11.辺境にダンジョンがあるんだってよ
「そんじゃま留守番よろしく」
「ちゃんと見といてあげるからさっさと行きなさいよ、あ!でも、お土産忘れないでよね!」
「へいへい」
先日の釘棍棒以降前以上に魔物の客が増え、素材がそれなりに集まるようになってきた。
釘棍棒のアイツも無事にゴブリンの長の座に就けたようで、約束通り毎日薬草を運んでくるし多く拾った日は『おまけだ』と言って置いて行ってくれる。
おかげで店は薬草だらけ、流石にいつまでも保存出来るものではないので余剰分は早めに現金化しておいた方がいいだろう。
という事で今日はいつもの村・・・ではなく、もう少し離れた隣町まで行くことにした。
向かうのは今日で二度目、前回は日用品を買付けに行っただけなのでゆっくり見て回るのは今日が初めてという事になる。
オーブに手を乗せて地上にポータルを設置、大量の素材と一緒に移動すると待ってましたと言わんばかりに彼女が嘶きを上げた。
「お待たせ、今日は遠出するからよろしくな」
ポータルの横で待っていてくれたのは辺境に行く為に商店の経費で購入した馬と彼女が引く荷台。
この間エリザベート様が見つけてきてくれた際に何かしてくれたのか、外で待機させても魔物が寄ってくることは無く穏やかな日々を過ごしているようだ。
そんな彼女の首をポンポンと軽く叩き、テキパキと荷台に買い取った素材を積み込んでいく。
エリザベート様から魔力を頂いたとはいえ残念ながら体力や筋力が上がるわけではなかったようで少し動くだけで息が切れる。
うーむ、商店にいた時は誰かがやってくれていたので何とも思わなかったが、荷下ろしや荷揚げってこんなに大変なんだなぁ。
「よし、行くか!」
準備を済ませて馬車を走らせる。
今日も清々しいいい天気だが、もうすぐ雨季が来るのでそれまでに厩の準備をする必要があるだろう。
流石に彼女を野ざらしにするのは可哀そうだからな。
ポータルを使ってダンジョン内に移動することも考えたけど、外の方が気持ちがいいのかポータルに乗るのを拒まれてしまっている。
雨が降れば街道もぬかるみあまり速度も出せなくなる。
冒険者が来ないのももしかするとそれが原因かもしれないなぁ。
ダンジョンまでの道はそこまで整備されていないし、遠くから来るには近くの村から歩いてくるしか方法がない。
かといってここにダンジョンがあります!と整備するのもなんだか違う気もするし、難しい所だ。
「それじゃあ帰る時にまた声をかけてくれ」
そんなことをあれこれ考えているうちにあっという間に隣町に到着、入り口横の厩に彼女を預けて銀貨1枚を支払った。
町の外に繋いでおくことも出来るけれども、村と違って誰かが持って行かないとも限らないのでこうやって預かってもらうのが基本。
これをケチって残念なことになったやつを何人も知っているのでこれで彼女と荷馬車の安全は保たれるのなら安いもんだ。
「さて、まずは素材を売ってそれから薬草だな」
いつもの村と違って大勢の人が出入りしている。
まぁ王都とは比べ物にならないが人がいるという事は物が動くという事、商売をするにはピッタリの環境だ。
まず向かったのは町の中心部にあるとある建物、剣と盾が交差したエンブレムはどこに行っても同じだ。
「いらっしゃいませようこそ冒険者ギルドへ!今日は何をお探しですか?」
「素材の買取を頼みたい」
「買取ですね、でしたら奥のカウンターへお願いします」
冒険者ギルドの受付嬢はどこに行っても可愛いな、なんて思いながら案内されたカウンターへ向かうとそこにいたのはむさくるしいオッサンだった。
「オッサンが相手じゃ不満だって?」
「まだ何も言ってないが?」
「皆そういう顔するからな。で、実際はどうなんだ?」
「オッサンかぁ・・・」
「まったく正直なやつだな。ほら、さっさと出すもん出しやがれ」
「了解」
案内されたカウンターにいたのは禿げ頭のオッサン、受付嬢の可愛さからのギャップが半端ないんだが本人の自虐で意外にも嫌な気分にはならなかった。
言われるがままトレイに素材を載せていくのだが、見る見るうちにオッサンの表情が変わってきた。
