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ようこそダンジョン商店へ~辺境から始める最弱ダンジョンライフ~  作者: エルリア


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10.釘バット(棍棒)はお好きですか

突然やってきたのは喋るゴブリン。


背は子供ほどしかなく一見すると他のゴブリンと変わらない感じに見えるが、よく見ると筋肉の付き方が他に比べるとしっかりしている。


っていうか、喋ってる?


「いらっしゃい、一体何を探してるんだ?」


「武器だ」


「武器?」


「人間を相手に出来る武器が欲しい。だが普通の物はいらない、仲間からも認められるようなものをくれ」


最初は驚いてしまったが話が通じるのならばむしろ好都合、ダンジョンに店を出して初めてのまともなビジネスチャンスに思わずテンションが上がってしまう。


「あら、固有個体(ユニーク)なんて珍しい。普通はもっとダンジョンが成熟して・・・って、なるほどエリザベート様の魔素が濃すぎたのね」


「ユニーク?」


「この子みたいに普通とは違う個体の事よ。通常は魔素溜まりなんかの一時的に魔素が濃くなった部分なんかで生まれることが多いんだけど、今回はあの方の魔素が影響して産まれたんでしょうね。知性も高いからこんな風に話も出来るし、武器なんかも使いこなせるからそれなりの物を渡してあげたらドンドン冒険者と戦っていずれは進化できるかもしれないわね」


「進化?」


「はぁ、ほんっとうに何も知らないのねアンタって」


「悪かったな何も知らなくて・・・っと、武器が欲しいって話だったな。ちょっと待ってろ」


彼がまだか?みたいな顔をしていたのでとりあえずリサに呆れられながら裏の倉庫へ移動する。


ゴブリンが何を使うかわからないのでとりあえず適当な奴を見繕っていこう、店に戻り順番にカウンターの前に並べていく。


「これが鉄の剣でこっちが鉄のナイフ、普段使ってるのは錆錆の奴だろ?これなら切れ味もいいし、他の仲間からも認められるんじゃないか?」


「うーむ・・・」


「なんだか違うみたいよ?」


「じゃあこれはどうだ?隕鉄鋼をそのまま使った石斧、黒曜石を括り付けた石槍もあるぞ」


「確かに最初とは違うが、高いのだろう?」


「まぁ物は物だけにそれなりの値段はするが・・・っていうか、いくら出せるんだ?」


そういえば彼がここに来るのは初めてのはず、何度かここにきているゴブリン達ならそれなりに蓄えているけれども、それでもせいぜい銀貨1枚ぐらいなものだ。


鉄の剣ですら銀貨5枚はするし、隕鉄鋼にもなれば塊とはいえ最低でも銀貨10枚は欲しい所だがそれに見合う物を彼は出せるのだろうか。


「いくら・・・というのはよく分からないが、仲間に聞いて色々と持ってきた」


「ふむ、とりあえず見せてもらおうか」


「わ、けっこう沢山ある!」


「仲間から聞いて来た、お前はこういうのが欲しいんだろう?」


カウンターの上にぶちまけられたのはこのダンジョンで手に入る様々な素材。


薬草、毒消しの実、麻痺消し草などの消耗品の他、屑魔石や鉄鉱石などの多少お金になるようなものもある。


後は魔物の素材、スライムの核やコボレートのナイフなどは同類を倒して手に入れた物か、はたまた冒険者が倒して落とした奴か。


なんにせよ金になる物には変わりはない、一般的な相場に基づいて算出してみるとしよう。


「結論から言うと何も買えないな」


「なんだって!」


「たくさん持ってきてもらって悪いんだが、どれも価格はたかが知れてる。薬草や鉄鉱石はそれなりの値段が付くがそれ以外は銅貨数枚程度。これじゃいくら数があっても鉄の剣も買えないぞ」


「そんな、せっかくここまで集めたのが無駄だというのか」


「無駄じゃないが、アンタが望んでいるような仲間に認められるものってのは難しいだろう。まぁ何をもって認められるのかって部分は分からないが、ここにある物は残念ながら買えそうにない」


