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ゆるふわ☆ぱ~てぃ~! どう見ても冒険者に見えないお嬢様が無双する!!  作者: 風祭 憲悟@元放送作家


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第3話 自己紹介☆まずは聖女ベティから!

 待ち合わせ場所の五差路、

 その横で呑気にお茶会をしていた婚約者である公爵令嬢ジルアン、

 彼女に言われるがままテーブルにつくと、もうひとりの婚約者である聖女ベティが魔物に追われてやってきた。


(そしてそのまま、お茶会に合流)


 いや大丈夫か?

 そう思ったら白く大きなテーブルの周囲に、音楽と共に、

 真っ黒な『影の兵隊』が地面からにょっきりと出現、魔物を倒してしまった。


(いったいこれは、何なんだ……)


 一安心、と思いきや、

 今度はやっかいな『シャドウ』系と呼ばれる、

 影型タイプの魔物が聖女を追ってきた、しかも大量に。


(すると『主催席チェンジ』で聖女様が立派な黄金の椅子に座った)


 その直後、テーブル周囲の兵士が黒から白に交代、

 さながら『光の兵隊』がシャドウ系をばったばったと倒す中、

 その主催席に座った聖女様が司会進行ということで、改めて皆の前で自己紹介が始まる。


「ではまずはぁ、わたくしからぁ、でも本当に、安全なのでしょうかぁ~」

「ですね~、これが私が座ったままだったとしても~、防御だけなら完璧でしたが~」

「えっ、じゃあ攻撃できてる、倒せているのは」「ベティ様のおかげですね~」「嬉しいですぅ~~!!」


 その仕組みとか色々気になるけど、

 今は婚約者同士の顔合わせだ、何より、

 僕だってさっきの、最初の姫(元姫?)とのやりとりくらいしか情報が無い。


(メイドはメイドで、おすまし顔で新たなお菓子を取り出した)


 今度は穴が無い。


「カスタードクリームです」

「うお、あまぁい! ほんとにさっきより甘い!!」

「んぐんぐ、素敵ですわぁ!」「ではベティ様ぁ~」「は、はいぃ」


 急いで平らげて、

 紅茶を飲みきってから自己紹介を始める。


「はじめましてぇ、『森を清める聖なる村』からやってきましたぁ、ベティと申しますぅ」

「あそこってそんな呼び名なんだ!」「外部の方ぁ、辺境伯家からは『封印村』と呼ばれていますわぁ」

「うん、それなら僕にも通じる、で、そこの聖女様がなぜ」「辺境伯家に嫁ぐためですぅ」「僕に?」「みたいですぅ」


 みたいって!!


「ベティ様~、どう説明を受けていらっしゃったのですか~?」

「はいぃ、ウチの聖女はぁ、代々皆で協力して森の魔物ぉ、特に最も危険な『シャドウ』を防ぎ続けていたのですがぁ」

「さっきのやつ?」「はいぃ、ただ私は魔力があってもぉ、魔法を使えませんのでしてぇ」「えええ」「結局ぅ、十五歳になってもダメでぇ」


 たまに居るらしい、

 せっかく魔力持ちなのに魔法を使えない、

 憶えられない、唱える事の出来ない僧侶や魔法使いが。


「それでベティ様は~、嫁入りに~」

「はいぃ、色々と援助していただいている辺境伯様の所へぇ」

「でもなんで僕の所へ」「冒険者になればぁ、追い詰められて魔法を使えるようになるかもとぉ~」


 荒っぽいなあ、

 あっ、ひょっとして魔物がついてきたのって!


「あの魔物って、じゃあベティちゃんが、あっ、ベティさん、がいい?」

「ちゃんで良いですよぉ、婚約者ですからお好きにお呼びくださぁ~いっ!」

「それで、こっち来るときに魔物に見つかって、ついてきちゃったんだ」「本当なら自力で倒すかぁ、急いで逃げて捲くかなのですがぁ~」


 村で封印しているとはいえ、

 人の出入りの時にほころびが出るのだろう、

 魔法が使えないベティちゃんじゃ処理は無理だったらしい。


(ほんっと、アンお嬢様が居なかったら、いやこのテーブルが無かったら? 全滅もありえたぞ)