「おいおいおい、何だこの量!」
「なんだって買い取ったやつだが?」
「買い取った?」
「辺境に行く途中の村の近くにダンジョンがあるんだが、そこに行く冒険者に依頼されて買い取ったんだ」
「そんな所にダンジョンが?ふむ、素材の種類からそこまで強い魔物は出てこなさそうだが・・・まぁいい、とりあえず全部出してくれ」
やはりダンジョンの存在をギルドが把握していなかったようだ。
なるほど、だから冒険者の数が少なかったんだな。
だがこれで場所について共有できたから今後は冒険者が増える事を期待してもいいかもしれない。
全部で4つのトレイを満載にして代わりに番号札を貰う。
量が量なので査定には時間がかかるらしい、それなら今のうちにもう一つの用事を済ませておくか。
一度冒険者ギルドを出て次に向かったのは町の大通りから少し外れた工房街と呼ばれる場所、武器や防具の他服飾や薬品など様々な職人が店を出している。
こちらも王都の工房数と比べるとかなり少ないが、それでも周辺の需要を満たすには十分な人数がいるようだ。
向かったのはそのうちの一軒、大きな窯のエンブレムが特徴的なそこからは薬品の臭いが漂っていた。
「あ!いらっしゃいませ~」
「薬草の買取を頼みたいんだが構わないか?」
「薬草ですね~、状態を見ますのでそこに出してください~」
出迎えてくれたのはなんとも間の抜けた話し方の錬金術師。
通常錬金術師ってのはもっとスラッとしていてそれでいて気難しい感じの奴が多いんだが、彼女はその正反対と言うか真逆の雰囲気を醸し出していた。
ぽっちゃりとした体を無理やりローブに収めているからかその上からでもわかるぐらいの巨乳。
流石にエリザベート様のそれには勝てないが、それに勝るとも劣らないのではないだろうか。
美人ではないけれど、話し方も穏やかで相談しやすい雰囲気がある。
言われるがまま薬草を出していったのだが、だんだんとその目が見開かれていった。
「ちょ、なんですかこれは~」
「何って薬草だが?」
「多すぎますよぉ、こんなにたくさん、一体どこにあったんですかぁ~?」
「辺境に向かう途中にあるダンジョンだ。それなりの数が集まるらしい」
「なるほど~、だからどれも魔素がたっぷりなんですね~」
束になって置かれた薬草を前に目を輝かせる錬金術師、エリザベート様の魔力を賜ったとはいえ多いとか少ないってのは俺にはさっぱりわからないが、喜んでいるようなのでまぁいいだろう。
「良い事なのか?」
「魔素が多い方が~効果の高いポーションが出来るんです~」
「なるほど、買取価格はどうだ?高くなるのか?」
「それは変わらないですけど~、これならポーションにした方が売れるんじゃないですか~?」
「ポーションにする?」
「手数料はいただきますけど~、ポーションにしてあげますよ~?効果の高いポーションはギルドで高く売れますし~損はないと思います~」
なるほど、そういうやり方もあるのか。
基本的に薬草の買取価格は銅貨15枚で固定、これは魔素が多くて状態が良くても命にかかわるものは価格を一定にしなければならないという御達しなので致し方ない。
販売価格は銅貨30なので儲けは倍、だがポーションになると価格は銀貨2枚とかなり高くなる。
更に効果が高い物はより高値で取引されるので、彼女が言うようにただ売るよりかは加工してもらうほうが実入りがいいかもしれない。
加工料はポーション一個当たり銅貨30枚、まぁまぁな値段だが薬草を五個売るより加工して売った方が何倍も儲かるわけだしやらない理由はないだろう。
本当はもっと値切りたいところだが、初見でもあるしここは向こうの機嫌を取る意味でもそのまま依頼するか。
加工賃を捻出するためにも半分を買い取り、半分を加工に回すことにした。
こちらも二時間程で加工は終わるらしいので、その間にリサに頼まれた新しいお菓子と魔物達が喜びそうなものを仕入れて、それから・・・
「ちょっと貴方!」
やることはまだまだ盛り沢山。
限られた時間の中でスケジュールを組み立てていたのだが、突然後ろから声を掛けられ振りむくと、そこには純白の鎧を身に着けた女騎士の姿があった。




