魔王と魔王(4)
帰還魔術でイストンの里に跳ぶや否や、空には滅界七星の『星』が迫っているのを見た俺は、咄嗟に術者らしき偽グランディンを斬り付けたのだった。
鞘で魔力を上乗せした遠間からの一撃、落とされる前に何と間に合った。
「はぁっ…はぁっ…くっ!!」
俺はふらつき、イリスを地に突き立ててその身を支える。一瞬、意識が飛びそうになった。
「クウゴお前…なんでイリスがあってそんなボロボロなんだよ!!? まさかイリスに何か…!!?」
オーキはそう言って俺に近付き、俺の手の中のイリスに触れた。
「イリスの力は発動している…まさか、イリスが追いつかない位に消耗したって事か…? お前一体何してきたんだ?」
「…ちょっとばかし、無理してきた…お陰で駆け付けられた」
「お前って奴は…」
「おい、クウゴ!! 『星』はまだ消えてないぞ!!」
「!!」
ディンの檄を聞いて俺は空を見た。
そこには、未だ三つの黒い星々がそこにあった。
そして、俺の斬撃波を喰らって、吹っ飛ばされた偽グランディンは、ゆっくりと立ち上がった。
「落とさせるか…!!」
俺は地面を蹴り、偽グランディンに向かって駆け出した。
滅界七星の星はアゲインスト・エアでも返せない。落とされる前に、術者である偽グランディンを叩く。
俺はそう思い、イリスを振りかぶった。だが、
「ぐ!!!? ぐぉおおおおおあ!!!!」
突如、偽グランディンが頭を抱えて苦しみだし、魔剣を地面に落としてしまった。
そして、空の星々は瞬く間に消え去り、滅界七星は解除されたのだった。
「な、何だ…!!?」
俺は咄嗟に立ち止まり、急に苦しみだした偽グランディンを見て、その事に戸惑いを隠せずにいた。
「あーあ、やっぱり駄目だったか」
側に居たハマドウは、苦しみ悶えていた偽グランディンを見下ろしながら言った。
「ハマドウ…お前!!!」
「だから今の調整じゃあ、まだ使えないって言ってたじゃないか。 逆上し過ぎだって」
ハマドウはそう言って、偽グランディンが落とした魔剣を拾い上げる。そして、俺の方に視線を向けた。
「それにしても…まさかクウゴ、君が戻って来るとはね…他の国は、どうなっても良いのかい?」
「…良い訳無いだろ、ちゃんと守ってから、ここに来た」
「ちゃんと守って…? まさか…」
「…ああ、『全て』斬ってきた」
魔族達に、俺の言葉は届かなかった。
もう止めろとどんなに言っても、その侵攻を止めなかった。
だから、斬った。俺が駆け抜けた三つの戦場に居た、全ての魔族達を。お陰で、イリスを以てしても間に合わない位に消耗してしまったが。
「…ふふふ、ハハハハハハ!!!! そうかそうか!! 成る程ねぇ!!」
俺の話を聞いたハマドウは大きく高笑いを上げた。そして、一頻り笑うと此方を見て、シニカルな笑顔を見せてこう言った。
「自分の意に沿わない者を全て斬り捨て、無数の屍を積み重ねて、そっちとこっちにいる魔王なんかよりも、勇者の君の方がよっぽど魔王じゃないか…?」
「!!?」
「ふふふ…でもまぁ、今回はもう帰らせて貰うよ。調整したグランディンのテストは完了したしね。まぁ結果は散々だったけど…」
ハマドウはそう言うと、転移魔術を起動して、偽グランディンと共にその場から消えた。
「クウゴ…貴様…」
「ディン…ごめん、これしか無かっ…た…」
緊張の糸が切れたのか、俺は急に身体に力が入らなくなり、そのままその場に倒れてしまった。
「クウゴ!!」
ディンとオーキが駆け寄ってきて、何かを叫んでいた。だが、よく聞こえなかった。
なんだか、とても疲れた。そうして俺は、意識を手放した。




