第10話 街に到着☆宿は自力で!
「話は聞いているよ、独立するそうだね」
「はい町長さん、いえ、モッパー男爵、ですので貴族ぶるのも、この街までで」
「手続きとか必要なら全て手伝うようにとも手紙が来ていてね、何か困った事はあるかい?」
僕の父より少し若い感じのグラナス町長、
やはり辺境伯領の玄関口を任されているだけあり、
あと男爵、ぎりぎり貴族なこともあって、少し偉い感じで接してくる。
(まあ、こっちは間もなくただの人だからね)
何でもかあ。
「ええっとまず、冒険者登録をしたいのですが、
僕や公爵令嬢のジルアンさんとそのメイドは良いとしても、
封印の森出身であるベティさんの身分証明が、族長の手紙しかありません」
僕がベティさんから受け取って、
男爵に渡す……流し読みして返された。
「わかった、それは冒険者ギルドにも持って行くと良い、
ただ反応は保障しない、今は貴族の道楽に付き合っている場合じゃないらしい」
「何があったんですか」「最近、新たなダンジョンが発見されたが冒険者が刺激し過ぎてな、敵が溢れてきた」
スタンピードというやつか。
「それの対処中ですか」
「まだそこまで酷くは無いが、有能な冒険者を集めている最中らしい、
私も資金提供させられた、君の持参金も少しは握らせれば登録時の対応はマシになるだろう」
そういうのをお金で買うのはなあ、
だいいち、僕の持参金ってそんなに無いうえ、
冒険者としての装備用に取ってある、あくまで僕の分だけど。
「あの~、ジャック様の婚約者です~」
「ジルアンだったか、とても冒険者になるようには見えないが」
「マシになるとは~、どういった意味でしょうか~、手続きは協力してくれるのでは~」
ふんっと鼻で笑う男爵。
「忙しいから帰れ、とはならないようにしよう、
ただ、金を包めばそこそこ愛想良くして貰えるはずだ」
「そうですか~、ちなみに今夜の宿は~」「我が街最高級の部屋を予約しておいてあげよう」
……予約?!
「それって宿泊代は」
「そこまでは面倒見られない、もう辺境伯家の者では無くなるんだろう?
もちろんこの街を出るまでは、だから予約だけは」「わかりました~、なんとかします~」
えっ、アンお嬢様なんとかするんだ!!
「ただ、無理でもさすがに野宿はさせられないから、
本当に困ったらウチの馬屋が二頭分、空いている」
さすがにそんときゃ安宿探すよ。
「わかりました、お心遣い感謝します」
「あと商業ギルドで、その聖女様の口座が必要なら保証人にもなろう」
「ええっと、まあそれはおいおい」「おそらく、辺境伯領内でしか作れないぞ」
それは今後のためにもやっておくか、
ほんっと、手続き系だけはしっかりフォローしてくれるようだ、
そういうお達しみたいだけどね、だから一応はお礼を渡さないと……
「ナオミさん」「はっ」
「その箱はなんだね、3つも」
「皆さんで召し上がってください、ドーナツ詰め合わせ12個パック×3です」
辺境伯家のメイドにナオミさんが渡す、
つまりメイドからメイドへ、開けて男爵が確認。
「ほう、美味しそうだね」「それはもう」
「妻や娘が喜びそうだ、手続きで何かあればウチの名前を出すと良い」
「ありがとうございます」「出発の時は報告しなくても良いよ、それじゃあ」
こうして無事に?
面通しが終わって男爵邸から出る、
さあ、自力で宿代を稼がなきゃな。
(あと、キッチンカーの修理代も!)
ということで歩いて冒険者ギルドへ、
あっ、大型バイク&サイドカーは街の前で仕舞いました、
今後も辺境伯領を出たら、キッチンカーは街に入る前に仕舞う予定、面倒くさいことになるからね。
「登録ですか~」「そうだね、チップは銀貨1枚、いや4枚か、でいいよね」
「それは贅沢ですね~」「まだギリ辺境伯家の人間だから、って痛いは痛いけれど」
「あのぉ、もしチップを払わないとぉ」「おそらく塩対応、説明とか無しに登録しました、で終わるかも」
それはそれで全然平気だが、
さっきの流れから行けば事実上、
男爵が僕に払え、金を落としてこいって命令したようなものだからね。
(あーほんと、貴族って面倒くさい)
むしろ銀貨四枚で『えっ、これだけ?!』とかもありうる、
なんて考えていたら冒険者ギルドに到着したのだが雰囲気が怖い、
スタンピード対策で猛者が集められているからか、うん、場違いだ。
「ダンジョン対策の冒険者は、こちらにお並びくださーい」
魔物が溢れ出る、
それはすなわち魔石とか魔物の素材を稼ぐチャンスなので、
実力のある、もしくは実力をつけたい冒険者にとっては願っても無いだろう。
(それに貴族の依頼だからね)
クエストクリアっていうだけで報奨金もあるし、
なにより冒険者ギルドからのポイントだったっけ、
すなわち評価も上がる、ランクを上げたい一押しには最適だ。
「ええっと、新規の依頼をされる方ですよね?」
受付嬢がわざわざ来てくれた、
ただ、やっぱりというか冒険者志望には見えないみたいだ、
僕も一応は小さい剣を腰に付けてはいるのだが、まあこれは護身用。
「すみません、冒険者になるための登録を」
「まあ、ひょっとして上位のパーティーを連れて来ていただいたとか」
「いえいえ、あくまでも僕たちが」「はあ」「これから冒険者になるので」
奥から更にベテランな受付嬢がやってきた!
「話は伺っております、さあこちらへ」「あっはい」
あっ、奥へ誘導された、
個室みたいだ、うーんVIP待遇、
と思ったが狭い部屋、なんだか押し込まれたっぽい。
(これ、個室受付というより尋問の部屋みたいだ)
悪さした冒険者を取り調べるみたいな。
さてさて、さっさと受付を済ませてから、
冒険者としての第一歩を、踏み出さないとねっ!!




