでもいうのだろうか。しかし彼の様子を見るに、話半分聞き流し、衛兵に突き出して終わりというわけにはいかなさそうだった。

「捻じれてしまっている【世界】を正してほしいのさ。彼女ひとりではだめだ。彼女に深くかかわっている君の力が必要になる。【世界】は君を巻き込めと、そう告げている」

「どういう意味だ」

「彼女は何度も、何度も、不条理な【世界】に殺されている。殺されて、時を戻されている。そして時を戻すために、また理不尽に殺されるだろう。しかし、それは無限に繰り返されるものではない。核が破壊されれば、バッドエンド行きになる」

「何だって? どういうことだ」

「時間がない。小生の説明はここまでだ」

 いうがはやいか、白装束の男は手をかざし、ジェイドの胸に光を集める。

「何、を――」

 時が止まったかのように身体の動きが封じられ、声が出なくなった。視線さえ動かせない。

「いいかい? 次に時間が戻されたら、彼女を連れ出してほしい。くれぐれも頼んだよ」

 その言葉を最後に、ジェイドの意識は白く染められていった。


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