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ようこそダンジョン商店へ~辺境から始める最弱ダンジョンライフ~  作者: エルリア


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7.その辺でいいんじゃない?

大量の荷物とは裏腹に、がらんとした空間。


そもそもダンジョンの中ってことだけど、他の場所はどうなっているのだろうか。


リサは特に気にする様子もなく不思議そうに首をかしげるだけ、この状況に何の違和感もないのか?


「どこって、その辺でいいんじゃない?」


「いや、その辺って・・・」


「え、寝られたらそれでいいんじゃないの?」


「逆に聞くが、魔族はどこで寝るんだ?」


「私は別にどこでも寝られるけどなぁ。木の上でも床でも、所詮は睡眠でしょ?」


そもそもこいつに聞いたのが間違いだった。


これからの生活において床で寝続けるなどあっていいものじゃない、睡眠は人間の三大欲求の一つ、それを蔑ろにするなど許されない。


もちろん床で寝る種族もいるだろう、だが俺は違う。


「聞き方を変えよう、エリザベート様はどこでお休みになられているんだ?」


「そりゃお屋敷のお部屋で寝ておられるわよ。一度だけ入らせてもらったんだけど、すっごく広くて綺麗なの!それに、とってもいい匂いがするんだから」


「じゃあそこにベッドはあったか?」


「あるに決まってるじゃな・・・」


「つまりはそういう事だ。ここには生活するうえで必要な物が何もないんだよ。そりゃ俺ごときがエリザベート様と同じような環境で過ごす必要はないが、せめて生活上必要最低限な物は揃えておきたい。通いならともかく俺は住み込みなんだぞ?」


あのエリザベート様が木の上や床で寝るなどありえないのは分かっていた、だがこいつの認識を変えるにはこのやり方が一番手っ取り早い。


あの人の事だから天蓋付きのベッドとかだろうか、流石にそこまで求めるつもりはないけれど最低限の柔らかさは欲しい所だよな。


「そんなに力説することなの?」


「あぁ、これは今後のやる気にも影響する」


「それなら自分で作ればいいんじゃない?」


「作る?」


「エリザベート様からこのダンジョンを下賜されたんでしょ?マスター登録も終わっているんだから自分で・・・って、そこから教えなきゃいけないのね」


「頼む。それが終わったらさっきのお菓子を追加してやるから」


「仕方ないわねぇ、別にお菓子につられたんじゃないんだからそこは誤解しないでよ」


誤解しないでと言いながら尻尾が動いているのを俺は見逃さなかった。


そんなこんなでリサ先生によるダンジョン講座がスタート、内容としてはダンジョンの構造や自然発生する魔物について。


また、ダンジョンを攻略させないようにするための基本的な構造や、罠の配置などについても教えてもらった。


聞けば聞くほど奥深いダンジョン運営、だが正直なところこういうのは嫌いじゃない。


「なるほど、何でもかんでも作れるわけじゃないのか」


「ダンジョンを改良するのにも魔素が必要だから、それを集めるためにも冒険者が必要なのよ。節約して奥まで入られれば折角貯めたお金を奪われるし、かといって魔物を強くしたり入りにくくするとそもそも冒険者が来なくなるから、そのバランスが重要ってことね。魔物だって無限に生まれるわけじゃないから、自然発生する魔物と移住してくる魔物、そして召喚する魔物をうまく使っていくことが重要よ」


「ん?移住?」


「えぇ、稀に外で生まれた魔物がダンジョンに入ってくることもあるの。あくまでも部外者だからダンジョン内の魔素で生きていくことはできないけど、アンタみたいに食事をすることで暮らしていくことは可能よ。自然発生の魔物と違って勝手に出て行ったりもするけど居着いてくれれば貴重な戦力になるわ」


ダンジョンで生まれた魔物は冒険者との戦闘で生まれる魔素を吸って生きていくので、あまり増えすぎてもよろしくない。


かといって少なければ冒険者に入られた時に戦力不足になってしまうので、そのバランスをどう見るかが重要なようだ。


幸いここは頻繁に冒険者が来るような場所じゃないのでそこまで増やす必要はないけれど、自然発生する魔物をゼロにすると言うわけにもいかないのでこの辺は要勉強だな。


「とりあえず今後するべきことは理解した。後は必要最低限の生活環境の構築と・・・店だな」


「え、店?」


「エリザベート様からは自分の給料は自分で稼げって言われているからなぁ。冒険者相手に商売をして稼がないとさっきの菓子も買えないし、それを買うための給料も払えなくなる」


