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魔王と魔王(5)

次の日、イストンの里を立つ俺達の見送りに、里の皆が集まってくれた。


「グランディン様、そして皆様、この度は誠にありがとうごさいました」


ネクスはそう言って、俺達に向かって頭を下げた。そして、隣に居たフラクタも同様に一礼した。


そして、ディンはそんなフラクタの方を見て、微笑みながらこう言った。


「フラクタ、何時ぞやの非礼を詫びたい。貴様達師弟を愚弄する発言、済まなかったな」


「え…?」


「貴様とこの里のお陰で、我はかつての夢を思い出した。我は憎しみにより、その理想を見失っていた様だ…」


「ディンさん…」


「我の夢は、争いの無いみんなが笑い合える世界だ。だから…我はこの夢を、もう憎しみで見失ったりしない!! 憎しみは、乗り越えてみせる!!」


「…素敵な夢です」


ディンの夢を聞いて、フラクタは笑顔で返した。


「…ディンさん、なんだか変わりましたね」


フラクタと話すディンの様子を見ていたソニアがそう言葉を零す。その肩には、翼を包帯で巻かれたリインが乗っていた。


昨日の戦いで気絶していたソニアは、あの後無事目を覚ました。そして、ハマドウに翼を砕かれたリインはというと、俺の回復魔術でどうにか治療でき、砕けた翼も修復する事に成功した。まあ、リインは当分は安静にする必要はあるのだが。


「…そうだな」


俺はそんなソニアに頷き、笑みを零した。


人間を含めた里の皆と楽しそうに話すディンを見て、ディンは本当に変わったと俺も思った。


もう彼女は、人間を憎みその憎しみに染まった魔王じゃない。憎しみを乗り越え、夢に向かって邁進する本当の意味で魔族の王となったのだ。


答えを得て、成長した彼女は、とても大きく見えた。


「…クウゴさん?」


ソニアが俺の顔を覗き込んできた。


昨日、ハマドウに言われた事を思い出す。


「自分の意にそぐわない者を全て斬り捨て、無数の屍を積み重ねて、そっちとこっちにいる魔王なんかよりも、勇者の君の方がよっぽど魔王じゃないか…?」


これを言われた時、何も言い返せなかった。実際その通りだったからだ。


何を言っても聞いてくれず、だがら俺は全てを斬るしか出来なかった。己の意に反する者全てを。


ハマドウの言う通り、ディンなんかよりも、今の自分の方が残虐な魔王の様であった。


「…えいっ」


「痛っ」


ソニアに手をつねられた。


「クウゴさん…また自分の事責めてたでしょ?」


ムスッとした顔でソニアが俺を睨みながら言った。


「オーキさんに聞きました。私が倒れてる間、クウゴさんがどんな戦いをしてきたか…」


「!!」


「…もし、クウゴさんの声が届かなかったら、私も声を上げます」


「え?」


「俺達もな」


声の方に振り返ると、俺の側にはオーキとディンが立っていた。


「相変わらず辛気臭い奴だ。こういうのは貴様一人の声だけでどうにかなるものでは無いだろう」


ディンが呆れたと言わんばかりに肩を竦めてみせた。


「お前的には残念な結果だったのかも知れないけど、それはお前だけの責任じゃねぇよ。だから一人で抱え込むなって」


オーキはそう言って、俺の頭を軽く小突いた。


「私達で声を上げるんです!! 戦いを、やめようって!!」


「ふ…ははははは!! そうだ、そうだな!!」


俺は思わず、大きく笑ってしまった。こんなに笑ったの、久々かも知れない。


単純な事を忘れていた。俺は、一人じゃない。


俺一人の声は小さくとも、皆で声を上げ続ければ、いつか届く。そう、声を上げるのは俺一人じゃなくていいんだ。


(ありがとう、皆…)


「よし、それじゃあ、帰るか」


「…ああ!!」


こうして俺達は、里の皆が見送る中で帰還魔術を起動し、拠点の街へ帰還した。


俺達は声を上げ続ける。この世界に争いが消えるまで。

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