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君と私の絶対ルール  作者: 冷崎


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3/4

第二話 二人の出会い。

入学式が始まった。推定人数約200人。これが今年の入学生の大体の人数だ。

生徒達は体育館の中で軍隊の隊列のようにキッチリ真っ直ぐ並んでいる。


先頭、つまりステージの上にはハゲた頭をしているおじいさんが話をしている。

この学校の校長だ。灰色のスーツを着ている。


「ーーの歴史により、この校舎がこの地に建てられたのです。」


(知らねーよ!この校舎の歴史なんか誰も興味ないでしょうが!てか話長過ぎる、)


日本共通、もしかしたら世界共通かもしれない校長特有の能力。

『激長スピーチ』

碧や光星、そしてその他の生徒達もその場であくびをしている。ものすごくつまらない。

この話が始まってから20分は経っている。


(てか、西園寺さんは結局入学式に間に合ったのか?)


碧は少し周りを見渡してみる。長い髪に、暗い雰囲気を纏っていたので分かりやすいと思う。

すると左後方に座っている西園寺さんを発見した。


(あ、いた。)


下を向いる。


(寝てるのか?)


体が微動だにしていない。碧は視線を禿げた校長へと戻す。

すると丁度、長いスピーチが終わったようだ。校長がお辞儀をした瞬間全員が拍手を送っている。

特に意味はない。皆がやっているから、手を叩いてるだけだ。


「続きまして、校歌斉唱」


女の先生が壇上横から言った。

その時、碧は朝飲んだ牛乳が当たったらしくギュルギュルとお腹を鳴らしていた。


(これはヤバい?!先生に聞いてみないと!)


碧は右端に居たのですぐに先生に聞くことが出来た。


「すいません。お手洗い行ってきてもいいですか?」


先生はため息をついた。


「は〜、行ってきなさい。」


「ありがとうございます。」


碧は生徒達が校歌歌っている最中に体育館を抜け出した。一番近いお手洗い、一階のお手洗いだ。

碧は猛ダッシュで誰も居ない廊下を駆け抜け、トイレへ駆け込んだ。


「ま、間に合った〜!」


碧がお手洗いを済ませる。

洗った手をハンカチで拭いている。碧は体育館へ戻ろうと廊下を歩いていると、窓の向こうに西園寺が桜の木を眺めている姿を確認した。


「西園寺?あんなところで何やってんだろう?」


不思議に思った碧は西園寺がいる裏庭へと赴いた。

そこにはデカい桜の木が育っており、木製のベンチが複数設置してある。木の周りは円形の形にレンガで覆われている。碧は西園寺に後ろから近づき、声をかけた。


「西園寺さん、何やってんの?」


碧が声をかけた瞬間西園寺の肩が跳ねた。西園寺はすぐに振り返り、碧のことを視認した。

その姿を見た瞬間ほっと、軽く息を吐いた。

どうやら先生でないと分かって安心したらしい。


「.....桜の木を眺めてたの。」


「入学式は?」


「ん、先生にお手洗い行ってきていいですか?って聞いて抜け出してきた。」


(さぼりか、)


「ねえ、」


西園寺が桜の木から視線を碧に移す。顔は長い前髪で相変わらず見えない。どんな顔をしているのか分からない。


「ん?」


「なんでさっき私のことを助けてくれたの?こんな私のこと助けても面倒なだけだと思うんだけど。」


ネガティブな声で碧に質問する。

碧は少し考える。そして一つの答えが頭に思い浮かんだ。


「なんだろ。君と似た境遇の時期があったから、かな?」


言っている意味がイマイチ分からなかった。西園寺は首を傾げた。


「似てるって?どこが?」


「虐められっ子って所がだよ。」


西園寺は更に首を傾げた。

何を言っているのか分からなかった。


「虐められてるの?君も。」


碧は頭を横に振った。


「いや、まぁ、昔な。」


碧は桜の木を見上げた。薄ピンク色の花びらが宙に舞っており傍から見れば幻想的な景色に見えるだろう。


「ウチ貧乏でさ。小さい頃、お父さんが借金置いて夜逃げしちゃって。

そのせいでお母さんが毎日朝から晩まで必死に働いてたよ。貧乏なことを理由に小学校の頃クラスメイトから虐められてた。上履き隠されたり、ランドセルに落書きされたり、教科書隠されたり。散々だったよ。だがまぁ、光星が助けてくれたけどな。」


「光星って?」


か細い声で再度尋ねる。


「お前の前に座ってるやつだよ。」


西園寺は首を横に振る。長い髪の毛がバサバサ宙に舞う。


「わからない......見てなかった。」


「じゃあまぁ、あいつのことは一旦置いといて。とにかくお前の気持ちは少し分かるよ。苦しいよな。」


碧は少し悲しいような、苦しそうな表情を浮かべた。


「相手の機嫌を伺わなきゃいけないとか、クラスメイトの視線とか。だからあの時声が出たんだと思う。見てるだけじゃ駄目、なんとかしなきゃって。ちょっと臭かったかな(笑)」