「えぇ!それは困る!」


「だろ?問題はどこに作るかだ。入ってすぐに店があるってのもおかしな話だし、深すぎても利用できない。程よく戦闘を行いながらダンジョン内に入り、そして帰りやすい場所。それと何を売るかも重要だなぁ。場所が場所だけに冒険者向けの物になるけど、あまり色々置きすぎて奥までこられても困るし、かといって少なくても利用されない。となると、冒険者だけでなく他の顧客も必要になってくるか」


「なんで私を見るのよ」


「そりゃ、大事なお客様だからな。お前はお菓子でいいとして、問題はどうやって魔物にお金を渡すかだ。こりゃ、大問題だぞ」


商売相手を冒険者だけと考えるから難しいのであって、それ以外、それこそ魔物を相手に商売が出来ればある程度安定はするだろう。


問題はその魔物がお金という概念で動いていないこと。


そんな彼らからどうやって購入してもらうのか、これもまた要検討だなぁ。


「ダンジョン運営するだけなのに、随分とめんどくさいことするのね」


「そりゃその方が儲かるからな。やるからにはしっかり儲けたいし、お前だって美味い物食いたいだろ?」


「食べたい!」


「その気持ちと同じだ。とりあえずダンジョンの構造としては最初のエリアでふるいにかけて、それから店。その後は罠とかを程よく置きながら最後の部屋の前にお前がいたら・・・完璧だな」


現在のダンジョンは全五階層で形成されていて、最後の階層がオーブのある例の部屋。


あそこが俺の家兼倉庫になるので、そこだけは何としてでも守らなければならない。


となると、その一つ手前に待機させるのはリサ一択、もちろんそこにいたるまでの間に魔物や罠を設置するので第三階層と第四階層は冒険者にとって腕試しの場所となる。


ようはそこ目当てに冒険者を集めて魔素を回収、そこにいたるまでの間で商売をして懐も温かくするのが今の所ベストな配置。


今後魔素が増えればダンジョンそのものを拡張する事なども出来るらしいから、そうやって大きくすることでダンジョン目当ての冒険者が増え、近くの村も発展していくだろう。


村が町になれば更に人が増え、物が増え、冒険者が増え、そして俺達が潤うという完ぺきな流れだが、一つでもバランスが崩れればダンジョンが大変なことになってしまうので、やみくもに人を増やせばいいという物でもない。


何事もほどほどが一番だ。


そんなわけであぁでもないこうでもないと考えながら大まかなダンジョンレイアウトを作り、オーブを通じて指示をだせば一日もかからず変化するらしい。


すごいなダンジョンマスター。


昔、王都にいる時にいずれは自分の店を持ちたいと思ったこともあったが、まさかそれがこんな形で実現するとは思っていなかった。


「っと、とりあえずこんな感じか。今の所いじらなければならないのは店とこの部屋だけだが・・・魔素は足りるか?」


「残量が10%を切りますが可能です」


「10%を切るとどうなるんだ?」


「新しい魔物が生まれにくくなります」


「ぐぬぬ、じゃあこれとこれと、これを外せば?」


「残量12%、問題ありません」


オーブに手を置きながらダンジョンマスターの権限で当初予定していたものをどんどんと外していく。


本当はどれも残しておきたいけれど、優先するべきは店であって俺の居住空間じゃない。


「ねぇ、本当にそれでいいの?」


「仕方ないだろ、それしか方法が無いんだから」


「あんなに力説してたのに」


「それはそれ、これはこれ。よし、やってくれ」


オーブを強く握ると白い光を放ち、それが床を通じて壁へ、そしてダンジョン中へと広がっていくのがわかる。


まるで自分の体の中を広がっていくような感覚、後はこれで店が出来るんだろう。


その時だ、部屋の隅の方からドドドドという音が聞こえてきた。


そちらを向くと、床がせり上がり壁のようなものが出来たかとおもうとすぐに形を変えて棚のようなものがいくつも現れた。


これで物資の管理も完璧、店をするのならばここでも在庫を補完しなければならないので最終階層の半分近くを倉庫に変更してみた。


店とこれだけでかなりの魔素を使ってしまったようで、残りはあとわずか。


そんな魔素を使って最後に作り上げたのは、部屋の隅にちょこんと出来た小さな衝立と質素なベッドだった。


「・・・ちっさ」


「うるせぇ!これからもっと大きくするんだよ!」


今はこんなに小さくてもいずれはもっと大きくしてやる。


それこそ美女を二人でも三人でも侍らすことが出来るようなそんなやつをつくれるぐらい、今はそれを夢見てやっていくしかない。


泣く泣く消した台所や家具などを思い浮かべながら、大きなため息をつくのだった。


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