魔王と魔王(3)
「小童!!」
ハマドウにやられたのか、ボロボロで地に伏していたオーキを見つけると、我はすぐさま側に駆け付けた。
すると、我に気付いたのかオーキは自分で身体を起こし、どこかを指差した。
「お…俺は良い…ソニアが、落ちてきて…意識が…」
オーキが指差した方を見ると、地面に倒れているソニアとリインがいた。その事から、オーキが言わんとしている事を察した。
「わかった、任せろ!!」
我はソニアとリインの側に駆け付け、その容態を確認する。
ソニアは強く打ち付けられて気を失っていたが、幸い大きな外傷は見られなかった。リインも左の翼を失いはしているが、命に別状は無い様子であった。
「大丈夫だ!! ソニアもリインも生きている!!」
「そうか、そりゃ良かった…偽グランディンはどうした…?」
「うんと痛めつけてやった。魔剣も取り戻した」
我はそう言って、血みどろで転がっていた偽者の身体を指差した。
「さて…後は貴様だけだな」
我はそう言って、魔剣をハマドウに向けて突き出した。
奴は仮にもクウゴの親友だった者、当人にその死を見せるのはあまりにも不憫に思い、代わりに我がここで討ち取ろうと思った。
「クウゴが居なくて丁度良かった…奴が居ない内に貴様は我が殺す!!」
「ふふふ、駄目じゃないかグランディン…」
「…何がだ?」
「大事な物を…落とすなんて」
「なっ…!!?」
ハマドウの右手には、いつの間にか魔剣が握られており、代わりに我の手からはその魔剣が無くなっていた。
「大事な物にはちゃあんと名前を書かなくちゃ、こんな風にね」
ハマドウが魔剣を逆手に持ち、その柄頭を前に出して見せた。
柄頭には、何かの刻印がマーキングされており、それには僅かに魔力が込められていた。
「嘘だろ…!? あんな小さなマーキングで剣に転移魔術を…!?」
オーキはハマドウが魔剣を奪った絡繰りを一人察し、驚愕している。
「よくも我が魔剣にふざけた物を…返せ!!」
「おっと」
我が魔爪によりハマドウに斬り掛かるも、ハマドウの姿は消え、その一撃は空を切った。
「ほら、グランディン。落とし物だよ」
いつの間にかハマドウは、地に伏せていた偽者の側におり、手に持っていた魔剣を地面に突き立てた。
偽者は身体を起こし、その魔剣を支えに立ち上がった。
「はぁっ…はぁっ…!!」
我に散々刻まれ、爆破されたその身体はあちこちから血を流し、その仮面の上からでも激しい疲弊が伝わる位に呼吸が乱れていた。
とてもでは無いが、もう先程の様に魔剣は振るえない、そう思った。
「誰にも…俺の邪魔はさせない…」
偽者は呟くと、自身の真上に魔剣を掲げた。
「まさか!!?」
「滅界七星…!!」
突如、偽者の掲げた魔剣が強く輝いた。そして、大地が大きく揺れた。
「な…なんだ!? うわっ…!!?」
あまりに激しい大地の揺れに、今立ち上がろうとしていたオーキはバランスを崩し、その場に尻餅を付いた。
「くそっ…!! やっぱり使えたのか!!」
「使えたって、何が!?」
「…滅界七星、魔剣に秘められた最強の力だ」
魔剣ジオ・グランディンには、その力を解放する事で行使する事が出来る『奥の手』が存在する。
それが『滅界七星』である。破壊エネルギーの塊である『星』を呼び起こし、万物を滅ぼす正に最強の技だ。
呼び出せる星の数は最大『七つ』まで。しかし、その星に秘められた力は強大であり、一つでも降らせれば、この里など余裕で消し飛ばせる破壊力を持っている。それが、
「『三つ』…だと!!?」
我々の頭上には、三つの黒い星が現れていた。
「止めろ!!!! 自身諸共消し飛ばす気か!!!!」
「消えろ…全て…!!」
偽者は星を落とさんと、掲げた魔剣を振り下ろそうとした。
しかし、その瞬間、
「ぐおっ!!?」
空に、光が奔った。
空を奔った斬撃波が偽者に浴びせられ、偽者は大きく吹っ飛んでいき、落ちようとしていた星はその動きを止めた。
「おい…どういう状況だ? これ…」
声の方に視線を向ける。
そこには、たった今イリスを抜剣したであろうクウゴがそこにいた。




