25.毎回来てくれないかなぁ
「これは・・・思ったよりもすごいな」
下から戻って来たカイネ達を介抱するという名目で色々と稼がせてもらった翌日、達成感を感じながらオーブを起動すると予想以上の成果が表示されていた。
冒険者が来て探索して帰るのを1とするとカイネ達が来たことで5の魔素を回収することが出来た。
たった一回のダンジョンアタックでこの成果、それだけ彼女達の実力が伴っていたってことなんだろうけど、正直これだけ稼げるのなら毎回来てくれないかなぁと思ってしまうぐらいだ。
「へぇ、そこそこ稼げたじゃない」
「だろ?これでお前と戦ってたらもう少し稼げたってことだよな?」
「それはそうかもしれないけど、あまり一方的だとそんなに回収できないのよね」
「なるほどなぁそう上手くはいかないわけか。なんにせよこれだけ稼げたってことは・・・もう少し店を広げられるってことだな」
魔素を消費することでダンジョン内に様々な物を作ることが出来る。
冒険者が来れば来るほど改良を加えることができるし、変わった部分を求めてまた新しい冒険者がやってくる。
これが本来のダンジョンの姿なわけだけど、認知度もなければ呼び込むためのネタもあまりないので現状は閑古鳥が鳴いている状態。
今回の調査をもって隣町でダンジョンの事が広がれば、もう少し訪れる人も増えるだろうけどそればかりに頼っていては未来がない。
もっとこう別の方法で客を呼ばなければダンジョンも発展しないし、なにより俺の懐が温かくならないわけで。
「ねぇ、本気でやるの?もう少し魔素を貯めて階層を増やすとかした方がいいんじゃない?」
「それも考えたんだが、何よりまずは客を呼ばないと話にならないからなぁ。お前だって新しいお菓子食べたいだろ?」
「お菓子がどうのっていうよりも、もっと別の方法があると思うんだけど」
「例えば?」
「んー、もっとアイテムを置いてみるとか。ダンジョンってそもそもそれ目当ての冒険者が多いのよね?それを探しに来たついでに買い物してもらうとか戦ってもらうとか、そういうほうがいいんじゃないの?」
リサが言うようにダンジョンの定番は宝さがし。
魔物と戦って素材を持ち帰るのが基本とすれば、宝探しは冒険者の夢が詰まっている。
当たりを引けば一攫千金、それを夢見て日夜大勢の冒険者がダンジョンに潜っているのが今の実情だ。
「もちろんそれが理想形だが、じゃあそのアイテム代はどこから捻出する?お前がお菓子を我慢して用意してくれるのか?」
「それは無理!」
「だよな。つまりそういう事をするためにも金がかかるってことだ。金儲けが先か、人を呼ぶのが先か。幸いダンジョンを発展させるのに詳しいノルマは決められてないわけだし、怒られない程度にゆっくり成長させればいい。その為にもまずは店を拡張して、目玉となる物を置く必要があるってわけだ」
「確かに言いたいことは分かるけど・・・。でもなんで工房兼住居なの?アンタがポーションを作るわけじゃないんでしょ?」
「素人の俺が作れるわけないだろうが。工房を作るのはここに職人を呼びたいからで、その人を通いで来させるわけにもいかないからそれなら住居を用意した方が話が早い。更にポーション作成だけでなく店番もしてもらえれば俺が買い出しに行っている間にも金を稼げる。今回販売して改めて思ったが、あのポーションは目玉商品になる、それだけのポテンシャルがあるのは間違いない」
そう断言できるのには訳があった。
先日のカイネ襲撃の後、疲労困憊の彼女たちを店で搾取・・・じゃなかった介護したんだが、その際にポーションを見せると明らかに反応が違った。
やはり普段からポーションを使っているからか色の違いにすぐ気づいたし、実際に使わせて効果を確認してもらったが通常のポーションでは治癒しなかった火晶石の火傷の跡が完全に治癒。
本人曰く、古傷はポーションでも直せないそうだけどこれは傷が出来てすぐかつ効果が高いからこそ起きる現象らしい。
ここぞとばかりに銀貨4枚という高値を吹っかけてみても喜んで支払ったあたり、これははそれなりに需要があるんじゃないだろうかと考えたわけだ。
「でも錬金術師にアテはあるの?」
「一応は。まぁ本人からどういう返事をもらえるかはまだわからないが、可能性はゼロじゃない」
「それなら先に聞いてからでいいじゃない。作ったものの来ませんでしたじゃ意味ないわよ」
「それはそうなんだが・・・作って後がなくなった方が真剣みも増すだろ?」
「・・・はぁ、普段まともなのにこういう時だけ変な方に吹っ切れるわよね、アンタって」
「だろ?」
「いや、褒めてないんだけど」
そんなこと言われなくてもわかっているが、正直な話あれだけのポーションは並みの錬金術師では作成できない。
王都でも魔素の豊富な薬草はいくらでも手に入るが、ここまで上質なポーションは見たことがない。
過去に何度も錬金術師ギルドに足を運んでいるし、それなりの実力者とも話をしたが彼らが作るものでさえ市販品と変わらなかった。
一度高い金を払って再供給品を依頼しても一割増し程度、にもかかわらず彼女は特に苦労することもなくあれだけの品質を作れてしまうんだ。
つまりそれだけ高い素質があるという事、ポーションを売り出せば間違いなくだれが作ったっていう話になるだろうから、どこかに引き抜かれるのは間違いないだろう。
そうならない為にも人気が出る前に職人を確保しておきたい。
じゃないと、もう二度と彼女のポーションを手に入れることが出来なくなるからだ。
「ちなみにポーションしか売らないの?」
「いや?せっかく錬金術師に来てもらうんならいろいろと作ってもらうさ。それこそ、化粧水とか」
「え!あれって作れるの!?」
「むしろどうやって作ってると思ってるんだよ。要はあれも薬の一種、適した素材同士を組み合わせて作っているんだ。材料はある程度わかってるし、その辺を研究してオリジナルを作り出せば・・・わかるよな」
「買う!」
「ってなわけだ。しかもこのダンジョンで手に入る素材はエリザベート様のおかげで高魔素高品質は確定済み、そんなので作ろうものなら国中の女性がこの店に来てもおかしくはない。まぁ、そんなことになったら買い占めだのなんだのでダンジョンなんてできなくなるから、別ルートで販売することになるだろうけど、なんにせよそういったことも含めて連れてきたいってわけだ」
錬金術師の仕事は主にポーションなどのアイテムの他に、一般薬や物によっては工業用品なんかも作成したりする。
素材同士を組み合わせて新しい素材を生み出すのが彼女たちの仕事、ポーション職人になる人の方が多いけれども、工業系に特化した錬金術師もそれなりにいるし、独自のアイテムを求めてダンジョンに潜る武闘派も存在する。
そんな彼らに必要なのは素晴らしい環境と素晴らしい素材、その両方を準備しておけば来てくれる可能性は格段に上がるだろう。
それに俺は彼女の真意も聞いている。
後はどうやって話を持っていくか、そこを考えないとなぁ。
「錬金術師が来るってことは、魔物向けの薬も作れるってことよね?」
「もちろんそれに適した素材や機材は必要になるが製法さえわかれば作製できると思ってる。あとは彼女のやる気次第だろう」
「なるほどね・・・」
「まだ来るって決まったわけじゃないぞ?」
「わ、わかってるわよ!」
急にソワソワし始めたリサを横目に、如何に彼女を引き抜くかを考える。
この店を繁盛させるには必要不可欠な存在、はてさてどうやって口説き落とすかなぁ。




