お金を稼ごう(1)
エルーシャ、グラナ、アイオーンに侵攻していた魔族軍は、俺の介入により撃退もとい殲滅され、魔族側には甚大な被害が出た。
俺がノータッチであったルクスブルグにも侵攻があったとの話だったが、其方はルクスブルグが撃退した。
強化勇者。俺とディンがルクスブルグで戦った魔族の血肉を組み込んで強化したあの化け物が、遂に量産化したとの事だ。
その強さは圧倒的であり、魔族の軍勢は瞬く間に撃退されてしまったと聞く。
これで戦況は人間側に大きく傾いた。そして、人間側の反魔族ムードは比例して大きくなっていった。
そして、今回手痛い反撃を受けた魔族側にも反人間ムードは強くなっていき、争いは、更に熾烈を極めるのであった。
「100年前と、同じだな…」
今の情勢を鑑みたディンは、そう言葉を零した。
俺も同意見であった。あの時もこうして、人間と魔族間による争いが頻発し、その都度各種族側の憎しみは募っていき、やがてそれは最後の戦い、最終戦争にまで発展していったのだ。
このままでは、きっと今回も同じ流れを辿るだろう。
その原因は、恐らくハマドウにあると俺達は思っていた。
ルクスブルグ、魔族側、その裏には必ず彼の何かしらの暗躍があった。今までの事から、まるで世界がこうなる様に、彼がコントロールしている様に見えた。
戦争を止め、100年前と同じ結果を回避する為には、偽グランディンと別に彼も止めなければならないだろう。
しかし、これらの事も大事であるが、俺達は今正に直面している問題を解決しなければならない。
それは、
「…お金、稼がなきゃな」
話は昨日、拠点の街に帰ってきた時まで遡る。
「みんな、俺は暫く実家に帰ろうと思う」
オーキは唐突に言ってきた。当然俺らはその理由を問うた。
「俺はあの戦いで、最強を見た。それで、俺の力は、その最強にまるで歯が立たなかった…」
あのイストンの里の防衛戦で、オーキはハマドウと交戦し、敗北したとの事だ。そして、その魔術士としての強さのレベルを痛感させられたらしい。
「ハマドウだけじゃねえ、あの戦いで見た魔王同士の戦い、魔族軍を三つも殲滅したクウゴ、お前等の化け物じみた強さの前じゃ、今の俺は足手纏いだ…」
オーキは自身の右手の拳を握り、じっとそれを見つめる。そして、再び俺達に向き直り、こう言った。
「だから、俺は実家で修行してくる。俺が知る限りでは、ハマドウの次に強い魔術士は、お袋だからな…そのお袋に稽古つけて貰って、俺はもっと強くなってくる!!」
「…わかった。オーキがそう言うなら、俺達はオーキを信じるよ。行って来い」
オーキの意志を汲み、俺達はオーキをセレスワイズ邸に送り出した。
そこまでは良かった。しかし、俺達はその後ある問題に直面した。
現状、俺達の活動資金はオーキが全て賄っていた。オーキが実家に帰った今、それが全て無くなった。
そしてそうなると、残ったのは異世界人の俺、戦災孤児のソニア、裸一貫文無し魔王のディン、揃いも揃って収入が無い者ばかりであった。
なので俺達は、オーキが居ない間の生活費を稼ぐ為、所謂金策を考えなければならないのだった。
「…わかってはいたんだが、俺達の旅って、オーキありきで成り立ってたんだなぁ」
そして今に至る。平屋の食卓を囲い、俺達三人はその金策について話し合っていた。
「そうですね…会った時から衣食住全部オーキさんが用意してて、旅の資金とかも全部オーキさんが…」
「…このパーティの小童の貢献度凄まじいな」
「ああ…元々アイツ、俺の勇者紋の研究の為っていう利害の一致で同行してたんだけど、最早面倒見良いとかの次元じゃないくらい世話焼いてくれてるな」
「何があの人にそこまでさせてるのかってレベルですね最早。おまけにたまにお小遣いまでくれますし…」
「おい待て、我は貰ってないぞ。どういう事だ?」
ソニアの話を聞いたディンが、食卓に身を乗り出して俺達に詰め寄った。
「お前ちょっと前まで捕虜みたいな扱いだっただろうが。というかお前施しとか素直に受け取るタイプでは無いだろ?」
「ちっ、小童め…!!」
ディンが機嫌を損ねた表情で舌打ちした。
「兎に角、俺達は今までオーキに頼り過ぎていた。オーキが不在の間くらいは、俺達で生活費をどうにかしよう」
「そうですね、頑張りましょう!!」
ソニアはそう言って大きく頷いた。
「では、我に良い考えがある」
ディンは自信有り気な顔で手を挙げた。あの碌でも無い事考えてそうな表情、俺は何か嫌な予感がした。
「…何考えている?」
「そう訝しむな…我に全て任せておけ」
ディンはそう言って冷たく笑った。不安は更に加速した。




