第30話 ゆるふわ☆ぱ~てぃ~!
「まもなく領境ですね」
「早っ! やっぱり速いねえ」
「これでも安全運転ですよ」「お願いします」
修理代が馬鹿にならないのは、
もう十分にわかったからね、僕も気をつけないと。
「それで~、ジャック様~、次の領主様に~、ご挨拶は~」
「アンさんはしてきたの?」「いえ~、ジャック様にお会いするのが~、最優先で~」
「そっかあ、ルイスト伯爵家は交流あるけど、それは父や兄の話だったからなあ、うーん」
話も通してあるかどうか。
「どのようなぁ、場所なのでしょうかぁ~」
「ベティちゃんは行った事、無いんだよねルイスト伯爵領」
「それどころかぁ、村の外へ出たのもぉ、初めてですぅ~~」
いやほんと改めてだけど、
会話しているだけでなんかこう、
ゆるゆるで、ふわふわだねっていう。
「良い方で言うと、のんびりとしてて結構なんでもある場所、
ウチみたいな未開の地も少ない、ダンジョンはまあ、そこそこ、
悪い方で言うとあっちこっちに喧嘩売ってる、でもうちは上手くやってる方」
とはいえ、それも父や兄上の話だ。
まあ、護衛が必要な程で無いにしろ用心はしないと。
「通行税は4倍取られました」
「えっナオミさん、ウチとの境でそれはなくなったはず、あっもっと北か」
「はい、本来は馬の頭数でかかるようですが、キッチンカーはタイヤの数で取られました」
がめついなあ、
特に何か積んでいた訳でもないのに。
「じゃあ今度は、一旦アイテムボックスに仕舞って徒歩で」
「そうですね、あと乗合馬車でしたら運営側が払うので良いかと」
「それでもお金がかかっちゃう、とはいえ今の僕らは」「路銀には困っていませんね」
まあ、そういう冒険者気分を楽しむのもアリかな。
「改めて確認を、アンさん、冒険者になるの平気?」
「ジャック様が~、なられるのですから~、当然です~」
「いや無理にやらなくても、家で待ってるとか」「ですと~、ナオミも私と一緒に~」
あっそうか、
ナオミさんだけ借りるとか駄目なのか、
あくまで個人メイドって言ってたもんな。
(僕だって、あの召喚が無ければ食っていけないだろう)
ということで次は。
「ベティちゃん、冒険者としてやっていくの平気?」
「ですねぇ、ようやく私のぉ、聖女としての力をぉ、発揮できますぅ~」
「うん、魔法が使えないけど魔力は凄いって状況だと、使えるのはあの状況しか無いからね」
このあたり、
冒険者として育って行けば、
魔法を唱えられるようになるのかな?
「ではナオミさん」
「私は姫に、いえ、お嬢様に従うだけです」
「それがナオミさんの意思なんだ」「はい、全てはアンお嬢様のために」
冒険者パーティー、
ゆるゆる☆ふわふわとしては、
どうやら大丈夫みたいだ、あとは……
「別の話を改めて、アンさん、僕と婚約、結婚して本当に良いの?」
「ここまで~、嫌な気持ちはひとつもありませんね~、むしろ~、嬉しいです~」
「いやそんな大した事してないけど」「わたくしを~、受け入れてくださいましたから~」
あっそうか、
こういう『ゆるふわ』っていうだけで、
嫌がりそうな男も居ないこともない、全然大丈夫だけど僕は。
「ベティちゃんは、僕との婚約、結婚については」
「もぅ、貢物としてぇ、出されてしまいましたからぁ~」
「いや、嫌なら別に」「嫌ではないですぅ、むしろ外の世界がぁ~、楽しみですぅ~」
じゃあこれから、
彼女が、ベティちゃんが嫌な思いをしないように、
僕が頑張らないとな、とはいえ召喚頼みだけれども!
「その、ベティちゃんが気分良く僕と一緒に居られるように、頑張るよ」
「わたくしもぉ、出来うる限りのことをしてぇ、お支え致しますのでぇ~」
「ありがとう、困った事があったら何でも言ってね」「ではぁ、一緒に眠りたいですぅ~」「あはは」
と笑ってごまかしておこう。
「あら~、では私も~」「アンさん……」
「そうですね、魔石が溜まれば『キャンピングカー』も可能です」
「ナオミさん、何それ」「宿が車になったようなものです、莫大な魔石が必要となりますが」
これまた凄い物が控えているんだな。
「それはそうとナオミさんは」
「私もお支え致します、お嬢様のために」
「うん、今のところはナオミさん頼みだけど」「何でもしますよ」
相変わらずお店の格好のままだ、
真面目な黒髪眼鏡熟女、異世界人。
「僕もナオミさんが困ったら手伝うから、言って欲しい」
「むしろ私がジャック様に何でも、必要でしたら処理もさせて頂きます」
「いや何の処理なのー?!」「様々な意味で取って頂いて、構いませんよ」
魔物の解体とかかな?
冒険者ギルドに屍骸ごと渡して、
投げていたような気もするんだけれども。
(シルバーイーグルの皆さんが、魔石だけくり抜いてくれてたっけ)
そのあたり、
自力で出来るようにならないと、特に僕。
「これからの王都までの間、
冒険者としての訓練というか、
生きていくために色々と頑張って行こう」
それに答えてくれる後ろのふたり。
「はい~、ゆる~く、まったり~、まいりましょ~」
「無理はならさずぅ、やれる範囲でぇ、ゆっくりゆっくりとぉ~」
「ふわふわした感じが、とても冒険者に見えないね、でも、もうそこが良いかも」
こんな感じのゆるふわ☆ぱ~てぃ~!
果たしてどんな冒険が待っているのやら、
どんなことがあっても、ゆるふわで解決して行っちゃうんだろうなあ。
(まあいいや、これが僕たちの、スタイルだ!)
こうしてキッチンカーは、
我が辺境伯領から王都に向けて、
次なるルイスト伯爵領へと入って行ったのだった。
「あっ、熊が飛び出して」「避けてー!!」
「失礼、伯爵領の領兵でした」「ナオミさん……」
「ふふふふふ~~」「ふふふのふふぅですぅ~~~」
第二章へ続く。