碧は軽く笑った。それに対し西園寺は被せるように話す。


「そ、そんなこと....ない....よ。誰かが助けてくれたの今回が初めてだったし。助けてくれる人がいるんだってことに、私恥ずかしいことに泣いちゃって.....」


「だから授業で泣いてたのか。」


「え?!み...見てたの?!」


西園寺が顔を近づけてきた。あまりに急な接近だったせいで碧は驚いた。


「あ、ああ.......」


その瞬間西園寺の髪の毛が風によって流れた。黒く長い髪の毛は宙に舞った。

その瞬間西園寺の前髪も同時に宙に舞った。


二人の目が初めて合った。

透き通った青い瞳。

パッチリとした目。

丸い顔の輪郭。

そして彼女の身長は大体160cm前後と見た。世間一般的に見れば美人という部類に入るのだろう。


「かわいい.....」


碧はきれいな西園寺の瞳に思わず言葉を零した。


「ふぇ?!」


顔を見られ、可愛いと言われた西園寺は顔を赤らめ、宙に舞った前髪を手で抑え顔を隠した。


「な、何言ってるの?!」


西園寺は高く震えた声で反応した。

突然の褒め言葉に西園寺は動揺している。


「あ、ご、ごめん!つい。」


「ついって、」


二人の間に微妙な沈黙が流れた。


「そろそろ戻らなきゃ!」


碧はもうすぐ終わりそうな入学式へ戻ろうとする。西園寺とかなり長い時間話していた。

これ以上時間が経てば初日から先生に怒られてしまう。


「ま、待って!!」


西園寺が碧の袖を掴み体育館へ行くのを静止させた。

4秒程、無言の時間が流れた。


「な、何?....」


「こ、これからも君と話しても良いで...すか...」


西園寺は目をつぶり、必死に碧の制服の袖を掴んでいる。そして手が震えている。


(震えてる....そうか、せっかくの話し相手だもんな。俺。)


「じゃあ、まずは友達ということで。よ、よろしく。」


改めて友達宣言をすると少し気恥ずかしいものだ。普段はこんな話、誰にもしないのに。

彼女といると何故か、自分のことを話してしまう。

西園寺は袖から手を離し、一緒に歩き始めた。


体育館の入口に到着し、中を覗くとすでに入学式は終わり、入学した生徒達が続々とクラスへ戻っている最中だった。

体育館の中なら出てきた担任教師に呼ばれた。


「お前たち!もう入学式は終わったぞ!早くクラスへ戻りなさい。」


「はーい」「は、はい....」


二人は返事をし、体を反転させる。そして体育館と本館を繋ぐ渡り廊下を歩き始めた。

クラスに着くと、光星からすぐさま質問を受けた。


「碧!お前何処行ってたんだよ。入学式終わって周り見たらお前の姿が見当たらないんだって、なんで西園寺さんと一緒に帰ってきたんだ?」


「えっと〜....」


碧は頭を掻きながら答えた。


「俺等、今日から友達になったから、」


「は?」


光星は口を開け、ポカーンと間抜けな表情をしている。イケメンな顔が台無しだ。


「何があったんだ?」


「えっと〜、話すと長くなるんだが....」


碧は先程のことを全て光星に話した。もちろん西園寺から許可は貰っている。

碧が信頼している相手ならば話しても良いとのことだ。


「なるほどな。良かったじゃん。」


「何が?」


「友だちができて。中学の頃はお前いつも昼休み俺がいない時ボッチだったじゃん。」


碧は顔を赤らめ光星の口を全力で塞いだ。


「お前それ言うな!!」


すると後ろに立っていた西園寺がか細い声で笑い始めた。


「ふ、ふふっ、」


光星と碧は互いに見つめ合い、笑い始めた。

突然笑ったことで周囲からはおかしな奴認定されたが構わない。


(どーせ、このクラスでも他に友達みたいな人は出来ないだろうさ。)


先生がクラスに帰ってきた。


「席につけ〜!教科書やら、連絡事項の話をするぞ〜!」


クラスメイトや三人は席についた。その後、その日は何も起こらず無事に終わった。

入学式の日は午前中に全てが終了するのでお昼までには家に帰ることが出来た。

三人は一緒に学校を出た。もしかするとまたあの三人組に西園寺さんが絡まれるかもしれないと思ったからだ。


三人は帰宅路に着いていた。


「んじゃ、西園寺さんまた明日。」


「う、うん、小鳥遊君と前宮司さんもま、また明日.....」


碧と光星は家が近いが、西園寺さんは少しうちから離れているらしい。

三人はとある交差点で分かれて別々の方向へと帰っていった。

空はまだ明るく、車も沢山車道を走っていた。


小さな出来事から始まった関係ー

これが西園寺結と小鳥遊碧との関係が始まった瞬間であった。

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