たくさん出してもらって申し訳ないがどう高く見繕っても銀貨3枚になるかならないかってところだろう。


これじゃ鉄装備なんて夢のまた夢、こっちも商売なだけにそこを譲るつもりは更々ない。


「確かに珍しい物なかったもんねぇ、どうしても欲しいならブラッドベアぐらい狩ってきなさいよ」


「いや、どう考えても無理だろ。そんなのが出来るのはお前ぐらいだって」


「ぐぬぬ、これでも足りないのか。これでは仲間にどう言い訳をすれば・・・」


「急ぎなのか?」


「これから我々の長を決める戦いが始まる。それまでに何としてでも武器を手に戻らなければならないのだ」


「なるほどね、いくらユニークに生まれても所詮はゴブリン生身じゃ何にもできないんだから仕方ないわよ」


戦うすべを持たない俺からすればゴブリンですら恐怖の対象だが、確かに向こうが武器を持っているのにこちらが生身じゃいくらユニークとはいえ厳しい戦いになるだろう。


予算は銀貨2枚、それで出来る何かを考えてみる。


ぶっちゃけ鉄の剣を安く譲ってもよかったんだが、それだと俺が儲からない。


向こうは一世一代の大勝負に出ようとしているんだ、そこにつけ込むのなら今しかないだろう。


「一つだけ手がないわけじゃない」


「本当か!」


「これから用意する装備は、見た目はまぁちょっとカッコ悪いかもしれないが威力としては申し分ないはずだ。ただし、それを使って勝利した暁には毎日薬草を納品してもらうぞ。期間の定めはない、長として仲間を使えばそれぐらいすぐに集まるだろうが・・・どうする?」


「え、薬草一個ってそれっぽっちでいいの?」


ちなみに薬草の買取価格は銅貨15枚、それをここでは倍の銅貨30枚で販売している。


リサの言うように高々銅貨15枚程度だがそれが毎日になればどうだろうか、10日も経てば銀貨1.5枚、100日になれば銀貨15枚もの価格になる。


期間の定めがないという事はそれが一生続くと考えてもいいだろう。


仮に1000日続けば薬草だけで金貨1.5枚もの収入になるという事だ。


何事も小さなことからコツコツと、金貨1.5枚と言えば王都のちょっと高級な宿に100日は泊まれるぐらいの額、リサのあの星のお菓子で換算すれば山のように買えてしまう。


それを本人に伝えると同じことをしそうなのであえて何も言わないけどな。


「確かに仲間を使えば集めるのは容易だが・・・本当にできるのか?」


「信じるか信じないかは自分で決めろ。俺は店主として然るべき装備を用意する、そっちはそれを使って目的を達成しその恩に報いてくれればいい」


「・・・わかった、その条件を飲もう」


「よし、直ぐに準備するからちょっと待ってろ。リサ!手を貸してくれ!」


「なんだかよくわからないけど任せて!」


交渉成立。


ただのゴブリン相手ならここまでしないけれども、ユニークである彼ならば話は別だ。


リサの話じゃいずれは進化してより強くなる可能性がある、という事はこのダンジョンを守る戦力になりうる存在という事だ。


ここで彼に恩を売れば今後もいい取引が出来るだろうし、先ほどのような条件で長期的な儲けも確保できる。


だが、それならばとここで鉄の剣を渡すのは商売としてはちょっと違う。


あくまでも用意されたこの予算内で出来る最高の物を渡すのが、本当にできる商売人と言うやつだ。


一度倉庫に転移して必要な物を回収、リサの手を借りながらとっておきの物を作り上げた。


「待たせたな、これがそのとっておきだ」


「こ、これは!」


「釘棍棒とでも言えば良いか?ただ殴るよりも明らかに威力が増すし、普段から使っているから戦いやすいだろう。下手に殺すよりもケガをさせたほうがこっちも色々と都合がいいからな。是非これを使って勝利し、是非仲間に広めてくれ」


用意したのはただの棍棒・・・ではなく、それに町で買い付けてきた無数のくぎが打ち込まれている。


これにより飛び出た部分が皮膚に食い込み、更には切り裂くことで出血させることも可能。


ただの打撃武器では終わらない、殺傷能力を増したとっておきだ。


因みに原価は銀貨1枚、利益率50%と考えればまぁまぁいい感じじゃないだろうか。


これまでに何度かゴブリンと商売をさせてもらったが、案外彼らには鉄の剣とかそういう物よりもこういう一目でわかる凄いやつ!っていうほうが好まれるはず。


はてさて、彼の反応は・・・。


「この武骨なフォルム!素晴らしい!これこそが俺の求めていたものだ!」


「えぇ!こんなのがいいの!?」


「この分厚いこん棒に刺さった無数のとげとげ!素晴らしい!これならば仲間も気に入るはずだ!」


「そりゃ何よりだ」


「ありがとう!ここにきて本当によかった!」


「お礼は戦いに勝ってから聞かせてくれ、これからの活躍に期待しているぞ」


「もちろんだとも!待ってろ皆のもの俺はゴブリン王になる男だ!」


うーむ、まさかこんなに気に入られるとは思わなかった。


釘バットならぬ釘棍棒、これがゴブリンのスタンダードになるのは・・・まだもう少し先の話。

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