 迷惑な話だ。

 ってメイドさんが今度は変な形のお菓子を出してきた、

 いびつな形、雫みたいな形の輪っか、ちょっとねじれている。


「チュロスドーナツ、ハニー味です」

「いただきます……んぐ、これも美味しい」

「幸せになる味がしますわぁ」「それでベティ様~、本当にジャック様でよろしくて~?」「外の世界に出られるならぁ、何でも良いですぅ~」


 うん、ウチの辺境伯家に来る聖者一族はお年寄りばっかりだったから、

 きっと若いのは閉じ込められているんだろうなあっていうのは思ってはいた、

 だから無能扱いで追い出されての嫁入りでも、自由を手に入れた気分で嬉しいのだろう。


「ええっと、ジャックです、もう婿入りって聞いてたので単なるジャックです」

「私は嫁に出すぅ、嫁に出されたとお聞きしましたがぁ」「まあそれは、アン嬢も」

「です~~、みんな嫁に出され婿に出され~、ようはみんなみ~んな」「皆までは言わないでおこうよ」


 つまりは厄介払いで、

 勝手に冒険者にでもなれと、

 そんな感じがする、まあそのあたりアンお嬢様の話も後で聞こう。


「皆様、ここで味を変えてジャスミンティをどうぞ」


 ナオミさんが匂いの変わったお茶を注いでくれる、

 あれっ、なんだか清涼感を感じる独特な味だなこれ、

 甘さが増してきた所でこの味は一旦、綺麗に舌を流してくれるようで助かる。


(女性陣も満足そうだ)


 それにしても、

 ほんっと、この空中から物を出すメイド、

 いったい何者なんだよ……そっちの方も気になる。


(そして周囲の『シャドウ』が、完全に退治された)


 ただ、遠くで二人の人影が見える、

 よく見るとトカゲの魔物に乗った……聖者服かな、

 ということはだ、僕はあえてわかりやすく背伸びしてその二人を見た後、ベティちゃんを見る、ベティちゃんもわかっているようだ。


「あれはぁ、もしもの時にぃ、本当に死にそうな時にだけ助けてくれる方々でぇ~」

「そこはちゃんとケアを、ってひょっとして魔物やシャドウをけしかけたのって!!」

「まあぁ、あまりそこは考えないようにぃ、あってもあくまでも試練ということでぇ~」「いいのか」「はいぃ~」


 確かに本当にアレが、魔物やシャドウの大群が辺境伯領に流れ込んで来たら大問題だもんな、

 最悪、僕らが死んでもその後に処理する、まで考えていたのかも? 

 いやさすがにそうなる前に助けてくれるよね? まだ監視しているな。


「ベティ様~、もう安全なようなので~、そろそろ出発致しましょう~」

「ええっとぉ~、お二人の自己紹介はぁ~」「それは~、次のお茶会で~」

「移動中とかでは駄目なの?」「ジャック様ぁ~、旅路は長いのでぇ~、ゆ~っくり、のんびり行きましょ~~」


 いやほんと、

 この二人とも、

 見た目も喋りも、ゆるゆるふわふわだ。


「ではテーブルを片付けますね」


 何も無い空間に仕舞い始めたメイドのナオミさん、

 下に隠れていたトカゲの魔物がささささーーーっと逃げて行って、

 遠くの聖者二人と合流し、そのまま一緒に去って行ってしまった……。


「ベティちゃん、あれ、いいの?」

「はいぃ、あくまで合流するまでの貸し出しですからぁ」

「そうなんだ、って魔物とか魔石とかいっぱい落ちているね」


 テーブルのあった周辺に死屍累々《ししるいるい》である。


「後でナオミが回収しますよ~」

「たしか『シャドウ』の落とす闇魔石って貴重だった気がする」

「立派な路銀になりますね、では早速」「あっ、魔物の屍骸しがいまで仕舞えちゃうんだ」


 メイドさんが忙しく回収している、

 てきぱきと……手伝いましょうか、とか言えない素早さと手際だ、

 いやほんと凄いな、とまあ五差路周辺がすっかり綺麗になった所で他の馬車が通り過ぎて行った。


(あっ、そういえば僕らの移動って……?!)


 あたりを見回しても、

 僕ら用の馬車とか見当たらない、

 そうなるとアンお嬢様はどうやって来たんだろう、僕みたいに放置されて帰って行ったとか?!


「ではジャック様~、まずはどちらを目指しましょう~」

「ええっと、冒険者になるだけなら近くの大きな街で良いんだけれども」

「あのぉ~、私っ、身分証を作って貰うなら辺境伯領内でって長老様からぁ~!」


 そうか、僕は辺境伯家の、

 アンお嬢様は公爵家の身分証があるからいいが、

 田舎と言うか隔離された村から来た聖女様は正式なそれが、まだ無いのか。


「作って貰うって、話は通してあるの?」

「長老の手紙をっ、辺境伯領内の街ならこれでってぇ~」

「じゃあ大きな街ってなると、領境の『グラナス』しかないな」


 面倒臭いから、

 冒険者登録もそこでやろうっと、

 まだギリ僕の顔が通用するから何とかスムーズに行くだろう。


「では~、北に向かって行きましょ~」

「でもアンさん、その、乗り物は、徒歩はさすがに」

「ナオミ~」「はい、では出させていただきますのでお下がり下さい」


 こうして眼鏡熟女メイドのナオミさんが両手を前に出すと、

 そこに突如として出現した、その大きな物体はっっ……!!


「な、な、なんだこれええええ?!」

「はい、こちらが移動手段となる『ドーナツキッチンカー』です」


 なんだか知らないが、

 カラフルな乗り物が出て来ちゃった!!

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