第4話 これが☆キッチンカー!
馬車がどこにもないけど移動はどうするんだろう、
そんな疑問に答えたメイドのナオミさんが亜空間?
から出したのは巨大な『ドーナツキッチンカー』とかいう乗り物だ。
(太い車輪があるから、そうだよね?)
それにしても、
まるで高級装備のようなこの装甲、
素材は何で出来ているのだろう、鉄……なのか?!
「派手な外見ですね」
「そもそも移動式のお店ですから」
「それで、引く馬は」「必要ありません」
正面から見ると透明な窓、
船の舵みたいなのがついているのが馬車で言う引手の席か、
その隣の席にドアを開けて乗り込むアンお嬢様、座ると何か肩から腰に斜めにかける布、いやベルトか、を装着した。
「ジャック様、ベティ様は後ろの席へ」
さぞかし豪華な車内だろうと思って見ると背面にドアがあり開いた、
その中は……えっ、お店?! うん、これ屋台だ、つまりは移動式、
側面の幕を上げると外が見える、透明な窓ごしに……商売の時はこれも開くのだろう。
「ええっと、椅子ってこれかな?」
「はい、壁側に上がっているので降ろしていただいて」
「畳んであるんだ、あっ、簡単に下がるね」「この椅子ぅ、弾みますわぁ~」
ほんとだ、弾力がある。
「クッション性がありますので揺れに耐えられます、
それより安全のためシートベルトをお締め下さいませ」
「あっ、さっきアンさんがやってた」「止め方はわかりますね?」「はぁ~い、こうですかぁ~」
うん、伸ばして差し込む感じだ、
アンお嬢様のお手本を見ておいて良かった、
そんなに大して難しい事じゃなさそうだけれども!
(にしても、目の前に透明なケース、ここにあの食べ物を入れて売るのか)
商売にしたら絶対売れるけど、
あれってどこでどう仕入れているのだろう、
料理を作るであろう場所は、凄く狭いがあるにはある。
「ではグラナスの街へ向けて出発いたします」
「それは良いのですが、どうやって動かすんですか」
「こちらの世界に合せてカスタマイズした、魔石自動車ですので」
魔石で動くのか、って、
えっ、こっちの世界???
「なんだかぁ、わくわくしますわぁ」
「えっベティちゃん、こんなので?」
「外の世界ですからぁ~」「あっそうか、そういう意味ね」
乗り物がじゃなく、
森の村から出ての冒険に心躍らされているのか、
僕は辺境伯家を放り出されて、いったいどうなるのかと思ったが。
(あのメイドには、色々と聞きたい事だらけだ)
とか思っていると、
シートベルトとかいうのを装着し、
舵を手にしたナオミさん、そして静かに動き始める。
「あっ、思ったより揺れない」
「ここから王都までの道は、かなり整備されていますから」
「いやそういう話じゃなく、すいすい魔法みたいに進んでいる!」
つまりこれは、
巨大な魔道具ってことか。
「喉が渇いたらおっしゃって下さい、何か出しますので」
「あっはい、それなんですが、いったいどこから出しているんですか?」
「お店ですね」「どこの」「まあ違う世界とだけ言っておきます」「はあ」
ここでアンお嬢様が振り返ってこちらを見る。
「ナオミは伝説の『召喚士』ですわ」
「えっ、記録にしか残されていないという、サモナー?!」
「姫に、お嬢様には何度も説明しましたが、ややこしい、難しい、面倒くさいので、もうそういうことにしております」
真面目そうな眼鏡熟女メイドから、
投げた言葉が出ちゃったよ、おそらくよっぽど複雑な説明になるのだろう。
「じゃあ、あの『影の軍団』も召喚して」
「それはそうですね、あれは異世界から招いていますから」
「ドーナツとか、あの食べ物も」「はい、対価に魔石は送っていますが」
つまり異世界を相手に商売してるのかな。
「あっ、じゃあさっき回収した魔石も」
「店長に送ります、今はアイテムボックスに仕舞っていますが」
「あれって伝説の、亜空間魔法だよね?」「はい、収納魔法ですが」
つまりはあれだ、
不思議なあの状況は、
全てこのメイドによる召喚魔法のおかげってことか。
(いやほんと、凄かった)
わけもわからず敵が倒されて行く、
あの軽快な音楽と共に……テーブルを仕舞うと音が消えたが、
あれはどこから流れていたんだろう、ナオミさんは何かごそごそとやっていたが。
(聞けばいいのか)
グラナスの街まで時間かかるし、
ってこの乗り物速いな、ドラゴンにでも乗ってるみたいだ、
いやこれ本当に『実は空を飛べるんですよ』と言われても、おかしくは無い。
「ええっと、もうちょっと色々、詳しく聞きたいんだけど、あのテーブルは」
「すみません、そろそろ運転に集中したいので、お嬢様と親睦を深めていただけますか」
「あっ、わかりました、後で教えて下さいね」「順番で」「じゃあアンさん」「はい、改めて次は私から」
馬の足音も無く、静かな室内だなあ、
窓の景色を見ながら、改めて婚約者とお話しよう、
軽くは自己紹介しあったけど、そのときはまだベティちゃん居なかったし。
(あっ、すれ違ったお婆さんが、びっくりしてら)
一瞬だったけど凄い顔してたな、
そんなことよりも、さて、お話、お話っと。




